その中で解体武器が最弱武器で使う人が少なく人気がない。その解体武器に偶然攻撃以外の使用用途があった。それだけの話だ。しかし硝子や闇影の言う通り、偶然見つけたこの金のなる木を不用意に公表してしまうのはもったいない気もする。
要するに、エネルギー効率が良くて、金銭効率も良く、人が誰もいない場所、か
良く考えると凄い条件でござる!
私達は少々我侭を言っているのかもしれませんね
満場一致の贅沢な条件だ。
結婚相手に年収一千万を要求するのと同レベルの我侭と言える。
もしもこんな狩り場あったら、必ず誰かいるよ。
そうなると少しランクを落とす、なんて事を考えるが結局誰かに見られる可能性は0にはできない。
というか、そもそもが無理な話なのかもしれない。
MMORPGのサービスが始まれば、当然人気狩り場と過疎狩り場が生まれる。過疎狩り場は人が少ないけれど、誰も近付かないという事は普通に経験値効率が悪い。
しかし誰もいない狩り場か
我ながら無茶を言ったもんだ。
最初からそんな場所がある訳が待て、あるじゃないか。
エネルギー効率は正直完全に把握した訳では無いので断言できないが、少なくとも常闇ノ森より強いモンスターが沢山生息している場所を俺は知っている。
だが、あそこは
絆殿? どうしたでござる
何か名案を浮かびましたか?
二人が期待の眼差しで眺めてくる。
昨日のリザードマンダークナイト戦の影響か、期待値が高いのが心苦しい。
一つだけ、現状おそらく誰も近付かなくて、モンスターが常闇ノ森より強い場所を知っているんだが、正直おすすめできるとは断言できない
それはどの様な場所なのでござる? 行ってみなければ決断はできぬと思うでござる
俺は別にそこで良いと思っているんだが、硝子と闇影が気に入るか。
いや、まあどうせ三人で決めるんだし、案だけでも出すか。
海だ
海、ですか?
ああ、以前木の船ってアイテムで第一の海で、沖まで行った事があるんだ。まだ総エネルギー量が少なかったというもあるが、結構強いモンスターがいた。その時は逃げ帰ってきたけど、三人ならもしかしたらって思ってな
なるほど、確かに判断に悩みますね
まずモンスターがどの程度生息しているのか、俺達三人で倒せるのか、安全をキープできるのか、簡単に上げられるだけでも知らない事が多過ぎる。
それでも一応条件はクリアしている。
船の上なので誰かに見られる確率は低い。モンスターも結構強く、誰も倒していないモンスターなので素材の流通量は確実に少ない。
仮に解体アイテムを大量に売却しても、そこのモンスターは沢山アイテムを落とす、という事にすればしばらくは狩れる。
他にも問題があった
問題とはなんでござるか?
船が小さい
俺が持っている木の船+3は精々三人が限界だ。
しかも乗るのが限界』だ。
モンスターと戦う事を仮定した場合、身動き一つ取れない。
その船という物はどこで手に入れたのですか?
ああ、第一の方の露店で自作した船を売っている奴がいて、4万で買った
その方と連絡は取れるでしょうか?
と言っても名前も知らない、露店商だからな
船が製造物なのでござれば、製作者の銘がアイテムに刻まれているのではござらぬか?
オンラインゲームでは製造職が作ったアイテムに名前が付く事は当たり前だ。
俺は木の船+3をアイテム欄から眺める。
あった。製作者の欄が確かにある。
しぇりる』ひらがなだ。
重複しそうでしなさそうな、微妙な名前だ。きっと重複したのだろう。
ちょっと連絡してみる
一度断りを入れてからカーソルメニューにあるチャットの欄を選択。
しぇりる、とひらがなで入力してチャットを送った。
都合が付けば良いが。
一応昼なので一週間前に昼間活動していた彼女が生活スタイルを変更していなければ繋がると思う。仮に繋がらなくても夜にもう一度かければいい。
無論、三回チャットを送って全部拒否されたら連絡を受けるつもりがないと諦めるか、あるいは直接会ってみるというのも手だろう。
アルト辺りに聞いてみれば、友好関係の広いアルトの事だ。知っているかもしれない
チャットにしぇりるさんが参加しました。
あ、突然すいません。絆†エクシードと言う者ですが、一週間程前貴女の店で船を購入したんです
あれ? 反応がない。
ちゃんと繋がっているか? いや、電話じゃないんだ。間違え電話みたいな事は早々ないだろう。何より別段複雑な名前でも無いのだから間違えようがない。
聞こえていますか?
聞こえてる
それはよかった。それで、ご相談なのですが、先日買った船は二人乗り位のサイズでしたが、もっと大きな船は売っていませんか?
ない
そ、そうですか
少し期待していたのだが、そう簡単に上手く行く訳ないか。
さて、そうなると次の案を考えないとな。
お時間取らせてすいません。では
だけど、材料さえあれば作れる
材料、ですか
船を買った人物に心当たりは一人しかいないから多分あなたの事、覚えてる。4万をぽろっと出せる人なら材料も揃えられるかもしれない
なるほど。
記憶が確かなら、4万セリンで材料と経費だったはず。
彼女の目的は不明だが船を進んで作っているのだから、材料費さえ出してくれるなら、製造スキル持ちとしては願ったり叶ったりと考えられる。
具体的な材料数は船の大きさによる。希望は?
三人の人間が自由に動いて戦える位の大きさなのですが可能でしょうか?
待って、計算してみる
地味に無理な相談しているよな。
しかし船の材料か。
仮に今所持している船が3万5000セリン位で作られていたとして、この3倍いや、4倍から5倍の大きさだったとすると17万程になる計算だ。
正直、そこまで来ると高過ぎる。所持金も相当オーバーしてしまう。
こっち来れる?
はい?
あなた、こっち来れる?
こっちとは第一ですか?
そう
行こうと思えば可能ですが、今は第二にいるので少し掛かるかと
一度実際に会おうという事ですか?
そう。できれば、三人と言ったもう二人も連れてきてほしい
一度硝子と闇影に視線を向けた後、少し考え。
仲間内で相談した後で良いですか?
ええ
それなら、何時頃に行けば良いでしょうか
いつでも構わない。あの時と同じ場所で店を出してるから