声というよりも息そのものが押し出され、口から漏れる。
それは、思っていたような痛みは一切伴うものではなかった。例えようもない圧迫感が腰から下を支配しているが、Olが請け負った通りそこに苦痛は感じられない。ただ息さえ詰まるような圧があるだけだった。
奥まで突き入れたOlが腰を引き、肉の槍がユウェロイの中から引き抜かれていく。すると次に感じたのは、喪失感だった。先程までみっちりと己の中を満たしていたものがなくなり、そこにポッカリと空洞の残る空虚さ。
呼吸が楽になるかと思えば全くそんなことはなく、押し出された空気は戻ってくることなくただただ失われたかのようだった。
あがぁっひ、ぎぃっ!
かと思えば再び剛直が奥まで突きこまれて、先程とは全く違う感覚をもたらした。無理やり押し広げられ圧迫されるのではなく、あるべきものがあるべき場所へと帰ってきたかのような感覚。
そして同時に、全身が痺れ貫かれるかのような快感だった。
口づけ口づけ、してっ
圧迫と快楽によって追いやられた呼気を求めて、半ばうわ言のようにユウェロイは懇願を口にする。絶え絶えに掠れた声で発した求めはしかし即座に叶えられて、Olの柔らかな唇の感触とともに新鮮な空気が肺へと満たされる。
んぅぅっ!
途端にずん、と奥を抉られて、手に入れたばかりの空気はすぐさま吐かされる。それと同時に、Olの唇もユウェロイの元から離れていった。
もっと口づけしてっ
すぐさまユウェロイは首を伸ばしながらそう請う。
空気というものがこれほど美味しいのだと、彼女は初めて知った。胸いっぱいに吸い込む新鮮な空気を貪るユウェロイの膣内に、みっちりと肉の塊が埋め込まれていく。
胸と腹とを同時に埋めるその充足感に、ユウェロイは身体を震わせた。指を入れるのとは全く違う、暴力的なまでの快感がユウェロイの全身の隅々まで満たしていく。
キスしてぇっ唇、離さないで!
男根が引かれるたびに律儀に離れていく唇に、ユウェロイはもどかしくなってOlの首に腕を回しながらそう懇願した。すると重ね合わされた唇から、呼気だけでなく舌までもが割り入ってくる。
ユウェロイは一瞬驚きに身を震わせるが、それでも肺腑を満たす空気の魅力には抗えずそれを受け入れる。
んっ、ふ、んんっ、は、ぁんっ!
程なくして、それも悪いものではないとわかった。呼気と性器とに加え、柔らかな舌が己の舌を優しく捕らえ、口内を満たしていく。それはまた別種のそして、心地よい快楽であったからだ。
んむぅっ、んんっ、ふ、ぅっ! んぅっ、んっ、ふ、ぅぅんっ!
上から下まで全てをみっちりと埋められて満たされる多幸感の中、腹の奥に何度も何度も快楽が叩き込まれていく。もはやユウェロイはほとんど考えることもできず、夢中になってその快感に身を委ねることしかできなかった。
両手両足でOlにしがみつき、自ら腰をくねらせて男を受け入れ、少しでも唇が離れればキスを懇願していることにすら気づいていない。そうして快楽を貪り、何度目かの絶頂に達するという、その瞬間。
Olは、唐突に動きを止めた。
どうして。ユウェロイは声に出さず、信じられないものを見るような瞳でOlを見つめる。
して欲しい時はどうするのだった?
して奥を、満たしてぇ!
酸欠と快楽で思考能力を失ったユウェロイは躊躇うことなく口に出す。
あ、はぁぁあぁっ!
望み通り、ずんと奥を貫かれる感覚に、弓なりに背を反らしてユウェロイは達する。
出して、出してぇっ!
そしてOlの宣言にそれまでしてきた通り、何も考える事なくそう懇願した。膣内でOlの物がさらに大きく膨れ上がり、精を吐き出すのをユウェロイは感じる。
しかしその白濁の液が自分の最奥を満たしていく感覚に、彼女もまた更に深く絶頂するのだった。
第8話セックスしないと出られない部屋を作りましょう-6
目が覚めると、ユウェロイはOlと繋がったまま、彼の胸に顔をうずめるようにして横になっていた。
起きたか。ちょうどお前から得た魔力が馴染んだところだ
ああそうか
頭に残る多幸感の残照と倦怠感にぼんやりとしながらも、ユウェロイはのろのろと身体を起こす。
Olの一物は既に小さくなってはいたが、それでも己の膣内から引き抜くと喪失感のような物が胸によぎった。
が、その直後、股間から垂れ落ちる大量の白濁を見てユウェロイは我に返る。
貴様、よくも好き勝手してくれたな!
出せと言ったのはお前だろう
そ!
確かに言った記憶があった。思い返せばあの時の自分はどうかしていたと言う他ないが、あの途方もない幸福感と満たされる充足感までをも思い出してしまい、ユウェロイの怒りは急激に萎びていく。
安心しろ。魔力の譲渡で孕むことはまずない
ちっ。まあいいだろう
舌打ちしつつ、ユウェロイは乱雑に脱ぎ捨てられた衣服を纏う。
それで、その魔力の譲渡とやらはうまく行ったんだろうな
無論だ。既に空気穴をいくつかあけてあるから、頭もすっきりしているだろう。お前が服を着終われば出入り口も開ける
壁を指差すOlの指先を見れば、確かに小さな穴がいくつも空いていた。
ということは、この壁の向こうに翼獅子はいないのか?
ああ。場所も確認している。奴は最初に出会った広間に戻っているようだ
Olが開けた小さな穴からは、向こう側を覗き見ることすらできない。しかし最初に出会う前も、Olは翼獅子の場所を言い当ててみせた。敵の場所を感知するスキルでも持っているのだろう、とユウェロイは納得する。
このまま向かっていっても二の舞だ。戦うのであれば策を練る必要がある
Olの言葉に、ユウェロイは素直に頷いた。無策で突っ込んでまた同じ目にあいでもしたら
そう、そうなったら最悪だ、とユウェロイは自分に言い聞かせるように独りごちる。
貴様の母なる壁を動かす術は、穴を開けた後も使えるか?
ああ。思ったよりもお前の持っている魔力が豊富だったからな
魔力などという、どこにあるのか何であるのかすらわからない物が多いと言われても嬉しくも何ともない、とユウェロイは思う。
この私を抱いたのだから、褒めるならばもっと別の部分を褒めるべきではないか? そんな思考を彼女はすぐさま振り払った。どうやらまだ空気が十分足りていないらしい。
ならばそれで拘束できるか?
難しいな。奴は動きが速すぎる。四方を囲もうにも逃げられるだろうし、袋小路に追い込めば俺たちまで一緒に閉じ込められかねん
Olが操作する壁の動きはそれなりに速いが、瞬く間にというわけにはいかない。せいぜい、人が走るのと同じくらいの速さだ。翼獅子のスピードならやすやすと抜け出してしまうだろう。