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その言葉を聞いて背後に振り返る。

見ると特設マップの入り口が黒いエフィクトを伴っていた。

以降は死んだら戻ってくれないって事か。

まあスピリットは死んだら戻るとか戻らないとか以前の問題だが。

だが、他種族にとって復帰不可は痛い。

何より敵の攻撃力は異常に高い。

全身鎧の重装甲装備の盾持ちがどうにか防げる程の敵だ。

現在、硝子や紡、他数名がケルベロスに取り付いて攻撃しているが、それが不可能な奴等は包囲網を張って矢と魔法を放っている。

あの黒い炎は盾持ちが味方を庇う事で戦況を維持している。

お前等、矢と魔法の準備ができた。一度退避してくれ!

乱舞一ノ型・連撃! こちらで避けます。そのまま撃ってください!

だよ~!

雨みたいに飛んでくる矢と魔法を避けるってお前等は何者だよ。

いや、それ位できないと廃プレイヤーとはいえないのか?

そういえば紡の奴、以前外国産のFPSで視認もせずにスナイパーライフルをヘッドショットさせていたな。

それと同じく空間把握能力でもあるのかもしれない。

生憎と俺はそこまで極めていないが。

避け切れないと思ったプレイヤーが退避を始め、硝子と紡だけがケルベロスに張り付いたまま攻撃を繰り返していた。

実際、誰かがケルベロスの注意を引いていないといけないのか。

そんな中、硝子達は本当に矢と魔法を左右上下、ケルベロスを盾にして回避。

思ったんだが、硝子が俺達と海で戦っているのは場違いなんじゃなかろうか。

そうした攻防が五分程続きケルベロスの腕が紡に振り下ろされる。

当然紙一重で避けるのだろう、そう俺が確信した直後。

紡が、ジャンプに失敗した。

あMP切れ

一言そう呟き、ケルベロスの腕が隙を晒した紡に

紡には振り下ろされなかった。

前々から思っていたんだが、俺ってまさかシスコン?

ジャンプに失敗した直後には俺の身体は動いていた。

勇魚ノ太刀を使って防御体勢で受け止め、後方に吹き飛ぶ。

ケルベロスの凶腕から妹を救う、と行きたかったが生憎と俺の腕前では壁になる事位しか出来なかった。

ヘイトアタック

痛ったった一発受けただけで5000ってなんだよ!

防御体勢で受け止めたケルベロスの攻撃は俺が衣服系防具である事を含めても高過ぎた。

そのダメージの高さから実際に痛い訳でもないのに表情を歪めてしまった程だ。

にしても約5000ダメージか。

他のオンラインゲームでも大規模イベントのボスは総じて攻撃力が高いもんだが、これはプレイヤーキルをしてボスの強さとディメンションウェーブを印象付けるのが目的か。

ともあれ、ここまで大きなダメージを与えて来て、尚且つ死に戻り不可となると、こいつで最後だな。

そう決断付けた所でケルベロスに向き直る。

このままここにいると危険だ。既にケルベロスが再度攻撃する動作を取っている。

紡! MPが切れたなら一度下がるぞ!

う、うん!

硝子、悪いがしばらく頼む!

わかりました! 絆さん

かっこよかったですよ

ほっとけ

戦線から一度撤退しながら呟く。

いや、まあ自分でも上手くいった自覚はあるけどさ。

女の子にかっこいいとか言われるのは恥ずかしいじゃないか。

お兄ちゃん

味方盾持ちより後方に移動すると紡が俺に話しかけてきた。

重い大鎌とミドルアーマーの割に避けていたのかダメージは無さそうだ。

どうしてあたしを助けてくれたの?

紡が戦力として必要ていうのは建前か

だね

俺がお前の兄貴だからじゃないか?

多分、他の奴だったら仲間3人は除く身代わりにはならなかっただろう。

誰も彼も助けるお人好しじゃないからな、俺は。

でも、スピリットは

何気にしてるんだよ。5000程度、あってないようないや、そうでもないけど経験値的には結構違う!

最後までかっこよく決めようと思ったが計算してみると結構厳しい。

だけどゲームって、そういうんじゃないだろ。

効率だけじゃないっていうか、無駄に溜り場で会話に花を咲かせて、狩りもせず一夜を明かした虚無感みたいのはあるけど、それが無駄とは言いたくないというか。

なんというのか、俺がスピリットだからこそ死なせたくなかったというか。

そう! スピリットは仲間を決して犠牲にしない!

エネルギーを失った時の痛みを知っているからこそ誰かを犠牲にしたりしない。

その時できる最善を模索して、現状を打破する。

それが俺達スピリットだ!

結構ノリで口にした言葉だが、良いんじゃないか?

絆殿

っげ

自分に言い訳していたら、いつの間にか闇影が近くに来ていた。

きっと先程の光景を目撃したのだろう。

つまり、今咄嗟に口にした言葉も聞かれたという事に。

やべぇ。凄い恥ずかしい。

絆殿自分、絆殿のお言葉にとても感銘を受けたでござる!

は? はぁ

疑問系の声をつい二度も洩らしてしまった。

というか一瞬、こいつが何を言っているのか分からなかった。

絆殿がお気持ちを見せた以上、自分も返す所存でござる

それで?

妹君を一度我等がパーティーに入れる事はできぬでござるか?

パーティー? 何か支援スキルでも使うのか?

支援スキルの中には対象が自分だけ、無差別、パーティーメンバーのみ、と様々な種類がある。俺が使っている高速解体などは自分にしか掛けられないタイプだ。

紡、できるか?

うん。できると思う

じゃあロゼもこの戦場にいるだろう。リーダー会話で一報入れとく

現状一匹のモンスターに対して数え切れない人数が集中している。

この中からロゼを見つけ出すのは不可能だが、リーダー会話を使えば可能だ。

戦場内にいるロゼットに告げる! 紡を借りるぞ!』

大きな声で叫ぶと現状報告の誰かが返事をした。

おそらくロゼで間違いないだろう。

直に俺はカーソルメニューからパーティーの項目を表示させて、紡にパーティーを要請した。

紡†エクシードさんをパーティーに招待しました。

闇影、言われた通りパーティーにいれたぞ

では、先程取得したスキルを使うでござる

そう言うと闇影はいつもの様にスキルを詠唱する。

ドレインと比べると詠唱時間は短く、直に完了した。

エネルギーコンバーターでござる!

スキルを叫ぶと闇影から青白い魂の様な物が紡に吸い込まれる。

正直、闇影がドレイン以外のスキルを使っている事に違和感を覚えつつ、紡が不思議そうな表情で闇影を眺めた。

MP回復?