そんな事はありません。私は絆さんをあの先へ至るお手伝いをしますからいえ、したいんです
それは助かる。硝子は頼りになるからな。今回はそれが凄く分かった
ケルベロスに行なったアクロバットを忘れていない。
そもそも紡と同レベルのプレイヤースキルを持っていた事に驚きだ。
もしも前線組に復帰したいとか言い出したら、というかゲーム的にはそっちの方が世界に与える影響は良いんだろうけど、生憎と硝子はこういう性格だからな、きっと俺達と一緒に居てくれる。
そんな硝子に前線組に復帰するか? という質問は無粋だろう。
ともかく今日は疲れた。第一に帰ってゆっくり休もうぜ
硝子は人差し指を口元に当てて静かに』のポーズを取る。
そして視線だけをケルベロスの死体に向けた。
なるほど解体か。
ロゼ達に話そうと思ったが色々あって解体武器の効果を話していない。
何よりもあの時の俺は平然を装ってこそいたが少し機嫌が悪かった。
仲間を貶されたのだから当然だろう?
ケルベロスの向こう、プレイヤー達にも目を向ける。
既にイベントが終了したので帰還を始めているプレイヤーは多い。
節約をする者は徒歩だが、前線組ともなると帰路ノ写本を惜しげもなく使っている。
中にはこれから更にモンスター狩りに行くと発言している猛者までいた。
これだけのプレイヤーが一挙にいる場所で解体作業を行なえば当然バレるだろう。
仮に隠し続けるとすれば、安易に解体作業は行なえない。
少しゆっくりしませんか? こんなに綺麗な場所なのですから
ゲーム製作者も粋な事をしてくれると思う。
ディメンションウェーブを討伐したら辺り一面幻想的な花畑だもんな。
せっかくの現実と卒の無い下手をすると現実よりも綺麗なのだから堪能するに越した事はない。まあ先程まで戦っていた凶悪なモンスターの死骸が視界にあるのはシュール過ぎて逆に笑えないが。
絆殿!
闇影か、おつかれ
おつかれでござる。それより聞いて欲しいでござる
おう、何か良い事でもあったか?
自分、スピリットランキングで一位になったでござる!
ああ、またの名をエネルギー量ランキングか
総獲得エネルギー量が100万の闇影なら確かに一位を取れそうだな。
今回の戦いも常にサークルドレインを使っていただけに無難な線か。
そういえばしぇりるはどうした?
さっきからいる
うわっ! ビックリさせるな
いきなり背後から声がしたので驚いた。
潜伏スキル持ちでもないのに存在感を消せるとは中々やるな。
いや、単に俺が連戦で疲れていて注意力散漫になっていたのが原因だが。
終盤、闇影よりも空気だった気もするしぇりるだが、ボス戦闘の邪魔にならない様に雑魚モンスター討伐をしていたらしい。
地味な作業だが、結構重要な役回りだ。
なんていうか、細かい所に気が回るしぇりるっぽいと納得してしまった。
しぇりるは鳥系モンスターが逃げ出したりすると、しっかり追い討ちを掛けるからな。そういう先を読む技術は素直に参考としたい。
ともあれパーティーメンバーが全員揃った。
まあお前等なら分かると思うがアレ』のついでに花見しながら祝勝会と行こうぜ
良いでござるな!
はい
まあ春でも花見なんて現実ではした事がないのだが、戦闘後の高揚感からか、それとも仲間と一緒に何かを成し遂げられた事からなのかは分からないが、妙にワクワクした。
実際は、花を見るだけなのにな。
ただ花見るだけなのはアレだな。今度料理スキルでも覚えるか
スキル圧迫せぬでござるか?
多少厳しいが、最終的には必要になるだろう。海を越えるんだから
そうですね。食料的にはアイテムメニューがあるので大丈夫ですが、仮に尽きた場合、誰かが料理スキルを使えれば困らないでしょうね
そうなると自然と戦闘スキルメインの硝子と闇影は外れるだろう? しぇりるは既に製作スキルを取っているからきついだろうし、消去法で俺って感じだ
絆がそれでいいなら
使っている武器的に相性も良いしな
釣った魚をその場で料理する。
今までは釣って終わりだったが良く考えたら、どうして取得してなかったんだ。
うん、半ば衝動で言ったが割と本気で取得を考えておこう。
そうこう考えていると俺達に近付いてくる足音がした。
紡の仲間、ロゼのパーティーだった。
お兄ちゃーーん! むふー!
大鎌を持ったまま紡が抱き付いてきた。
抱き止めようと思ったが、エネルギーが少なくなった影響か、のしかかられる形になる。
大活躍だったな。絆
そういうお前等もな。何人か100位以内に入っていただろう?
運が良かったからだ
これから祝勝会をする予定だがロゼ達も一緒にするか?
一応訊ねてみるもロゼは少し考えた素振りを見せた。
まあ見知らぬパーティー同士だと気を許せない気持ちが分かるが。
悪いが今回は遠慮しとくよ。あんまりゆっくりもしていられないからな
その感じだとこれから狩りか
実装された武器やスキルの効果も調べときたいからな
そうか、前線組も大変だな。まあがんばれ
さすがは前線組といった所か。
あれだけの事があっても直に戦いに身を投じる。
ぶっちゃけると俺だったら一日位ゆっくり休みたいと思う。
まあ俺もゲームに一度ハマると数時間近く続けてやるのだから人の事は言えないか。
まだ何か話があるのかロゼは言葉を続ける。
それで相談なんだが、扇子の彼女
私ですか?
硝子が不思議そうに返事をする。
この流れはきっとパーティーへの誘いって奴だろう。
まあ硝子の活躍を知れば誰でもパーティーに入れたいと考えるか。
よかったらオレ達のパーティーに入ら
遠慮します
ロゼが言い切る前に即答した。
闇影やしぇりるが何か言おうとしていたみたいだが、問答無用で即答だった。
正直、ちょっと意外だ。
硝子は人の目とか、道徳観念などを気にする所があるから、断るにしてももうちょっとやんわりと答えると思っていたからだ。
しかし同時に納得している部分もある。
硝子って本人も口にしていたが聖人君子じゃないというか、こうと決めたら無鉄砲な所がある。だからこんな風に断るのも硝子らしいとも感じた。
ロゼットの方もまさか即答されるとは考えていなかった様で少し動揺している。
しかし、君の腕前なら前線組でも十分活躍できるはずだ
それでも絆さんと一緒に行くと決めているのです。私の魂に誓って
初対面の頃から硝子はこういう奴だけど、凄く照れる。