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いや。これは性質の悪い流行り病だな。最近、大規模な死相がこの辺りを覆っていたが、やはりそういう事か

Olはローブの中からごそごそと瓶を取り出すと、村人に手渡す。

とりあえずはこれを渡しておこう。体力を底上げする薬だ。体調を崩したものが出たら、この中の液体を一匙、水に混ぜて飲め。病気が治るわけではないが、命を落とすのは免れるだろう。近いうちに病気の治療薬も調合して持ってきてやる

村人は目を見開くと、ぷるぷると震える手で瓶を受け取り、その場で土下座せんばかりに平伏した。

あありがとうごぜぇます! Ol様はこの村の恩人です!

そう畏まらんで良い。お前達が俺に報いる限り、俺もお前達を守ってやる

Olの言葉に更に頭を低くする村人に別れを告げ、Olはユニスと共にダンジョンへと帰還した。

ごめん、あたしOlの事誤解してた!

ダンジョンに戻るなり、ユニスはOlに頭を下げた。

力で無理やり村人達を脅して、不正に搾取してるんだと思ってたでも、村人のOlを見る目はまるで善政を敷く領主でも見るみたいだった。ううん。どんな領主も税をとるけど、あんな小さな村を魔物から守ったり、作物を増やす助けなんてしない。やっぱり、Olは邪悪なんかじゃなかった

そこまで買いかぶられるとこちらも少々辛いのだがな。無意味に殺したりはしないが、楯突くものは容赦なく殺すのだから邪悪である事にはかわりない

これは半分以上は本音だ。しかし、ユニスは首を横に振った。

それは悪いことをしたら罰を与えるのが当たり前だし。それに、Olはあたしの事は殺さなかったでしょう?

悪いことをしたら罰を与えるのが当たり前と言うのは、催眠で刷り込んだものだ。元々正義感が強いユニスはそれを殆ど抵抗なく飲み込んだ。

それなんだがな本当に罪があったのはお前なのか?

それはそう、だよ。昨日そう言ったでしょう?

だが、お前は俺が村と取引している事を知らなかった。お前に俺を殺させて生贄を渡すことなく、田畑への祝福や魔物からの守護だけを受け取ろうとしたのではないのか?

それはその、多分、あたしが慌てて飛び出したから説明する暇がなかったんじゃ

ユニスは村人を庇おうとするが、昨日感じたほどの強い決意はないようだった。

では、確かめにいくか

ここからが本番だ。Olは、内心そう呟いた。

それから、三日ほどたった後。Olは剣を携えたユニスを連れ、彼女がOl討伐を頼まれたという村を訪れていた。

初めはOlに村の場所を教える事を拒んだユニスだったが、彼女の同意なく村を害しはしないと約束し、もし約束を破ればそれは悪であり、好きにしていい、と言って剣を渡すと、渋々納得した。

さて。俺はここで待とう。その目と耳で確認してくるがいい

村の外れで、Olはユニスの背中を押す。

ユニスは不安を抑えながら、村長の家へと向かう。村人達が自分を騙したなどとは思いたくない。しかし、Olの事も信じたい。何か、不幸な行き違いがあったのではないか

そう信じ、村に足を踏み入れた彼女に向けられたのは無数の殺気だった。

こいつどの面下げて戻ってきやがったんだ!

え?

自分が何をしたのかわかってるのか!?

村人の罵声に、他の村人達も集まってくる。

お前がOl様を殺したせいで田畑は枯れ、妖魔どもが家畜を殺していった!

流行り病が溢れ、子供たちが死んでいった!

お前のせいで! お前が正義の味方気取りで余計な事をしたせいで!

村中の人々がユニスの前に集まり、口々に罵声を浴びせる。

どういう事?

ユニスが想像していたのは、村人がOlの事を誤解しているか最悪でも、Olが言った通り、ユニスを利用した、という事だった。予想外の状況に彼女は戸惑い、思わず数歩後ずさる。

逃げる気か!? ふざけるな!

村人の一人が、足元にあった石を拾い、ユニスに向かって投げる。それは当たらなかったが、触発されたのか村人達は次々にユニスに向かって石を投げ始めた。

畑を返せ! 俺の牛を返せ!

あたしの子供を返して!

Ol様を返せ! この殺戮者め!

Olは死んでない、さっきまで一緒に

ユニスは必死に弁明しようとするが、怒りに燃える村人達には通じない。

これでも喰らえっ!

最初に石を投げ始めた男が、こぶし大の岩をユニスに向かって投げつける。避ける事は容易かったが、そうすれば更に村人達の怒りに油を注ぐことになる。そう思い、ユニスが痛みを覚悟して目を瞑る。

何をしている

しかし、痛みの代わりに降り注いだのは、Olの声だった。

Ol様! 生きてらしたのですか!?

ユニスを庇うように立つOlの姿に村人達は投石をやめる。

Olどうして?

ユニスは一体どういう状況なのか理解できず、Olに尋ねた。

お前に聞くまでもなく、この村がお前をけしかけた事はわかっていた。入り口のガーゴイルは村を守る為に置いたものだが、同時に村を監視する為のものでもある。しかし、この村人達はそんな事さえお前には伝えなかった

ユニスが呆然と見上げると、Olの腕から一筋、血が流れた。ユニスを庇って腕に投石を受けたのだ。

罪は全てお前が被った故、村人達に危害は一切加えていない。だが、贄の代償として畑に与えていた魔力は止め、ガーゴイルの制御もなくし、他の村には配った流行り病の薬もこの村には与えなかった。それを、村人達はお前が俺を殺した故の事だと思ったらしいがな

オOl様! 我々には、あなた様に危害を加える気は一切ございません!

全ては、そこの女の独断です!

Ol様、どうかお慈悲を! 我々は止めたにも関わらず、その女が勝手に!

口々に叫ぶ村人たち。ユニスを良い様に利用し、都合が悪くなれば掌を返し、あまつさえ罪を擦り付けて売り渡す。

ユニス。これが、お前が必死に、純潔を賭してまで庇った者達だ

あははあはははははははは!

おかしくて仕方がなかった。こみ上げてくる笑いを躊躇なく解放し、ユニスは剣を抜き放つ。

ごめんね、ありがとう、Olあたしが、間違ってた。あの罪には、罰を与えなきゃいけない!

ユニスは村人に向かい、つむじ風の様に走る。彼女がその気になれば、投石も敵の数も何の問題にもならない。訓練もろくに積んでいない村人達など、瞬く間に切り殺せる。

が。

彼女の振るう白刃が村人の身体を捕える前に、村人達は一人残らず立ち上った炎に包まれ、声をあげることさえ出来ず一瞬にして絶命した。

いきなり鼻先で立ち上った炎に気勢をそがれ、ユニスはOlに振り向く。

相手に罪があるからといって、それで殺してしまうのは邪悪な者のすることだ。ユニス、お前はそのまま真っ直ぐでいろ。お前を害する者は俺が全て排除してやる。だから、お前は正義のままでいろ