Выбрать главу

そうなると食材アイテムをある程度確保する必要があった。

だけど悪い事ばかりじゃないよ

それはどういう意味だ?

うん。僕達はもう何日も水を飲んでいないけど大丈夫じゃないか

確かにアルトレーゼさんの言う通りですね

仮にこれが現実だったらもっと前に水不足で問題になっていたはず。

このゲームでお腹が空くのはゲーム終了後が関係していると誰かが話していたな。

同じ理由で現実に帰還後、何かしろのプログラムで現実復帰も実現できているらしい。

俺のリアトモ曰く鮮明に思い出せる夢』だったか。

そんな表現を言い出すので多少痛い言動こそ残しているが学校の成績に問題は出ていない所を見るに本当の事なのだろう。

今は問題解決の方が重要か。

これはゲームだからね。お腹は空くだろうけどシステム的なものだよ。死にはしないんだ。最悪、食べずに過ごす事だって可能だよ

そこまで達観はしないがまあ食料は俺の方でなんとかしてみるよ

そうして俺は結果的に念願の釣り生活へ突入した。

高級餌の尽きた餌なしではマグロなどが釣れる訳もなく、小魚が限界だが。

ここで活躍したのが光のルアーである。

常時光っているので夜間、ライトの代わりに使われていた光のルアーだ。

昼間は光のルアーで釣れる魚はいないが、夜はイカが釣れる事が判明した。

アルト曰く。

エギだね

エギというルアーの一種があるらしい。

いや、光のルアーは普通のルアーって感じの外見だが光っている以外。

ともかく光のルアーによって食料問題は解決。イカ生活に突入した。

というか夜釣りではイカしか釣れない。

調子に乗って夜間に500匹近く釣って何日も続けて朝昼晩イカ尽くしにしたら。

などと暴言を吐かれた。

しぇりるに至ってはバリスタの矢をイカにする始末。

ともあれ今日も今日とてイカ釣りだ。

既にアイテム欄に1000匹以上いるとか、そういう事は気にしない。

さすが光のルアー。

あの日、あの時、あの俺に言ってやる。

多少高くても買って正解だったな。

尚、帰らずの海域はどういう訳だか昼間にしかモンスターが沸かない。

少なくとも第一都市近くでは夜でもモンスターが沸いた。

長期的航海になるとゲームとして夜はモンスターを配置しなかったとか。

理由としては弱いか。

仮に何か理由があるという前提を立てたらどうだろう。

一般的なRPGでは迷いの森、無限砂漠などといったパターンは大昔から使われてきた王道中の王道だ。特定の方法でしか抜けられない。ギミックが掛けられていて、進み方一つで行き先が変わる。こんな感じだろう。

既に航海を続けて一週間を迎えようとしている。

俺を始め全員のストレスも高まりつつある。

無論、食べ物がイカだけなのも理由だが。

どちらにしても何かしろ対策を立てないとな。

硝子か

深夜に考え事をしながら釣りをしていたので話し掛けられて少し驚いた。

硝子は俺の隣に腰を下ろすと月を見上げた。

今日は月が出ていてこの世界の月は現実の物より大きいので風情がある。

唯、大きさの割に照らす光は弱い。

自然は凄いですね

いえこの世界が作り物である事は理解しているのですが、嵐一つで私達の生活を一変させてしまったものですから

確かに

嵐に巻き込まれたのは不幸だが、六人で船上生活をする事になるとは思わなかった。

これまで夜は第一都市の宿で個別に休んでいた。

不謹慎だとは思うが修学旅行の様で楽しい、という思いもある。

だからこそ、この困難を乗り越える方法を模索しなくてはならない。

ゲームというのはしっかりと観察していれば答えは手に入る様に作られている。

答えを導き出せないという事は何か見落としているという事だ。

絆さん、引いていますよ

大丈夫だ。イカはそんなに難易度高くないからな

ちょんちょんと竿の先端に響く感覚。

違う。イカじゃないぞ、こいつ。

ここ数日釣り続けているからか感覚で分かる。

帰らずの海域で夜に釣れるのはイカだけだ。

これは光のルアーに限らない。

しかしここで上がってくる疑問がある。

1000匹以上釣ったイカとイカではない何か。

確率的にゲーム内設定数値は相当低いはず。

ともすれば、釣れる生物は。

来る!

以前似た引きを受けた経験がある。

通常とは明らかに違う引き、点の様なアタリ判定。

これはあいつだ、巨大ニシン。

違う。もっと強い!

絆さん、船が引かれています

くっ! 硝子、しぇりるを呼んでくれ、あいつの銛スキルを使えばあるいは

走って船内へ消えていった硝子に意識を割けない。

逆に全神経を竿の先端に向けた。

脳神経と竿の糸を精神的に繋げ、一本の線に変える。

そして点を見つけ出し、力強く引き巻く。

リールという新たな要素。

俺が付けているのはベイトリール。

海釣りやルアー釣りと相性が良いという事で一緒に購入した。

最初こそ慣れるのに苦労したが、巻き上げる力が強いのが特徴だ。

難点はルアーを投げるのにコツがいる事だろうか。

なんでも現実でも似た様な特徴があるらしい。

ともかく繋いだ感覚を信じて点となる部分を引っ張りながら巻く。

絆、来た

しぇりる、俺の指定した場所に銛を撃てないか?

可能

頼むっ! 俺だけじゃ釣れそうにない

銛は元々スピアフィッシング的側面も持っている。

巨大な水棲生物を捕獲する際に最も適した武器は銛だ。

だからしぇりるは敵の体力を奪うにはうってつけの人材だと言える。

どこ?

待ってろ

この間も攻防を繰り返しながら意識を二分、敵の位置を探っていく。

糸と神経を擬似的に繋げているので探知できるはず。

例えるなら憎しみを追う、だろうか。

なるほど、媒介結晶にあるヘイトを増加させる、というのはこういう事か。

イカを1000匹以上釣っているので身に覚えが無いとは言わない。

だが、逆に憎悪が肌を焼く様なオーラとして伝わってくる。

位置は。

そこだ!

ボマーランサー

銛の中級攻撃スキルだ。

投げ槍の様に銛を射出する中距離攻撃スキル。

青白い紐がしぇりるの銛に繋がり、爆裂の様なエフェクトと共に海に射出。

ドスンッという敵に何かが、しぇりるの銛が突き刺さる感触が手にやってくる。

一瞬明らかに引きが弱まったので巻きまくる。

だが、直に再動した。

もう何発か出来ないか?

だいじょぶ

頼む

しぇりるに頼り過ぎるのは俺のプライドが許さない。