それで尚、庇ってくれるって事は、ロゼは良い奴だな。
ちょっとやられたら弱くなるのは事実だろう?
ヘラヘラとした笑みを浮かべる四人組み。
頼む、一言だけ口にしたい。
何、そのマンガにでも出て来そうなあからさまなチンピラキャラ。
笑える以前に、こんな奴実在したんだな。
そもそもこんなリア充みたいな奴等が何を思ってこのゲームに参加したのか。
むしろそっちの方が気になるぞ。
第二都市開放戦で彼女がどれだけ貢献したのか忘れたのか!?
HPが高いのがスピリットの特徴だろう?
それでも彼女がいなければ敗北していたのも事実だ
ロゼと金髪は俺などそっちのけで口論をしている。
前線組も中々大変なんだな。
まあオンラインゲームにおけるお約束みたいなものか。
経験値効率、アイテム、狩場云々で喧嘩になるのは高レベルプレイヤーの方が多いからな。俺も何度か経験があるので心配する程でもない。
ちょんちょんと服の裾を引っ張られたので、振り返ると紡が耳打ちしてきた。
狩場の取り合いで良く争うパーティーの人。構成が似てるから
という事はあっちの四人も盾、魔法、魔法、弓の構成なのか。
典型的な効率パーティーだな。必然的に狩場が近くなるって事か。
それで、何の言い争いをしているんだ?
うん。第二都市の開放で戦う事になったボス戦でスピリットの人のおかげで勝てた様なものなの。多分、その人がいなかったらあの時全滅してたと思う
まあ、彼の言う通りスピリットのHPが高いのは長所だしな
代わりにそいつはエネルギーを相当削られたんだろうな。
しかし、どこかで聞いた様な話だな。
それで、その彼女とやらはいないみたいだけど、どうしたんだ?
うん。一週間とちょっと前位かな。その辺りから一緒にいる所を見ないからパーティー脱退したのかも
一週間とちょっと前か。
俺が丁度海釣りをやめてフィールドに出た頃だな。
硝子じゃね?
確か硝子は都市開放戦に参加したとか言っていた覚えがある。
無論、全くの別人である可能性も捨てきれないが状況は一致する。
外道だとかなんとか言っていたが、所謂効率厨って奴なのだろう。
硝子の戦い方を見るに、敵はモンスターだけじゃなかったのかも。
攻守一体のやや防御よりの武器で衣類系の回避系防具。
敵の攻撃を防ぎ、必要ならば避ける。
なるほど、効率重視殲滅系パーティーだと身の安全を守るのが重要になりそうだ。
まあ勇者様もスピリットなんか入れて吸われない様にしろよ?
そんなのオレ達の勝手だ
じゃあな。おれ等も暇じゃないからな
嫌みを告げると金髪達は元来た道を歩いていった。
暇じゃない割には随分と熱心だった気もするが、まあ良いだろう。
そうだな。奴等に一つ言うならば。
お前等がで助かったよ。俺の大事な仲間と出会う機会を作ってくれてさ
比較的大きな声で言ったつもりだが、彼等は気付かず去っていった。
あれか、難聴属性持ちか。
もしかしたら何かの主人公かもしれないな、あいつ等。
悪い。気分を害したなら謝る
まあネトゲやってれば、ああ言うのにも遭遇するだろうさ
そう言ってもらえると助かる
スピリットが弱いのも事実だしな
実際他の種族と比べて戦闘能力はあまり高くない。
やり方しだいでは他種族を上回れる手段もあるが王道からは外れる。
しかし俺の言葉にロゼは。
オレは違うと思う
そうなのか? 前線組の話なら参考になりそうだな
奴等にも言ったが、スピリットがいなかったら第二都市開放戦で一度負けてたはずなんだ。スピリットは雑魚戦では弱いかもしれねーけど、ボスには強いと思う
言われてみればリザードマンダークナイト戦でマイナス3000状態の闇影のドレインは結構なダメージを出していた。
あのダメージを、ゲームが始まって二週間で出すには他種族では難しいだろう。
更にはHP、というかエネルギーで計算しているので死に難い。
まあこの三週間でエネルギーを稼ぐのがどれだけ大変か知っている俺からすれば、雑魚戦でも程々に稼げていると思うんだ硝子も海はかなり美味しいと言っていたし。
まあ良い。今は他にやるべき事がある。
そんな事よりもディメンションウェーブだろう
そうだったな。絆はこれからどうするんだ?
紡にも会えたし、姉さんと会ったら、知り合いから情報収集だ
硝子達に情報収集と約束している手前、ボーっとしている訳にもいかない。
アルト辺りは今頃どこかを走り回っているはず。
そのアルトから情報を得られれば現状を把握するのも容易い。
後は三日後に何かあると備えた場合、武器と防具も一新しておきたい。
その材料、海に生息するモンスターから得たアイテムが山ほどある。
以前ロミナに解体アイテムを優先的に売ると約束したので、それも果たせるだろう。
考えてもみれば、残り三日じゃ時間がいくらあっても足りないな。
迅速に、慎重に動きたい。
じゃあ俺は俺で調べてみる。ロゼット。紡を妹を頼んだ
お兄ちゃん、なんで彼氏に任せる風に言ったの!?
いや、お前だし
意味がわかんないよ!
ははは、紡は家の火力だし、任されるというより任してるぜ
さすがは戦争の申し子。
俺は紡の廃人っぷりを改めて噛み締めながら行動を開始したのだった。
戦闘準備
俺達の動向とは余所に世界は実にゆっくり時を刻んだ。
無論、三日後に備えて動く俺達にとっては、その緩やかな時間も無駄にはできない。
まず硝子達と合流を果たした俺は、それまでに得た情報を共有し、逐一連絡しながら様々な方面で現状把握に尽力した。
例に挙げられる物では、アルトから特設マップの場所を得たり、ロミナからパーティー全員の武器を作成してもらったり、防具職人を紹介してもらって装備を一新した。
海の装備な影響か青に近い色彩の防具が多く、鳥系も混ざったふわふわな感じも多い。
そして特設マップの調査もした。
他のパーティーなど情報は出尽くしていたが、このゲームは自分の目で見ておく事が重要だ。なので一度四人で調べた。
場所は第一から第二の間。
元は大きな壁のあった場所なのだが、そこがぱっかり開いて道になっていた。
ディメンションウェーブの影響で道が出来たらしい。
そのマップに入ると遠目ながら、黒い次元の裂け目を見る事ができる。
だが、そのマップには現状モンスター一匹存在しない。
その為、そこがどの様な形状をしたマップなのか調べる事は容易だった。
地形は緩やかな段差こそあるが比較的平地。