なんか面白いからスクリーンショットを撮っておこう。
俺は両手でカメラのポーズを取るとその人物を撮影して何枚か撮った。
もっと近付けないかな?
近付いてアップの写真を撮る。
というか、このポーズじゃ砂とか海水で窒息するんじゃないか?
ゲームだから大丈夫なのかもしれないけど。
よし、もう一枚。
しかし近付いた瞬間、足をつかまれた。
ひぃっ! 磯女!?
誰が磯女ですか! って絆さん?
俺の足をつかんで磯女と化した硝子が戸惑いの言葉を漏らした。
つまり、昨日のペックルは仲間を呼び寄せる為のフラグか。
絆さん! 今まで一体何をしていたんですか! 心配したんですからね
そう呟きながら俺の小さな身体を抱きしめる硝子。
今まで硝子達が何をしていたのか俺に解らない様に、硝子達もまた、俺が何をしていたのか知り得なかった、という事なのだろう。
それにしても漂流してから随分と硝子の声を聞いていなかったが、妙に落ち着くな。
なんでだろう。いや、まあ硝子は頼りになるし、信頼できる奴なのは事実だが。
何をしていたと言われると微妙に答えに臆するが、率直に開拓をしていた
開拓、ですか?
ああ、島から出られないんだ
俺はこれまでの経緯を長々と語る。
漂流して一週間、皆を待ち続けた事、島から出られない事、開拓者の七つ道具を使って開拓を始めた事、ペックルというサポートキャラクターと開拓をしていた事、開拓が進んで比較的に生活が安定してきた事、昨日ペックルが硝子の名前を聞いてきた事。
これ等の話を続け様に話す。二週間近くを事実上一人で生活していた為、口数が増えたが、硝子は真剣に聞いてくれた。
そうですか、そんな事が絆さん
がんばりましたね
ありがとう
がんばったか、がんばってないかと言われれば、自分でもがんばったと思っている。
ペックルがいたけど、やはりNPCだ。一人で過ごすのはやっぱり寂しかった。
寂しさをごまかす様に開拓に身を投じて忙しい日々に意識を遠ざけたのも事実だ。
開拓系のゲームが特別好きだったのが救いだが、それでも硝子と会えて嬉しい。
硝子達の方は今まで何をしていたんだ?
はい。私達はあれから第一都市で目覚めたのですが
幽霊船の戦いの後、硝子達は全員が無傷で第一都市ルロロナの砂浜に流れ着いたらしい。
よかった。実は硝子と闇影のエネルギーダメージが無いか心配していた。
最悪、現在の俺の様に全員がバラバラになっていた可能性も危惧していたが、幸いそういった事はなかったみたいだ。
それから硝子は皆と直に再会した訳だが、俺と連絡が取れない事に気付いた。
チャットを送っても。
現在相手の電源が切れているか、電波の届かない所にいます』
と、ご丁寧に俺が硝子達に送ったチャットと別ヴァージョンが表示されたらしい。
おかしなチャットの言葉もそうだが、不可解な状況に硝子は皆と俺の探索に乗り出してくれたそうなのだが、尽く消息は掴めず、無駄に時間を浪費していく。
硝子曰く場所が海だっただけに、アルトが何かのイベントに巻き込まれているんじゃないか、と真相に近い憶測を提示して、海などを探索したが結果は今を見ればわかる。
そんな感じで経験値と過ぎて行く時間だけが肥大していった頃ディメンションウェーブ第二波が発生した。
ちょっとした焦りが硝子の心を支配した頃、宿の自室に突如巨大な手の形をした海水が現れ必死の攻防も虚しく、気が付いたらここにいたという。
なるほど、俺も第二波は見えたけど、このタイミングで呼んで悪かったな
いえ、絆さんが無事ならそれだけで良いのです
だけど第二波で硝子がいないのは結構な損失だろう。一波的な意味で
問題ありません。最初から参加するつもりはなかったのですから
それはどういう
硝子は瞳を閉じて大事そうにアイテム欄から俺が貸したエネルギーブレイドの柄を握っていた。そうして俺にエネルギーブレイドを手渡すと話を再開する。
絆さんに、これを返したかったんです
硝子は相変わらずだな
はい! 私はそうそう変わりません
何にしても元気そうでなによりだ。
カルミラ島に来てから皆の事だけは心残りだった。
船上戦闘スキルを未取得に回した俺的にどうなのかは知らないが。
それで、どうしてディメンションウェーブに参加しないんだ?
もう絆さんは、私に言わせるんですか?
? まあ言いたくないなら、それで良いけど
取り敢えず硝子だけとはいえ合流を果たせたのだから良いとするか。
ともかく再会祝いだ。昨日手に入れたクエを朝食にして祝いの席を築こう。硝子を連れて俺が寝泊りをしている拠点へと急ぐ。途中硝子がペックルの集団を見て身構えた。
化け物!
扇子二つを腰帯から瞬間的に取り出し、距離を取る。
しゃべりました!
やべぇ、反応が俺と同じだ。
まあ普通にペックル(笑)とかモンスターにしか見えないよな。
そもそも頭の悪い語尾に数だけが取り得のペックルだからな。
えっと、こいつ等がさっき説明したサポートキャラだ
そ、そうなのですか。沢山いるので驚きました
良く考えれば俺は見慣れたがこの光景は異質だよな。
立場が同じなら硝子と同じ反応をしていた自信がある。
でも凄いですね。この島では建物に巨大なペンギンがいるんですね
ですから、あの魚の印が付いている建物に巨大な紫色のペンギンが
指を向けた方向を眺める。
そこにはペックルの食料が保存されている施設、食料庫がある。
硝子の話通り魚のマークをしており、あそこに魚を入れておくとオートでペックル達がやる気を回復させる施設なのだが。
施設が襲われているペン
サンタ帽子そんな冷静に言われてもな
ペックルのリーダー的存在、サンタ帽子ペックルが淡々と言った。
個人的にはもう少し慌てて報告してほしかった。
しかしカルマーペングーは森から一歩も出てこなかったはずなんだが。
すると珍絶景でも眺める様な硝子に視線がいく。
島に存在するプレイヤーの人数が増えたから?
ゲームではよくある事だが、参加人数が増えると難易度も上昇するという事があるんだが、もしかしたら今回のカルマーペングーはそれに該当するかもしれない。
と、ともかく今は硝子先生がいるからな。あのデブ、絶対食ってやる
先生? なんですか、その悪意の篭った表現は
俺の中で硝子は先生なんだよ
今度追求しますからね
と、ともかくアレを倒してくれないか? 俺一人じゃ厳しくてな
わかりました。絆さんといると、変わった事ばかり起こりますね