以前アルトに海路は本来のルートとは違うとかデタラメを言った覚えがあるが、もしかして当たりなんじゃないか?
ハーベンブルグ伯爵の日記にも国交とかなんとか出ていた。
漂流している俺に調べる術はないが、この島が何かを握っているのは予想できる。
思考を戻そう。
ドリルは壁や岩、穴などを掘る事ができる。
そしてカルミラ島にはドリルで道を作る必要がありそうな場所が随所に見られる。
おそらく本来であればドリルが武器として存在する頃に訪れる場所なのだろう。
ともかくオノ、ハンマー、ドリルは後回しだ。
今は生活基盤もとい、運営できる状況を作りたい。
そうなるとやはり、カマで雑草を撤去して、クワで耕し種を植えまくるのが基本か。
ちなみに釣竿とロープに関しては現状必要用途を見つけていない。
ロープは移動箇所が存在する事が予想できるが、釣竿はなんだろうか。
食べ物? しかし畑に実が生れば生きてはいけるはず。
森の中に肉になりそうな逃げ足だけが特徴の野生生物がいたのでそっちでも良い。
そんな中で釣竿がどうして必須の道具に入っているんだ。
いや、個人的には嬉しいが。
性能は現在所持している釣竿には劣るが、安い餌が無限に出てくる。
無論、開拓者の七つ道具の釣竿でしか使えない餌だ。
その影響で釣りには困っていない。
まあ開拓していけばわかってくるか。
ともあれ、今空いている土地を耕したらオノで木々を伐り倒すか。
もちろん一定の区間を作ってだが。
それが終わったらドリルで目に見えて行かなければならない道を作るとしよう。
俺は島内部を見上げる。
屋敷跡とも見える、比較的大きな建物が見えた。
伯爵の置き土産
あれから二日が経った。
空いている土地の半分を畑に変えた所でドリルを片手に岩石の前に立っている。
岩石は一言でいうなら巨大だ。
俺の身長の三倍程で道を塞ぐ様に置かれている。
不自然に置かれているがディメンションウェーブの衝撃で、島内部から転がってきたとかそういう設定だったりするのかもしれない。
ともあれハンマーでコレを壊すのは少々難しいだろう。
ドリ
叫びそうになったのを途中で止め、ドリルの取っ手を引っ張る。
するとモーター音を立てて回転を始めた。
同時にシールドエネルギーが700から699に変化する。
ドリルはMPを消費して使用する道具らしく、エネルギーを消費してしまう。
開拓作業にエネルギーを使い過ぎるのは危険なので地道に岩石を破壊する。
要するに毎日こまめにドリルを岩石に当ててダメージを与えている。
少しずつ亀裂が入ってきているので後少しだ。
スキルが使えるようになればなぁ
おそらくはマスタリースキルだとは思うが取得不可では厳しい。
まあ元々第四都市を見つけようって時に海へ向かったのが悪いのかもしれないが。
ドリルが石を破壊した時と同じ感触が手元にやってきた。
すると岩石がピキピキと音を立てて半分に割れた。
もう少し砕いて行って撤去する感じを想像していたんだが、まあ良いか。
道の両脇に割れた岩石を門代わりにしながら先へと進む。
文字通り島の中心へと進んでいるので微弱に斜面だ。
山の中腹よりも少し前の方に屋敷跡があるのでそんなに時間は掛からないはず。
よしよし見えて来た、見えて来た。
屋敷は村と同じく随分と風化していて、ハーベンブルグ伯爵が設定上どの時代にここで暮らしていたのかを物語っている。
これもミスリードだろうか?
ソウルイーターが何十年も前に存在していたという事はディメンションウェーブ自体がここ最近突然現れた存在ではない、という事になるのだが。
いや、そもそも世界観云々を述べたらディメンションウェーブが第一回なのか、第三十回なのかは具体的に明記されていない。
ここ等辺もプレイヤーが世界の謎に近付いていくストーリー性かもしれないな。
さて、ここで立ち止まっていてもしょうがない。
俺は古くなった屋敷の扉を開いた。
埃一つ無い手擦り。破損していない床。風化すらも感じられない。
驚いた事に屋敷の内装は綺麗なままだった。
どういう事だ?
すると半透明の物体がゆらゆらと降りてくる。
どう見ても幽霊です。ありがとうございました。
幽霊は二人居て、片方は軍服に身を包んだ男性、おそらくハーベンブルグ伯爵。
もう片方は女性伯爵夫人とかか?
ハーベンブルグ伯爵の幽霊は俺に気が付くと微笑んで喋る。
良くぞ化け物を倒してくれた。これで私も楽になれる。恩人よ、島は任せたぞ』
訳も解らず唖然としていると成仏したのか二つの幽霊は天へと消えて逝く。
そして霧が覚める様に辺りの景色に変化が起こった。
直前まで見えていた屋敷が無くなっており、かろうじて支柱の跡が残るのみ。
そしてその中心に大きな箱が置かれていた。
近付くと箱には四つのボタンが付いている。
肉、木の実、魚、人参。
食物? あれか、選択式で中身が対応したアイテムに変化するとかそういう奴か。
一応危険が無いか調べ、開けられるか確認を取ったが開けられない。当然ながらボタンが鍵を握っていそうだ。
まあこの中だったら一つしかないよな
ルアーとか、性能の高い釣竿、あるいは釣り針などだろうか。
きっと状況的にハーベンブルグ伯爵の贈り物だからな。期待して良いだろう。
俺は迷わず魚のボタンを押した。
ペーン!』
魚のボタンを押すと箱から何かが叫びながら飛び出してきた。
ビックリさせんな。
くそっ、伯爵め、何を残していたかと思ったらトラップかよ。
箱から出てきたのはデフォルメされたペンギンの様な形をしたモンスターだ。
頭にサンタの帽子みたいな物を付けている。
大きさは俺の胸位の高さ。
デカイ? とも思うが良く考えたら俺は幼女だった。無難な大きさか。
俺は迷わずケルベロススローターを持つとモンスターと対峙する。
ペックルはモンスターじゃないペン
しゃべった!?
今まで倒してきたモンスターは人語を解した事が無かった。
というかしゃべったら嫌だ。倒せないじゃないか。
ペ、ペックル?
ペンギンとコルポックルが力を合わせてーーペックルになったんだペン
聞いてもいないのにやや説明口調で語りを始めるペックル。
ペンギンとコルポックルでペックル?
微妙な造語だな。
容姿はペンギン八割、コルポックル二割といった所だ。
なんかリーダー格と思わしきサンタ帽子の近くに山から二匹のペックルがやってきた。