事情は知らないけれど、今は君を信じるよ。一人になってどうなるかと思っていたんだ
紡と合流したら
俺はアルトに甲板までの道を伝えてから通信を切る。
そして次に闇影に繋いだ。
個人的には一番早く話したかったが状況的に三番目となってしまった。
わああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!
うるせぇ! 静かにしろ! 俺だよ!
うわああぁぁぁん! 絆ちゃんの幽霊がああああぁぁぁぁ!
俺をちゃん付けするな!
落ち着かせるのに随分時間が掛かったが闇影にも甲板までの道を教える。
次はしぇりるだ。
四番、しぇりるはは甲板から一番近い位置にいる。
チャットを繋げると無言だった。
お前初対面の時もソレだったけど、繋がってないか不安になるからやめろよな。
絆だ。道は教える、甲板に向かって欲しい
しぇりるは大丈夫だったか?
そうか、大丈夫だったか
それで道なんだが
自分でも思うんだが、最近しぇりるの言動がそう』だけなのに解る様になっている。
凄く微妙な気分だ。
このままじゃ本当にしぇりる専用の翻訳家にされてしまう。
ともかく一同が甲板に向かって行動を始める。
途中間違えばその都度訂正のチャットを送り、全員が甲板に到着したのを確認した。
さて、俺も上に行かないとな
地図を確認して可能な限り覚える。
そして船長室を後にして立ち去ろうとした時、フッと赤い人魂が消えた。
ゲームのアシストなんだろうが、助けてもらったのは事実だ。
助けてくれてありがとう。
俺は心の中でそう呟いた。
硝子!
船内を自分の庭の様に走り抜けてきた俺は甲板への入り口で叫んだ。
広がる光景は硝子だけでなく、闇影達、全員の無事な姿。
赤い月が船を照らし、ボスステージの形相を示していた。
絆さんご無事ですか?
ああ、怪我一つ無い。そっちは大丈夫だったか?
はい! 皆さんの助けもあってどうにかなりそうです
そしてボスモンスターハーベンブルグと名前が表示された軍服を着た大きな骸骨。
違う!
あの航海日誌を信じるならばハーベンブルグという人物がボスのはずがない。
ボスだけでなく、この船で現れたモンスターパイレーツスケルトンも犠牲者として、何物かに死体を操られているという設定だった場合、ハーベンブルグという伯爵の成れの果てをいくら攻撃した所で意味がない。
おそらく魂を喰らう化け物って奴は別にいる。
どこだ。どこにいる。
ハーベンブルグ伯爵と戦闘中の硝子と紡、闇影、しぇりる。
アルトは後方で指揮を取っていた。
そんな五人を余所に俺は敵の正体を追う。
ハーベンブルグ伯爵元は正しい人物だった様だが今はボロボロの軍服に身を包み、巨大なカトラスを握って海賊紛いな事に手を染めている。
設定上、彼は負けたのだろう。
見えた。
ハーベンブルグ伯爵の影に一瞬ブレがあった。
ヒントがなければ気付かない程度の些細なズレだ。
俺はケルベロススローターを左手に持ち、右手にエネルギーブレイドを持った。
硝子、紡。そいつは敵じゃない!
そう叫びながら左手のケロベロススローターをハーベンブルグ伯爵の影に突き刺す。
するとバチバチと以前聞いた事のある次元の穴が開く音が響いた。
絆さん? それは一体
敵はこっちだ。魂を喰らう化け物ソウルイーター』そうだよな!
逃がさない様にケルベロススローターを刺したまま、一万と充填してビーム光を発したエネルギーブレイドに力を込めて影へ突き入れる。
水が蒸発する様な音を発しながら甲板の床に消えるエネルギーブレイドの刃。
ガランガランと崩れるハーベンブルグ伯爵の亡骸。
合わせて俺は後方へ飛ぶ。
そして影から飛び出した物体本物のボスモンスターソウルイーター。
白く凶悪そうな顔付き、赤い眼、大きな口と牙を持った醜い化け物。
倒すべき敵は、お前だ
ソウルイーターはおそらくハーベンブルグ伯爵を囮に使って自身はダメージを受けずに戦うという、実は本体は別にいるタイプのボスだ。
最近では少ないが昔のRPGでは度々見られたタイプでもある。
有名なタイムスリップRPGではラストボスが真ん中の不気味な本体っぽい生物ではなく、左側にいる回復を担当しているオプションだったりする。
プレイしたのはリメイク版だったが、攻略サイトなどを見ない俺は絶句した。
なんせ本体を倒したら回復のオプションが偽者の本体を復活させたんだからな。
つまりこのソウルイーターというボスはそれと同じでいくらハーベンブルグ伯爵を倒した所で全く意味のないボス、という事になる。
種が解ればどうって事はない。皆、見ての通りボスはそっちだ
なるほど。わかりました
影とか見てたけど全然気付かなかったよ~
下に向けて銛を撃つのは得意
戦い方を理解した我等が戦力は納得の顔をして頷き、臨戦態勢を取った。
そして残りの二人は。
ぎゃあああ! 本物のお化けが出たああああ!
もうそれ、いいから
ぼ、僕は敵の位置をちゅ、注意深く探る事にするよ
なんでドモってるんだよ!
こいつ等本当にブレないよな。
いや、まあ反応的には美味しい役回りなんだろうけどさ。あっちの醜いソウルイーターを眺めても普通のモンスターと対峙した様な顔をしている三人よりは。
と、ともかく! あいつを倒すぞ!
硝子の返事と共にソウルイーターへの猛攻が始まった。
リミテッドディメンションウェーブ-討伐-
ボスが二匹いるのは結構しんどいな
俺達は二手に別れてハーベンブルグ伯爵とソウルイーター、二匹同時に対峙していた。
どちらもボスモンスターの名に相応しい強さを保持しており、一筋縄とはいかない。
まずハーベンブルグ伯爵は復活型モンスターでいくら攻撃しても直に復活してくる。
何よりも巨大なカトラスの威力が高く、攻撃を避けるのも難しい。
そうなると現在のパーティーメンバーでは硝子か紡が相手にしなければ話にならない。
しかしハーベンブルグ伯爵はあくまで囮だ。本当に倒さなければいけないのはソウルイーターであって、ハーベンブルグ伯爵ではない。
そしてソウルイーターも相応の強さを持っている。
まずハーベンブルグ伯爵と違い獣の様な動きをするので人型モンスターと同様の攻撃方法ではこちらが被害を受けてしまう。
けれど同時にハーベンブルグ伯爵がいるので獣型のソウルイーター、人型のハーベンブルグ伯爵とタイプの違う二匹を相手にする必要がある。
更にソウルイーターは隙をちょっとでも見せると次元の穴に隠れる。