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甘え、させてよ

小さく、そう呟いた。

第20話一歩踏み入れば即死するダンジョンに挑みましょう-5

そう言えば、この白い布って何?やけに温かいけど

日差しの中でまどろむ猫のようなしぐさでOlの胸に身体を預けながら、ふとザナは二人を包んだ外套をつまみ上げる。それに身を包んでいると外の寒さはまるで気にならず、互いの体温で温めあうとかえって暑いくらいであった。

マリナに献上した火蜥蜴がいただろう

他の女の名前出すの禁止

ザナは言って、Olの局部をきゅっと握りしめる。

お前な俺相手に無茶を言うな。だいたいお前の奉ずる神であろうが

別にハーレムやめろなんて言わないわよ。でも他の子と一緒にセックスしてるときならともかく、あたしと二人っきりの時はあたしだけ見てくれなきゃヤ

やわやわと精の詰まった袋を指先で弄びながら、ザナはOlの胸元に口づけた。

ともかく。あの火蜥蜴の脱皮した抜け殻をなめして布にしたものだ

ふうん。火蜥蜴の皮衣ってわけ

さして興味もなさそうに相槌を打ちながらザナは肉茎をついと撫で、その上に腰を下ろそうとする。

おい、ザナ

なあに?まだ出来るわよね?んっ

すっかり硬度を取り戻したそれを膣内に咥え込み、気持ちよさそうに声を漏らしたところで。

それは構わんが、迎えが来ているぞ

バキリと音を立てて、彼らを囲んだ氷の壁が割れる。

お楽しみのところ悪いんですけど、さっさと服着て出てきてもらえます?

なんとか助けに来てみれば悠長に睦み合う二人に、流石のマリーもちょっぴり怒っていた。

もー、結構大変だったんですよー。二人の代わりをわたしがするの

吹雪の中、マリーはラーメスの霊力を変換して氷の壁を張り、紋様を彫ってイェルダーヴに維持を任せる。Olとザナ、二人分の仕事を一人でこなし、なんとか進んできたのだという。

進む速度は比較にもならないとは言え、それをこなせるということにザナは驚愕した。

なんで出来るの?

え、だってOlさまがやってるところずっと見てたもん

当たり前のようにマリーは答えるが、見ていたからと言って真似できるような術でもない。そもそもマリーは自身の仕事を含めて三人分の作業を同時にこなさなければならないのだ。それは三本の腕で全く別々の作業を行うようなもので、つまり人間に出来ることとは思えなかった。

そういった小器用さだけは図抜けておるのだ、こいつは

えへへー。でも本職には全然かなわないんで、ザナさん、どうぞ

Olにぐりぐりと頭を撫でられれば即座に機嫌を直し、マリーはザナを促す。

じゃあ、マスター。いくわよ

ザナが腕を振るうと吹き荒れていた雪の一粒一粒がピタリと空中に制止し、かと思えば道を作るようにぶわりと端に退き、そのまま氷の壁の一部となった。

すっごーい!

ザナの速射性とOlの操作精度。それが合わさって初めてなしうる芸当に、マリーは素直に歓声を上げた。

さあ、遅れた分、どんどん取り戻していくわよ!

ザナはそう宣言し、宣言通りに凄まじい勢いで歩を進め始めた。といっても、不機嫌だったときの強引なものとはまるで違う。Olの操作を受け入れ、かといって全て任せるわけではなく呼吸を合わせて自身の意志で氷術を振るう。

それはただOlの負担を軽減するだけではなく、彼女の術の行使速度自体を倍加した。矢継ぎ早に繰り出される氷の術はもはやどこに術と術の切れ目があるのかわからぬほどに間断なく、吹雪を、敵を、罠を、立ちふさがるありとあらゆるものを凍りつかせ無効化していく。

まるで無人の野を行くが如き歩みであった。

ねえ、さっきから襲ってきてるのって国の人だよね?凍らせちゃっていいの?

いいのいいの。神の力の宿った霊氷よ。別に死ぬわけじゃないし、後で溶かせばいいでしょ。だいたい、全知全能の神ごときに操られて、自分の仕える女王に刃を向ける方が悪いのよ

なんかラーちゃんみたいなこと言い出したな、と思いつつ、マリーは賢明にも口を噤む。そしてそのラーメスは、と見れば、彼女は軽口を叩くでもなく黙々と歩いていた。

何だ、マリーちゃん。余の美しさに見惚れでもしたか

視線に気づき、ラーメス。

げんきー?

何なのだ、その質問はこの完璧なる余に不調な時など存在せぬ

そんな返答は、いつも通りという程付き合いが長いわけでもないが、実に彼女らしいものなのだが。マリーにはラーメスが何かを思い悩んでいるように思えた。

やはり、か

その原因の一端を知ることになったのは、翌日の夕方。

氷のダンジョンを抜けて、次に現れた石造りの迷宮を目にしたときであった。

あたしの城を抜けたと思ったら、今度はこいつの墓とはね。節操のないこと

巨大な石を積んで作られた迷宮をみやり、ザナはつまらなさそうに吐き捨てる。

墓?

どこか不穏な単語を、マリーは聞き咎めた。

そうよ。これは城でも住居でもない。サハラの王族が死後

ザナ

ザナの言葉を遮り、ラーメスは彼女を睨みつける。

何よ。この大陸に住んでる人間なら誰でも知ってることでしょ

言い返して、ザナは鼻を鳴らす。

いくぞ。ホスセリ、ザナ、イェルダーヴ、俺、ラーメス、マリーの順だ

睨み合う二人を引き剥がすように割って入り、Olはそう命じた。

石で出来たピラミッドの通路は狭く、横に並んで進むことは出来ない。Olたちは一列に並んで石の迷宮へと侵入した。

基本的な構造は変わっていないな。ここは地下の回廊の入口か。となれば、目指すべきは王の間だろうな

壁を成す白い石に触れながら、ラーメスは呟く。

王の間って?

マリーちゃんが余の手を逃れる時に、天井をぶち抜いていった部屋のことだ

ああ、あそこか、とマリーは得心する。といっても無我夢中で逃げ回っていた末に辿り着いただけなので、道案内できるわけではない。

良い。余が案内する。指示通りに進め。まずは三つ目の十字路を右だ

居城という関係上、比較的素直な構造をしていたザナの城とは違い、ラーメスのピラミッドは複雑な迷宮だ。いくつもの階段を挟んで立体的に入り組んだそれは、複雑さだけで言えばOlのダンジョンにすら勝るものだった。

その先、屍兵が出るぞ

壁が突然開き、包帯でぐるぐる巻にされた屍がくぐもったうめき声を上げつつ襲いかかってくる。ザナは咄嗟に氷術でそれを迎え撃つが、乾ききったピラミッドの中では彼女の術はほとんど効果を発揮しない。

ホスセリの放った手裏剣を喉元に受けつつも屍兵は奇妙に湾曲した刀を振りかぶると、ホスセリに向かって思い切り叩きつけた。

いくら身軽さを信条とする忍びの者と言えど、この狭い通路の中で接近されてかわすことは出来ない。仕方無しに刀で受けるが、人とは思えぬ凄まじい膂力で押し込まれ、がくりと膝をつく。