Выбрать главу

 アナグマはべつのアナグマとけんかのまっさいちゅうで、だからアナグマどうしをぶつけるにはぜっこうのチャンス、とアリスは思いました。ただ一つ困ったことに、フラミンゴがお庭のむこう側にいってしまっていて、そこでアリスが見たところ、木にとびあがろうとして、むだにがんばっています。

 フラミンゴをつかまえてもどってきたころには、アナグマのけんかも終わっていて、二匹ともいなくなっていました。「でもどうでもいっか。クロケー場のこっち側は、ゲートがぜんぶいなくなっちゃってるし」そう思ってアリスは、フラミンゴがまたにげださないように、うでの下にしっかりとかかえて、お友だちともっとおしゃべりしようと、もどっていったのです。

  チェシャねこのところにもどってみると、まわりにかなりおっきな人ごみができていたのでおどろきました。首切り役人と王さまと女王さまが、論争(ろんそう)をしています。三名は同時にしゃべっていますが、それ以外はみんなだんまりで、すごくもじもじしています。

 アリスがすがたを見せたとたん、その三名がいっせいに自分の意見をうったえてきて、問題を解決してくれ、といいます。そして三名とも自分の言いぶんをくりかえすのですが、みんな同時にしゃべるので、いったいそれぞれなにを言ってるのか、きちんと理解するのは、とてもたいへんでした。

  首切り役人の言いぶんは、首を切りおとすには、まずその首がどこかのからだにくっついていなくちゃダメだ、というものです。首だけの首を切りおとすなんて、いままでやったこともないし、だからいまさらこの歳(とし)になってはじめるつもりもないよ、と言います。

  王さまの言いぶんは、首がそこにあるんだから、それを切りおとすだけのことでなんの問題もない、へりくつをもうすな、というものでした。

  女王さまの言いぶんは、いますぐなんとかしないと、みんな一人のこらず死刑にしてやる、というものでした(この最後のことで、みんなあんなに困って不安そうだったのです)。

 アリスとしてはなんと言っていいかわかりませんでした。「あれは公爵夫人のものだわ。だから公爵夫人におききになったほうがいいわよ」

 「あやつはろうやにおるぞ。つれてまいれ」と女王さまが首切り役人にもうしますと、役人は矢のようにびゅーんととんでいきました。

  役人がいってしまったとたんに、ねこの頭は消えだしまして、公爵夫人をつれて役人がもどってきたころには、もう完全に消えてしまいました。だから王さまと役人はあちこちかけずりまわって、必死でねこをさがし、ほかのみんなは試合にもどっていきました。

9. にせウミガメのお話

  「またお目にかかれてどんなにうれしいか、あなた見当もつかないでしょう、このかわいいおじょうちゃんったら!」と公爵夫人は、愛情(あいじょう)たっぷりにアリスにうでをからめてきて、二人は歩きだしました。

 夫人がずいぶんごきげんうるわしいので、アリスはとてもうれしく思いました。そして台所であったときにあんなにあれ狂ってたのは、コショウのせいでしかなかったのかも、と思いました。

  「あたしが公爵夫人になったら」とアリスはつぶやきました(が、自分でもあまり見こみあるとは思ってなかったけど)「台所にはコショウなんか、ぜーんぜんおかないんだ。スープはコショウなしでもじゅうぶんおいしいもの― ―人がカッカしちゃうのは、みんなからいコショウのせいなのかも」アリスは、新しい規則みたいなものを見つけたので、とても得意になってつづけました。「それでみんながにがにがしくなるのはサンショウのせいなんだ― ―しぶくなるのは、茶しぶのせいで― ―それで― ―それで子どもがニコニコしてるのは、おさとうとかのせいで。みんながこれをわかってくれればいいのに。そうしたら甘いもの食べすぎてもあんなに怒らないだろうし― ―」

  おかげですっかり公爵夫人のことをわすれてしまっていたので、耳のすぐ近くで声がきこえてちょっとびっくりしてしまいました。「なにか考えごとをしていたでしょう、それで口がおるすになるんですよ。その教訓がなんだか、いまは話せないけれど、しばらくしたら思いだしますからね」

 「教訓なんかないんじゃありませんか?」アリスは勇気を出して言ってみました。

 「これこれ、おじょうちゃん。どんなことにも、教訓はあるですよ、見つけさえすれば」こう言いながら、夫人はアリスの横にもっとギュッと身をよせてきました。

 アリスは、夫人とこんなにくっついているのは、あんまり気に入りませんでした。まず、公爵夫人はすっごくブスだったからで、さらにちょうどあごがアリスのかたにのっかるせたけで、しかもいやんなるくらいすごくとがったあごだったからです。でも、失礼なことはしたくなかったので、なるべくがまんすることにしました。

  「試合はちょっとましにすすんでるようですね」とアリスは、間をもたせようとして言いました。

 「いやまったく」と公爵夫人。「してその教訓は― ―『ああ、愛こそが、愛こそがこの世を動かす!』」

  「だれかさんは、みんなが自分のやることだけ気をつけてりゃ動くって言ってませんでしたっけ」とアリスはささやきました。

 「ああそうでしたっけ。でも言ってることはまあ同じですよ」そう言いつつ、夫人はとがったあごをアリスのかたにつきさします。「そしてその教訓は― ―『安言(やすごと)づかいの意味(いみ)うしない』」

 「教訓さがしが、ほんっとに好きなのねえ」とアリスは思いました。

  夫人はちょっと間をおいて言いました。「ひょっとして、わたしがなぜおじょうちゃんのこしに手をまわさないのかな、と思ってるんでしょう。そのわけはね、そのフラミンゴがかみつくんじゃないかって、ちょっと心配なのよ。ちょっと実験してみましょうか?」

  「ずいぶんピリピリしてますよ、このフラミンゴ」アリスは不安そうにこたえました。そんな実験をためしてほしいとは、これっぽっちも思いません。