ジャイアントフライ
巨大なハエ。と言っても30cmほどで、戦闘力は殆どない。ゴブリンと互角の戦いを繰り広げられる稀有な存在。ただし、暗い迷宮でも関係なく空を飛ぶその機動力にだけは特筆すべきものがあり、侵入者があった場合真っ先に気がつき警戒音で辺りに危険を知らせる厄介な存在。なお、警戒音によって引き寄せられたジャイアントスパイダーに捕食される事も迷宮内ではよく見られる展開である。
オーガ
戦力:5
人食い鬼とも呼ばれる、身の丈3mを超える大型の妖魔。人に限らず、動くものなら悪魔以外は何でも殺して食べる。群れを作らず、気ままに動く為に数をそろえるのは難しいが、妖魔の中ではかなり強い力を持っている種族であり、戦力として十分に期待できる。Olの迷宮での主食はゴブリン。
媚薬スライム
生物は一切傷つけず身につけた衣服だけを消化し、媚薬効果で発情させると言うエロ小説の為だけに生まれたかのような存在。エロファンタジーではお馴染みだが実際に作ろうと思うと、技術は必要ないが天才的なバランス感覚と発想を要求される。なお、その後Olに回収、封印された。
ミオ
戦力:0最大貯蓄魔力:0.1
普通の村娘だったが、Olに魂を闇に落とされ、ダークミオとして転生。元々持っていたスキル家畜の扱いがギフト獣の理解者として成り代わった。これは魔獣・幻獣を含む獣と意思疎通をし、ある程度自分に従わせる事が出来る能力で、本人自身には戦闘能力はない物の、Ol配下の獣であれば自在に操ることが出来る。
ローガン(レッサーデーモン)
戦力:9消費魔力:3
レッサーという名とは裏腹に、ユニスに次ぐ戦闘能力を誇る強大な悪魔。でもロリコン。レッサーとは、神代に神にはむかった悪魔の中では下級、という意味であり、人間が扱えるものの中ではむしろ最上級に近い能力を持つ。でもロリコン。
あとロリコン。
非支配領域、支配領域共に戦力が充実し、またドヴェルグ、コボルトの協力によって大幅に防衛能力が増強した。初級~中級程度の冒険者ではOlの下に辿り付く事さえ出来なくなり、同時に多くの冒険者を引き寄せる下地が出来上がっている。
第9話街を蹂躙しましょう-1
Olのダンジョンは現在、全三階層である。
三階層と言っても、地下三階の迷宮という訳ではない。一つの階層は階段や坂などで簡単に行き来できる幾つかの階で構成されており、一階当たりおおよそ10mほどの高さを持つ。一階層につき3,4階分の幅を持つので、Olの迷宮はおよそ100mから120mほどの深さを持つ大迷宮だ。
階層間には道が一本しかなく、堅牢な扉が備え付けられており、Olを含むごく一部のみがそこを素通りできる鍵を持っている。この扉は魔力で強化されており、ユニスやローガンの力を持ってしても破壊には少々手間取るほどの頑強さを誇っている。
階層ごとに住むものは別れており、第一階層には勝手に住み込んだ野生の魔物や魔獣が、第二階層には契約を結んだ妖魔たちが。そして三階層にはOlとその愛人たちが住む居住区となっている。
その第三階層の更に奥、巨大な卓の置かれた部屋に、Ol達は集まっていた。
いよいよ、街へと侵攻する
重々しく告げるOlに、全員が注目する。卓を囲うのはリル、ユニス、スピナ、エレンといった顔ぶれだ。
こちらの戦力も大分整ってはいるが、村と契約したときの様に簡単にはいかん。村と街の違いは何かわかるか?
えーと人が沢山いる?
反射的に、リルがそう答える。当たり前すぎる答えを、Olは黙殺した。
人間の事を問われてもないや、待て。数の多い集落と少ない集落の違いか。多い方は武装している人間が多く、物見櫓や備え付けの弓なんかがあったな
エレンの答えに、今度はOlは頷いた。
ただ多いだけでなく、訓練を積んだ戦力と備えがある。その通りだ。
他にはあるか?
戦力って言えば、兵士だけじゃなくって冒険者もいるよね。街になればギルドだってあるし
自身が冒険者家業をやっていた時のことを思い返し、ユニスが言う。
しかし、欲しい答えではなかったらしく、他には?とOlは再度問うた。
多様性
ぽつり、とスピナが声をあげた。
街には、多様な人間がいます。街の人間だけでなく、冒険者や行商人、旅人、役人
Olはゆっくり頷いた。
村には村人しかいないと言っていい。村長の意思が村人の総意だ。長が取引に同意すれば、個々の感情はどうあれ村全体がそれに同意する。だが、街は違う
人間ではないリルとエレンにはピンとこなかったが、ユニスはああそっかと声をあげた。
気に食わなければその街を出て行ける旅人や商人が多すぎる。何かを要求すれば、町長はそれを税で補填しようとするだろう。そんな街に留まりたいと思うものは少ない。無理に要求すれば、その街はすぐに衰退し、やがては滅びる。略奪するのとそう大差はない
村に対してやったみたいに、街も得をするような条件をつけられないの?
街でも農作業は多少しているだろうが、村ほど自給率は高くない。お互いに得にはならんな。護衛も同様だ。十分自立出来ているからこそ発展し、街の規模になっているのだ。こちらが出来る事は、そう多くない
ユニスは悲しげに目を伏せ、言った。
じゃあ無理やり攻め込んで、略奪するの?
そんな事を続ければ世界が滅ぶだろう。そうなってはこちらにも益などない
Olは彼女を安心させるように、やや優しい口調で答えた。
決めさせるだけだ。どちらにつくのが得策かをな
第9話街を蹂躙しましょう-2
その日は雲一つない快晴だった。
さんさんと照りつける太陽の光と、頬をなでる風が心地良い。絵に描いたような小春日和に、ジェイクはふああ、と間の抜けた声をあげて欠伸をした。
最近不穏な噂が聞こえてくる事もあるが、国の外れのこの街は嫌になるほど平和だ。しかし、そんな街が彼はこの上なく気に入っていた。
よう、ジェイク。調子はどうだ?
同僚のマックが物見櫓を上りながら声をかける。
いつも通りさ。天気は快晴、気分は上々、本日も異常なし
だろうな
マックはジェイクの向かいにどっかりと腰を下ろすと、懐からカードを取り出した。
ポーカーでもやるかい
いいね
見張りの仕事はとかく暇だ。マックは簡単にカードを切ると、五枚ずつ配った。
たまにはゴブリンくらい襲ってくればいいのにな
そうだな
マックは懐から銅貨を一枚置きながらそういった。
マックに相槌を返し、同じように銅貨を一枚置きながら、ジェイクは内心平和を願った。騒動なんて真っ平だ。本音を言えば、植物の様に平和な日々を送りたい。