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 「へんなの、へーんなの!」とアリス。「あたし、望遠鏡みたいにちぢまっちゃってるのね」

  そしてたしかにそのとおり。アリスはいまや、身のたけたったの25センチ。これであの小さなとびらをとおって、あのきれいなお庭にいくのにちょうどいい大きさになったと思って、アリスは顔をかがやかせました。でもまず、もう何分かまってみて、もっとちぢんじゃわないかどうかたしかめました。これはちょっと心配なところでした。「だってあたしがロウソクみたいに、ぜんぶ消えちゃっておしまいになるかもしれないでしょ」とアリスはつぶやきました。「そうなったらあたし、どうなっちゃうんだろ」そしてアリスは、ロウソクをふき消したあとで、ロウソクの炎がどんなようすかを想像してみようとしました。というのも、そんなものを見たおぼえがなかったからです。

  しばらくして、それ以上なにもおきないのがわかって、アリスはすぐにお庭にいこうときめました。でもかわいそうなアリス、ざんねんでした!とびらのところにきてみると、あの小さな金色の鍵をわすれてきたのに気がついたのです。そしてテーブルのところに戻ってみると、ぜったいに手がとどきません。ガラスごしに、とてもはっきりと見えてはいます。アリスはがんばってテーブルの脚をよじのぼろうとしましたが、つるつるでだめです。そしてがんばったあげくにつかれきって、かわいそうなこの子は、すわって泣き出してしまいました。

  「こら、そんなふうに泣いてちゃだめだぞ!」とアリスは、ちょっときびしく自分に言いきかせました。「いいわね、いますぐ泣きやみなさい!」アリスが自分にする忠告は、とてもりっぱなものが多いのです(そのとおりにすることはほとんどなかったんだけどね)。そしてときどきは、自分をきびしくしかりすぎて、涙が出てくるほどでした。いちどなんか、自分相手にやっていたクロケーの試合でいんちきをしたので、自分の耳をぶとうとしたくらい。というのも、このふうがわりな子は、一人で二役をやるのがとても好きだったからです。「でもいまじゃ、二役をやってみてもしょうがないわよね。だってあたしはもうほとんど残ってなくて、まともな人間一人にも足りないくらいなんだもの!」とかわいそうなアリスは考えました。

 やがて、テーブルの下の小さなガラスのはこが、アリスの目にとまりました。あけてみると、中にはとってもちっちゃなケーキが入っていて、ほしぶどうで「たべて」ときれいに書いてあります。「食べちゃおうっと」とアリス。「これで大きくなれたら、鍵に手がとどくでしょ。小さくなるようなら、とびらの下からもぐれるな。だからどっちにしてもあのお庭には行けるわけよね。あたしはどっちだっていいわ!」

  ちょっと食べてみて、アリスは心配そうに自分に言いました。「どっちかな?どっちかな?」そして頭のてっぺんに手をやって、自分がどっちにのびているかを確かめようとします。ところが同じ大きさのままだったので、アリスはとってもびっくりしました。そりゃたしかに、ふつうはケーキを食べるとそうなるのですが、アリスはへんてこりんなことを期待するのになれすぎちゃっていたもので、人生がふつうのやり方でつづくなんていうのは、すごくつまんなくてばかばかしく思えたのです。

  そこでアリスはそのままつづけて、じきにケーキをたいらげてしまいました。

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2. 涙の池

 「チョーへん!」とアリスはさけびました(びっくりしすぎて、ちゃんとしたしゃべりかたを忘れちゃったんだね)。「こんどはこの世で一番おっきな望遠鏡みたいに、ぐんぐんのびてる! 足さん、さよなら!」(だって足を見おろしたら、もうほとんど見えなくなっていて、どんどん遠くなっているのでした)。「ああ、かわいそうな足さん、これからだれが、くつやストッキングをはかせてあげるんだろう。あたしにはぜったいにむりなのはたしかね! すっごく遠くにいすぎてて、あなたたちのことにはかまってられないの。できるだけ自分でなんとかしてね:――でも、親切にしといてあげないと」とアリスは思いました。「そうしないと、あたしの行きたいほうに歩いてくれないかも! そうねえ。クリスマスごとに、新しいブーツをあげようっと」

 そしてそれをどうやろうか、アリスはほんとに計画をはじめました。「運送屋さんにおねがいしないと。でもすっごく変でしょうね、自分の足におくり物をおくるなんて!それにあて先もずいぶんとおかしなものになるな。

だんろのかなあみ付近

じゅうたん気付

アリスの右足閣下へ

  (アリスの愛をこめて)

  あらあらあたし、なんてばかげたことを言ってるんだろ!」

  ちょうどそのとき、頭がろうかの天井にぶつかりました。もうそのとき、アリスは身長三メートルになっていたので、すぐに小さな金色の鍵を手にとって、お庭へのとびらへといそぎました。

 かわいそうなアリス! できることといったら、ねそべって片目でお庭をのぞくことだけでせいいっぱい。でも、とおりぬけるなんてまったく絶望的。アリスはまたすわって泣き出しました。

  「はじを知りなさい」とアリスは言いました。「そんなおっきななりをして」(まあたしかにそのとおり)「いつまでも泣いてばかり。いますぐやめなさい、いいわね!」でもアリスは、それでもかまわず泣きつづけて涙を何リットルも流したので、まわりじゅうにおおきな池ができてしまいました。深さ10センチくらいで、ろうかの半ばまでつづいています。

 しばらくすると、遠くからピタピタという小さな足音が聞こえたので、あわてて涙をふいて、なにがき

ているのかを見ようとしました。あのうさぎが、りっぱな服にきがえてもどってくるところで、片手には白い子ヤギ皮の手ぶくろ、そしてもう片方の手にはおっきなせんすを持っていました。とってもいそいで走っていて、こっちにきながらも「ああ、公爵夫人が、公爵夫人が! 待たせたりしたら、なさけようしゃなんかありゃしない!」とつぶやいています。アリスのほうは、もうせっぱつまっていて、だれでもいいから助けてほしい気分。そこでうさぎが近くにきたときに、小さなおちついた声でこうきりだしました。「あの、おねがいですから――」うさぎは、うっひゃあととびあがって、子ヤギ皮の手ぶくろとせんすを落としてしまい、全速力(ぜんそくりょく)で暗闇(くらやみ)の中へとかけ去っていってしまいました。