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妖魔の種類によっては、互いに諍いを起こす事もあるだろう。そういった場合の鎮圧もユニスの仕事だ。いわば治安維持だな。リル、そういった騒ぎを見かけたら、俺とユニスに知らせるようにしてくれ

ん、わかった

そういうのは得意だから、任せといて!

頷く二人に満足し、Olは更に説明を続ける。

魔術創造はスピナ、お前の仕事だ。これは、魔術でゴーレムやスケルトンといった擬似生命を作るものだ。はっきり言って、魔法生物は戦闘においては大した役には立たん。さほど強くないし、判断力もないに等しい。が、創造主には絶対忠実だし疲れも知らんから、単純な作業や雑事の手助けにはピッタリだ。餌も要らんから契約雇用の様にコストもかからん

こくり、とスピナは頷く。説明を聞く態度を見るに、彼女はかなり聡明そうだ。

魔法生物の作成に限れば、一ヶ月もあればそれなりのものを作り出し、一年か二年程度で一端の魔術師には育つだろう、とOlは睨んだ。

最後の悪魔召喚は、まあ現物がそこにいるから大体わかるだろう。全面的に俺が請け負うから理解する必要もさほどないが、一応説明しておく

Olはリルを見ながら言葉をつづる。

悪魔召喚は、まあ聞いて字の如く、悪魔を異界から召喚し、使役する方法だ。酷く手間がかかるし、呼び出すのにも維持するのにも大量の魔力を食う。他の三種に比べ圧倒的にコストがかかる。が、その能力は折り紙つきだ。リルは淫魔だから戦闘力は大したことはないが、普通の悪魔はそこらの妖魔とは比べ物にならんほどの強さを持っている。切り札というか、奥の手に当たるわけだ

なるほどー

まあ、本当の切り札は今頷いているお前なんだがな、と、Olはユニスを見て胸中でつぶやく。彼女が、仮にも中級悪魔に属するヘルハウンドを一刀の元に切り捨てたのは記憶に新しい。

まとめるぞ。自然発生はコストはかからないが、戦力は安定しない。担当はリル。契約雇用は戦力は期待できるが、金が必要。担当はユニス。魔術創造はわずかな魔力で作れるが、戦闘の役にはあまり立たない。担当はスピナ。悪魔召喚は膨大な魔力を必要とするが、戦力は随一。担当は俺だ

はーい。そんじゃ、また迷宮の見回りいってくるかなー

ん、何とかわかった!

かしこまりました、お師匠様。具体的な魔術の手ほどきをお願いいたします

三者三様に答える部下達に頷くと、Olの服の袖がくいくいと引っ張られた。

そちらをみると、マリーが何やら期待に目を輝かせ、Olを見上げていた。

わたしの、たんとう、は?

五歳児に何を期待しろというんだ。そんな言葉を飲み込み、Olは声を絞り出すように答えた。

飯の時間になったら俺を呼びに来い

あい!

とてもいい笑顔で、マリーは返事をした。

第8話邪悪なる下僕どもを揃えましょう-2

ご主人様、第一階層にコボルトが巣をはったよ

おお、ついにか!

リルの報告に、Olは思わず表情をほころばせた。

珍しい彼の喜びの表情に、リルは首を傾げる。

コボルトってそんなに強い妖魔でもないんじゃなかったっけ?ゴブリンよりちょい強いくらいでしょ

ああ、その通りだ。が、奴らは元々鉱山に住む土の妖精の出身でな。鉄を腐らせるから嫌われて闇に落ちはしたが、石の細工や坑道掘りは抜群に上手い。今までは俺の素人に毛が生えた程度の技術と、インプどもの魔力で何とかダンジョンを拡げてきたが、これで一気に拡張できるぞ

そういえば、この所ダンジョンの規模は殆ど変わっておらず、インプも崩れた場所を補修するくらいで殆ど見かけなくなっていた、とリルは思い出した。

いいか、絶対に逃すな。貯蓄している食料から、1割なら分け与えてよい。懐かせ、味方に引き入れろ。魅了の術を使っても構わん。オークとは天敵だから巣を離しておき、絶対に鉢合わせしないように配慮しろ。戦いになったら勝つのはオークだからな。いざとなったらオークどもを皆殺しにしてでもコボルトを守れ。いいな

熱心に説明するOlに気圧され、たじろぎながらもリルはこくこくと頷いた。

後、Olに面会したいって言うアールヴの一団が来てるんだけど、どうする?一応ユニスも呼ぶ?

アールヴだと?

ふむ、とOlは少し考え、首を横に振った。

いや、ユニスはいい。俺とお前で対応しよう

アールヴと言うのは、森に住む妖精の一種だ。地方によってはエルフなどと呼ばれる事もある。

男女共に総じて美形で、弓や魔術の扱いに長け、長命で老いを知らない。

迷宮の第二階層にある応接室でOlの前に現れたのは、褐色の肌を持つ美女たち5人だった。

皆一様に黒い髪を持ち、アーモンド形の深緑の瞳をしていた。

褐色の肌を持つ彼女たちは、アールヴの中でも黒アールヴ、もしくはデックアールヴといわれる氏族だ。白い肌のリョースアールヴに比べ、闇に近く好戦的なことで知られる。

面会の機会を与えて頂き、ありがとうございます。私は黒の氏族の長、エレンと申します

先頭に立った女がそう切り出した。

Olだ。用件を聞こう

Olは椅子に深々と腰掛けたまま、努めて横柄な態度で答えた。

単刀直入に申しませば、我らを保護していただきたいのです。あの憎き白アールヴどもに、我ら黒の氏族は殆どが殺され、残ったものも散り散りになりました。ここに逃れてこれたのは、私を含めましてこの僅か5名のみ。他の仲間はどうなったのかすらわかりません

白アールヴは人間と手を組んだか

Olがそういうと、エレンはぎくりと身を震わせた。

さすがは、偉大なる迷宮の王、Ol殿。そこまで見抜いておられましたか

好戦的な黒アールヴに比べ、白アールヴは本質的に平穏と停滞を好む種族だ。

戦いになれば、白アールヴが敵う訳はない。

となれば、黒アールヴ側が戦争を仕掛け、人間と手を組んだ白アールヴがそれを返り討ちにしたという辺りが実際のところなのだろう。

白アールヴも人間に対し友好的と言うほどではないが、はっきりと敵対している黒アールヴに比べればその関係は良好だ。人間側も、黒アールヴの事は悪魔の使いと信じている。

人間に殺され、人間の俺に頼るか

Olが危惧しているのは、エレン達が人間に恨みを持ち、その範囲にOl自身も含んでいる事だ。

Ol殿は人を超えたお方。庇護を下さるならば、間違っても刃向かおうなどとは思いませぬ

じっと二人は見つめあい、腹の内を探り合う。

良かろう。対価は何だ? まさか、刃向かわぬ事、などと言うわけではなかろうな

とりあえず嘘はなさそうだ、と判断し、Olはそう問うた。

勿論です。僅か5つの手勢なれど、ここにいるものは全て一騎当千の精鋭。憎き白アールヴを平らげるその日まで、その身全てをOl殿に捧げましょう