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Olぅ

ユニスがぽろぽろと涙をこぼし、Olに駆け寄って抱きつく。

俺は、俺だけはけしてお前を害さない。だから、お前も俺を害さないと誓えるか?

Olの言葉に、ユニスは泣きじゃくりながらこくこくと頷く。

では、我が名、アイン・ソフ・Olにおいて、けしてお前を害さぬと誓おう

ユニスフィニア・メレディス・ル・エラ・グランディエラの名において、

けしてOlを害さず、愛し続けることを誓うよ!

なんだって?

Olの間抜けな声が響いたのは、二人を琥珀色の光が取り巻き始めた後の事だった。

お疲れ様。これでとりあえず一段落?

ダンジョンの奥。今度は罰ではなく、誓いの証として抱いて欲しい。

そんな事を言い出し、三度ほどOlの精を受け止めたユニスがすっかり妻の様な態度で眠りこけた所で、リルはOlに声をかけた。

ああ、まあ、一応はなこれでユニスの英雄の星は堕ちたる英雄に変化した。悪徳をなし、魔を好む闇の英雄だ。そうそう俺に歯向かう事はないだろう

強大な力を持つ英雄の星に危害を加えないという制約を結ばせ、更にその力を手にしたものの、Olの表情は冴えない。

厄介ごとは一気に増えたがな

ユニスが愛まで誓う事は完全に計算外だった。信用を得る為にある程度Olに依存させたのは狙い通りだったが、まさかそこまで深く依存するとは思わなかったのだ。だが、それだけならまだいい。

まさかこのなりで王族だったとはな

ユニスが名乗った名前は、グランディエラ国の直系を示す名だった。こんな所を冒険者として一人でフラフラしているからには王位継承権は殆どない末席なのだろうが、それでも火種の元になるのは明らかだ。ユニス一人に突破されるような迷宮だ。王国軍に攻め入られても防げるほどのダンジョンにはまだまだ程遠い。

外に放り出して縁を切ってしまいたいところだが、そういう訳にもいかない。ユニス本人が嫌がるだろうし、嫌がる事を無理やり強制するのは危害のうちに入るからだ。

まあ、それは後で考えるとして今回、私結構頑張ったと思うんですけど?

ニコニコ笑いながらリルが言う。しかし、目は笑っていない。

今回リルがOlに同行しなかったのは、裏で走り回っていたからだ。サキュバスには魔術とは違う、生まれ持った能力がいくつかある。

例えば、最初にユニスを連れて行った村。そこの村人がOlに対して異常に友好的だったのは、リルが男が持つ理想の女性像に変身する能力を応用してOlの姿で何度も村に赴き、村人達と友好的な関係を築いていたため。

ユニスにOl退治を依頼した村の村人達がユニスに石を投げたのは、リルが魅了能力で村人達を操り、けしかけたからだ。英雄の星を魅了し操るような事は出来ないが、ただの村人であれば村一つ丸ごと操る程度造作もない。

そして、本人の同意さえあれば強制の呪いであってもかけることが出来る。望まれる呪いとは、すなわち祝福の事だからだ。ちょうど、結婚を誓う男女がお互いを誓い合うのに似ている。

だからご褒美欲しいなー、ご主人様

わかったわかった。こい

ユニスに召喚した魔獣やゴーレムを壊され、更にユニスの洗脳の為に大量の魔力を消費した。強制の呪いも、出来る限り強力な物をかけたからその消費量たるや凄まじいものだ。

大分目減りしたダンジョンコアの魔力を横目で見ながら、Olはリルを抱き寄せる。体力回復の魔力も残っていないから、後は自前の体力で何とかするしかない。

最低4回はしてくれないと駄目だからね

何を張り合ってるんだ

予期しない厄介ごとが更に増えた予感をひしひしと感じながら、Olはため息をついた。

第6.5話ダンジョン解説

第6話終了時点でのダンジョン。

階層数:2階層

瘴気:2

貯蓄魔力:15(単位:万/日)

消費魔力:3(単位:万/日)

非支配層

第一階層に出来た層。Olが直接支配せず、野生の獣や妖魔が自然に住み着くに任せている階層。作成する部屋の形によってさまざまな魔物がやってくる。現在はゴブリンが住み着いている。

迷宮LV1

いくつもの行き止まりや分かれ道による迷路。ちゃんと地図を書きさえすれば迷うことはまずないだろう。

湯殿

地下水脈の水を引く事で貯めた池。焼けた岩を放り込む事で湯を沸かす。底冷えする迷宮の中で安らぎのひと時を送ることが出来る。

ゴブリン

戦力:1

雑魚の代名詞。小さな身体と醜い容貌を持つ妖魔の一種。戦力としては全く期待できないが、手先は器用で狡猾な為、ダンジョン中に勝手に簡単な罠を仕掛ける。また、繁殖力が凄まじく、男女の番が1組いれば1月後には数が10倍になっている。他の妖魔の餌としても重要。

スケルトン

戦力:3

リビングデッドから丁寧に肉を取り除き、骨に魔方陣を掘り込む事で作り上げた逸品。丁寧な仕事により戦力が2.5から3くらいには上がっている。が、ユニスに纏めて破壊された。

ヘルハウンド

戦力:5消費魔力:0.2

地獄の猟犬。姿形も行動も犬そのものだが、一応悪魔に分類される。忠実で俊敏。鋭い牙や爪、そして口から吹く炎はかなりの攻撃力を誇る。反面、防御力は普通の犬とそう大差ないためにやられる時は簡単にやられる。勿論ユニスにはあっさり殺された。

クレイゴーレム

土に魔力をかけた生ける人形。動きは遅く、素材が土であるため脆いために殆ど戦力にはならない。が、身体が大きく怪力を持っている為、単純な力仕事や壁としては有用。ユニスには破壊すらされず無視された。

ユニス(英雄)

戦力:10最大貯蓄魔力:5

英雄の星の下に生まれた少女。堕ちたる英雄となってもその戦闘能力は健在。回復、攻撃、防御の魔術をバランスよく使いこなし、剣の腕も一流以上。一撃の重さよりスピード重視の戦闘スタイルだが、十分重い一撃を凄まじい速度で放ってくる。

クレイゴーレムに運ばせ、ダンジョンコアは第二階層に移動した。主な防衛設備はゴブリンの罠とヘルハウンド、簡単な迷宮。ユニスには凄まじくあっさり突破されたが、英雄補正で迷宮も最短距離で突破してきたため、設備の悪さというよりは相手が悪かった。

第7話穢れ無き乙女を生け贄に受け取りましょう-1

日の光が一切差さぬ迷宮の奥で、時間を知ることは容易ではない。入り口付近ならまだしも、奥ともなると地上の暖まった空気すら流れ込んでくる事はなく、時間どころか季節すら感じる事はできない。

日時計など使えるわけも無いし、時間を伝える教会の鐘の音もない。機械式時計と言うのも考案されたらしいが、それも塔の上に取り付ける巨大なもので、狭いダンジョンの中に設置できるようなものではない。

そういうわけでダンジョン内での時間を知らせるのは、リルの重要な仕事の一つとなっていた。闇に包まれた魔界で暮らしていた彼女にとっては、今の時間を知る事は呼吸をするのと同じくらい容易い。