フォリオは仕方なく、サルナークも鎖で縛って道具袋の中に放り込んでおいたらしい。後々で何故殺したと言われても困るし(ユウェロイは平気でそのくらいは言う、とのこと)、無駄に殺すのも寝覚めが悪いからだ。
策はあるのか
ない
問えば、サルナークは清々しいほどにきっぱりと言い放つ。
フォリオ。ブランのスキルは、サルナークで打倒できるものなのか?
多分、無理でしょうね
フォリオは腕を組み、首を傾げて言った。
あのヒト、脳筋ではありますけどバカではないですからねえサルナークサンについて何も言わなかったってことは、多分全く脅威を感じてないってコトだと思うんですよ
彼女の言葉に、サルナークはぎりと歯噛みする。だがおそらくそれは事実だろうというのも、また飲み込んだ。
頼む、大将
サルナークは、今まで一度も下げたことのなかった頭を、Olに下げた。
三度も負けて、ようやくわかった。オレのスキルはそこまで強いわけじゃねえ
いや、そんなこともないんですけどね、とフォリオは内心で呟く。
だがオレの頭じゃあ、どうやったら勝てるのか
そこまで言いかけて、サルナークはいや、違うなと首を振り、言い直す。
オレがどうやって負けるのか、想像がつかねえ
ブランが見せたのは、ダンジョン・キューブさえ二撃で破壊するほどの威力を持つ攻撃だ。だがそれは、ラディコの持つ銀腕とは別のスキルであるという。
純粋に破壊力が高いだけのスキルであれば、鋼の盾には通用しない。負ける理由は存在しないそう考えて、サルナークはようやく気づいたのだ。
今まで敗北してきた戦い、三度ともそうやって負けてきたことに。
オレはオレは未だにこの鋼の盾を無敵だと思ってる。だが実際はこのザマだ。あんたが次の戦いも勝てないって思うんならきっとそうなんだろう。だから頼む。教えてくれ。オレはどうしたらいい?
Olは顎に手をやり、少し考えるように目を伏せる。
無敵とは言わんが、お前のスキルが強力なものであることは間違いない。問題は、運用だ
それは先程フォリオが思い浮かべたのと同じ内容だった。
運用?
ああ。お前はそのスキルを、単に攻撃を防ぐものだと思っているだろう
違うのか?
サルナークの問いに、Olは頷く。あらゆる攻撃を防ぐスキル。そんな認識でいるから、彼は道具袋の中で溺れる羽目になるのだ。
本質としては自身にかかるエネルギー全てを無効化する能力だ。ならばそれは防御のためだけでなく、攻撃にも転用できよう
よくわからんが、だがそれでこそ頼むかいがあるってもんだ。何でも言ってくれ。どんなことでもやる
神妙な表情で言うサルナークにOlは一つ頷き、傍らに立つフォリオに視線を向けた。
そういうことであれば、俺より適任のものがいる
え、あたしですか?
フォリオはキョトンとして自分を指差した。
俺はこの世界に来てまだ日が浅い。スキルとやらがどのようなものなのか、どれだけのことができるかを正確には知っておらぬ。だが、お前はそうではないだろう?
道具袋を落とし穴代わりにし、鋼の盾に対し水責めを行い、爆風を受けて加速する。どれもが正当な使い方ではなく、スキルというものを熟知していなければ出てこない発想だった。
たとえば、鋼の盾を無力化する方法をもういくつか思いつくはずだ
はあ、まあ
Olの問いに曖昧に頷くフォリオ。
オオレに魔族の教えを請えというのか!?
先程、お前はどんなことでもやると言っただろう
掴みかからん勢いで叫ぶサルナークに、Olは素気なく答える。
あの、Olサン、アタシは別に
萎縮したように翼を小さくたたむフォリオに、Olは首を横に振った。
サルナーク。お前が負け続けているのは、その無駄なプライドのせいもある。本当に上に行きたいのであれば、まずそれを捨てろ
サルナークは呻くように歯を食いしばり、憎悪の籠もった瞳でフォリオを見据える。
たの、む
お願いします(ロヴノブ)だ。サルナーク
ギリリと歯ぎしりの音が鳴り、サルナークの口の端から血が滴り落ちる。
お願いします(ロヴノブ)
そして、サルナークは頭を下げた。
ちょ、ちょっと、Olサマほんとにこいつにアタシが教えなきゃいけないんですか!?めちゃくちゃイヤなんですけど!?
悪いが相手してやってくれ。俺も同席はする。安心しろ
小声で囁くフォリオの頭を、Olは安心させるようにぽんぽんと軽く叩く。
それならまあいいですケド
唇を尖らせ視線を反らしながら、落ち着かないように翼をパタパタと動かすフォリオ。
これで勝てなかったら覚えてろよ
ひいっ!
頭を下げたまま地獄の底から響くような声で呟くサルナークに、フォリオは悲鳴を上げてOlに抱きつくのだった。
やめてくださいっ!ブラン、こんな事!
怖がる必要などないのですよ、陛下。大丈夫、気持ちよくして差し上げますから、私に身体を委ねて下さい
中層、ブランの寝室。そこでフローロは強引に、ベッドの上に寝かせられていた。ブランの手にはさほど力が籠もっているようにも思えないのに、暴れようとするフローロの身体をしっかりと押さえ、その動きを封じる。
やっこんな格好、恥ずかしい!
とてもお似合いですよ、陛下
恥辱に顔を歪めるフローロにブランはにこやかに笑って、金属でできた棒をするりと彼女の中に差し入れた。
抵抗すると、痛い思いをいたしますよ
たおやかな、しかし有無を言わせぬ口調で告げるブランに、フローロは身を固くする。
いい子ですね
そんな彼女の髪を撫でながら、ブランはそこに差し入れた棒をゆっくりと引き抜いた。
っ!んっ!
身を震わせながら、必死に声を押し殺そうとするフローロ。そんな彼女をブランは愛おしげに見つめつつ、何度も何度も金属の棒で彼女の中を蹂躙する。
ん、ふっ!あっ!
小さく狭い彼女の穴の中。そこから全てを出し切って、ブランはにこやかに言った。
はい、こちらは終わりです。反対側も掃除して差し上げますから、こちらを向いて下さい
だから耳掻きくらい自分でできますっ!
フローロはブランの膝からがばりと起き上がって、そう叫んだ。
あらまあ、陛下ったら。小さい頃はあんなにしてしてとおねだりしてきたではありませんか
昔の話でしょっもう!ブランはいっつも私の話を聞いてくれませんね!?
強引に身体をひっくり返され、ブランの柔らかな膝の上に頭を固定されて、フローロは叫んだ。
聞いておりますとも。全てはこのねえやにお任せ下さい。それとも昔のように、姫様と呼んだ方がよろしいですか?
やっぱり全然聞いてない