前線組と呼ばれ始めた頃からでしょうか、起こす行動が粗野になりはじめたのです
硝子には悪いが、ありがちな感じだな
そうですね。人として当たり前の事に目を向けない彼等に注意する数は日に日に増えて行きまして
ウザがれたと
はい。結局彼等の事を、私の方が先に諦めてしまったんです
それで現在あいつ等は絶賛有頂天状態って感じか。
俺もそうならない様に注意したい。
強くなったり、金が増えたりすると心まで強くなった気がするからな。
そうして誰かに諦められるのは嫌だ。
それじゃあさ、もしも俺が道を誤ったら教えてくれないか?
絆さんがですか? 今まで絆さんは誰かの為に行動していたと思いますが
そう評価されるのは嬉しいが、俺も人間だからな。どこかで間違える事はある
わかりました。今度は必ず正しい道に連れ戻します
脊髄で言ってしまったが、ちょっと後悔気味だ。
硝子ってなんか聖人君子みたいな匂いがするので、あれこれ言われそうな。
前方に変化がある。
黒いヒビ次元の裂け目が鈍く発光している。
既に硝子も気付いていて警戒態勢を取った。
やはり来たか。今日来るとは思っていたが、当たるとは。
うわ!?
俺達よりも前方で陣取っていたパーティーからそんな声が響く。
直後、そのパーティー付近から土煙が上がった。
そして次元ノ骨という名のアンデットモンスター、所謂人型の骸骨が現れた。
多いな
前方に広がる光景
骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨、骨。
土煙から現れる次元ノ骨、そして多過ぎて分からない後続モンスター。
さすがはディメンションウェーブ。多人数参加型イベントって感じだな。
絆さん、一度後退をしてください! 私、闇子さん、しぇりるさんで防ぎますから
おう! あれ? 俺は?
絆はリーダー、報告と援軍要請
そういえば何故か俺がリーダーでしたね!
あれ? 闇影はってもうドレインの詠唱してやがる。
ドレインは中距離スキルなので初発としてはありだがな。
しかしアンデットにドレインって効くのか?
まあいい。
わかった。一度、後退して報告してくる! 無理せずに後退も考えろよ!
二人の声を耳に、後方へ走りながらメニューカーソルからチャットを選択したのだった。
防衛戦
ああ、だからそっちでもイベントが始まった事を伝達してほしい
わかったよ。絆、儲け話になる事を祈っているよ
そっちこそしっかり稼げよ。じゃあ切るな
俺はアルトとのチャットを終了させると硝子達前方を眺める。
既に三人はモンスターと対峙しており、戦いは激化しつつある。
監視していた他パーティーも参戦して、さながら戦場の形相を示している。
援軍は紡、姉さん、アルトと各方面にしてある。
もう少し待てば大軍でやってくる事だろう。
だから突然敵が沸いてんだ! 援軍をくれ!』
こっちもそれどころじゃねぇよ!』
マップチャットは突然の事態に先程からこんな感じだ。
少なくとも罵り合いというか、混乱していて会話できる状況に無い。
だから援軍要請も終わった今、俺は前で戦っている仲間の所へ行くべきだ。
勇魚ノ太刀を握り、走り出す。
動揺するでない!』
マップチャットに響く大きな怒声。
あまりに大きいもので前方へ込めた足の力が緩んでしまった程だ。
その声を聞いた各所のパーティーリーダーは気迫の様な物を感じて沈黙。
こういう所は、やはりVRゲームだと思う。
パソコンのオンラインゲームだと誰かが注意しても会話垂れ流しだからな。
皆援軍を募ったと思う。今より我等が任は彼等が来るまで如何に耐えるかじゃ!』
確かに、言っている事は間違いない。
前方のモンスターを確認する。
とてもじゃないが、現状の味方で人が足りているとは思えない。
これより防衛線を引く、各地のパーティーリーダーは地図上の縦をA~E、横を1~6として場所を示し状況を逐一報告。現状を自軍全体で把握するのじゃ!』
そういえばこのマップの地図表示は縦と横に英文字が振られている。
A
B
C
D
E
1 2 3 4 5 6
これで現在状況を把握するのは確かにありだ。
まずは言いだしっぺでから言おう。Cの3、中央じゃ。小山から敵の大群と敵後方に黒い塔が建造されているのが見える!』
黒い塔、か。
おそらく俺達プレイヤーが破壊しなければいけないモニュメントだろう。
まあ現状、敵が多過ぎて不可能に近いが、援軍さえくれば可能か。
よし! この人の防衛作戦、乗った。
俺は出来得る限りの声を出す為に息を吸い込む。
こちらBの5、右側だ。敵と交戦中! 援軍報告は完了している!』
俺の声を皮切りに随所から現在状況が報告される。
敵は三方向全てに沸いており、各所で戦闘になっているらしい。
現状では援軍が来るまで援軍の出し合いは不可能、このまま耐えるしかない。
援軍も無能ではあるまい。直に来る! それまで耐えるのじゃ!』
そんな声を随時発している。
報告は終わった。当初の予定通り戦線復帰する。
報告なら戦闘中でも可能だしな。
走って進むと戦闘状態になっている闇影が見えた。
あいつは俺達のパーティーの後衛だからな。当然か。
そのまま走りながら喋る。
クレーバー! 援軍が来るまで防衛する事になった。皆、死なない様にしろよ!
スキルを叫んで勇魚ノ太刀を次元ノ骨に当てながら口にする。
厳しい戦況だが、不可能じゃない。
それに周りには俺達以外にも前線組だっている。
簡単には負けないはずだ。
絆さん、範囲攻撃を重点的に使うと良いはずです
あの大軍だしな。まあ俺は個別スキルしかないんだけどさ
解体武器の初級スキル、クレーバーは単体攻撃スキルだ。
幸い骨とは相性が良さそうだがこの大軍が一匹減った所で焼け石に水。
無論、その一匹を倒すのも重要だが。
そうだ。まだ範囲攻撃云々は報告に上がってなかったな。
敵の数が多い。範囲攻撃を中心に置いた方が良い!』