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硝子や闇影の様な戦闘スキル型と製造スキル型とはいえ海のモンスターに相性が良いしぇりるのレベルが上がるのは後々の事を考えても必須と言えたからだ。

それに解体武器の俺がいなければ、例のアレの条件が無くなる。

三人は珍しい構成の珍パーティーって風にしか見えない。

絆。それから皆も、これにサインして

スキル構成に想いを馳せているとしぇりるが集まった材料を前に一枚の紙切れアイテムを俺達三人に向けてきた。

なんとなく詐欺の匂いを感じなくも無いが、現実とは違う。

なんだ、これ?

複数所有権ですね

なんでござるか? それは

さすがは元前線組と言った所か、硝子は詳しく知っていた。

複数所有権。

所謂高価な一つの道具に設定できる権利書の事、らしい。

これに記入されているメンバーは均等に特定のアイテム、今回の場合船』の所有権を得る事ができる。

所有者以外がアイテム欄に収納できなくなるという便利システムといった所だ。

そして、この効果は船を何らかの理由で売却する場合、記入者全員の許可が必要となり、獲得した金銭も四人で均等にシステムが分配する、現実の権利書みたいな物だ。

へぇ~、こんなのもあるんだな

まあ確かに高い金出し合って購入した品を持ち逃げされるのは不注意だとは思うが、むかつくからな。

そこ等辺製作会社も解っているみたいだ。

もしかしたら似た様な問題があったのかもしれないな。

それは置いておくとして、無知そうな俺達三人に自分から言うって事はしぇりるの海への気持ちは本当なのだと思う。

なんて言うか、胸が高鳴るな。

これからどうなるかなんて解らないけど、この四人なら大海原でもやっていける気がしてきた。

とりあえず俺から書くな

受け取った紙の名前欄にはしぇりると書かれており、触れるとオートで絆†エクシードと記入されて、OKの欄を押した。文字を自分で入力するのかと思っていたよ。

そして隣にいた硝子に渡し、硝子は記入後、闇影に渡して所有権は全員に行き渡る。

じゃ、船、作り始める。できたら連絡する。それまで自由にしてて

そう言うとしぇりるは大量のアイテムを前にスキルを唱えて船製作に入った。

時間はそんなに掛からないと思うが、話によれば個人ホーム、要するに住居などの製作には数時間要したって話をアルトから聞いた。

四人の人間が自由に動ける規模の船という事は同じ理論が適応する可能性が高いので、自由時間という事なのだろう。

見ているだけというのは辛いが、船製作に必要なスキルを所持していない俺が近くにいても邪魔なだけだ。今はしぇりるを信じて我慢しよう。

絆さん、闇子さん、これからどうしますか?

先日装備を新調したばかりでござるので、自分は特に用事はないでござるよ

俺は船の製作工程を見てようかと

良いですね! では、皆でしぇりるさんを応援しましょう

邪魔にならない距離で製作工程に入ったしぇりるを凝視する俺達。

相変わらず表情は無表情だが、一瞬しぇりるが微妙そうにこちらをチラリと見た。

いや原因は俺だが、精神的に邪魔しているよな。普通に。

ま、まあ仲間想いのパーティーという事で納得してくれると信じている。

ちょっと馴れ馴れしいだけだから、うん。

とりあえず俺は祈った。

俺達が邪魔した所為で船の出来に影響が出ません様に。

大海原へ

それから船が完成したのは三時間後だった。

いや、実際船を作ったらもっと掛かるんだろうが、そこはゲームなのだろう。

最初こそチラチラと俺達を気にしていたしぇりるだったが、直に集中力を発揮して船はみるみる形成されていき、やがて大型クルーザークラスの帆船が出来上がった。

材料の中でも結構な額がした丈夫な布はこの材料だったのか。

しかし帆船とか実際には見た事無いけど、結構迫力あるな。

今は海に浮かべていないので帆は閉じられているが、これが広がるともっと凄そうだ。

やっぱ四人で動けるとなると結構大きいんだな

お? 船の後ろの方に弓みたいの付いているけど、これはなんだ? バリスタ?

なんでもそう』だけで片付けるのやめないか?

まあいい、今日は俺達の船が完成した記念すべき日だ。

無粋な事は言わないさ。

今日だけはな。

俺が黒い笑みを浮かべていると硝子がおろおろとしている。

どうやら俺がしぇりるに対して抱いている感情を読み取ってしまった様だ。

さて、早速海に行くか?

自分は船が出来上がってから身体がソワソワしているでござる

そうだろうな。

身体全体が妙に揺れていて、興奮で飛び出して行きそうだ。

いきなりで大丈夫でしょうか?

硝子が未知への不安を洩らす。

確かに俺達スピリットは安全を第一に動かなければいけない種族なので気持ちは解る。

大丈夫

しぇりるさん

見詰め合う硝子としぇりる。

え? 何、そのちょっとフラグ立ちましたみたいな雰囲気。

というか今までの流れ的に突然過ぎないか?

最初は近場で練習する

練習ですか?

何の練習ですか?

いえ、ですから

なんか硝子が助けを求める表情でこっちを見て来る。

まあこの二人に百合フラグが立つ事はありえないよな。

性格的に。

ともあれ間に入って仲介し、俺達は海へと向かった。

じゃ、出す

アイテム欄からしぇりるは帆船を取り出した。

あの四人が乗れる程巨大な船をどうやって収納したのか、とか考えていはいけない。

この世界はゲーム。

四次元的な効果で取り出したと思って納得した。

ザバーンッと小さな波を立てて海に浮かぶ俺達の帆船。

そうだ一応スキル取得しとくか

誰に呟くでもなく、俺はメニューカーソルからスキル欄を選択。

船上戦闘Ⅰ。

船上専用スキル。

船の上で発生するあらゆるマイナス補正を軽減し、プラス効果を付与する。

獲得条件、12時間以上船で行動する。

ランクアップ条件、84時間以上船で行動する。

船上戦闘Ⅱ。

毎時間400のエネルギーを消費する。

取得に必要なマナ600。

獲得条件、84時間以上船で行動する。

ランクアップ条件、168時間以上船で行動する。

取得した瞬間、ランクⅡが出現したので、そのままⅡまで取得した。

マスタリー系と違って具体的な効果が書かれていないが、どうなのだろう。

多少損になるが、効果が微妙なら後々マナ半分を犠牲にしてスキルをランクダウンさせればいいか。

絆さん、行かないのですか?

言われて周囲を見回すと既に闇影としぇりるが船の上にいた。

なんという速さだ。