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俺はてっきり、お前はそれを求めて風呂に入ったのだと思ったのだ

そんなそんな。抱いてもらった上にそこまで望むなんて、図々しい真似はさすがにできませんよ

恐縮するフォリオに、やはり価値観が根本的に異なっていることを感じた。あるいは魔族というのは、人間とは貞操観念が真逆なのかもしれない。

とにかく、話だけでもしてみろ

わかりました。では、後でご案内しますところで

フォリオはちらりと自分の手の中にあるものへ目を向けた。彼女が何気なく上下させていた手のひらの中で、脈打つ肉塊はすっかり硬くそそりたっている。

七回目します?

するう!

途端、余韻と疲れから先ほどまでぐったりしていたはずのラディコが元気よく答える。

一回だけだぞ

Olは嘆息し、そう答えるのだった。

そして結局、三回した。

口と膣とに追加で一回ずつ吐精されたフォリオに案内されOlが向かったのは下層の通路。フォリオが使っていた部屋の奥にある回廊の行き止まりであった。

ここになにがあるでしょう!

聞き及んで知っているのだろう、やはり口と膣とに一回ずつ精を注ぎ込まれたラディコがなぜか自慢げにそう尋ねる。物置代わりに使われていたらしく、雑然としたものが積み上げられているが、Olの目には一目瞭然だった。

隠し扉か

なんでわかるのお!?

あっさりと言い当てるOlに、ラディコは目を丸くした。

そもそもなにもない突き当りでここだと言われれば考える余地は殆どない。だがそれ以前に、積まれている荷物には巧妙に偽装されてはいたが、奥の壁を隠す意図があった。そういった意図を読むのはダンジョンマスターとしての基礎能力だ。

フォリオが壁のスイッチを押すと、音もなく壁が開いて小さな部屋が現れた。

これを溶かすことは出来ないでしょうか

人が数人入れば埋まってしまいそうな大きさの部屋にあったのは、巨大な氷のようなものだった。岩のように角張った高さ三メートルほどの結晶で、透明ではあるが中を見通せるほどではない。そして薄っすらと、その奥に人の姿が見えた。

これは生きているのか?

わかりません

Olの問いに、フォリオは首を振った。氷の表面に触れるとひんやりと冷たく、硬くもなく、かと言って柔らかくもない、不思議な感触がある。

一体誰なのか、なぜこうなっているのか、いつからこうしているのか。何もわかりません。ただ一つわかることは──

切実な声色で、独白するようにフォリオは言う。

アタシが、どうしてもこのヒトを助けたいってことです

フォリオは首を横に振った。その理由もまた、定かではないということだろう。

アタシはこの場所を、母から聞きました。母もまた、その母アタシの祖母に聞いたんだそうです。その祖母もそのまた母にアタシたちの一族に、ずっと伝わっているんです

相当の年月が経過しているということか

一族の悲願。そう考えれば、フォリオの態度にも納得はいく。切実に解決法を探してはいるが、だからと言って自分の代で解決する問題であるとも思ってはいないのだ。

少なくとも百年以上は経っているって話です

そういえば、一年とは何だ?

ふと、Olは疑問を持った。彼の住んでいた世界で、一年が何かを疑問に思う余地はない。春が来て、夏が過ぎ、秋を経て、冬に至る。そしてまた春がくれば、それが一年だ。正確な日にちを割り出すには星を読む必要があるが、星読みの心得どころか字すら読めない農夫であろうとも、暦くらいは知っている。

だがこの石造りの世界で四季など望むべくもない。壁自体が明るくなったり暗くなったりするので朝と昼との区別、一日の始まりと終わりはあるが、夜になっても星を見ることなど出来ない。だが、人を鑑定すると年齢という項目があるのだ。つまり一年という概念もあるということに他ならない。

んっとね、ぎゅーってなって、ぽんってなって、ばーってなって、ふわーってなったら、いちねんだよ!

全く要領を得ないラディコの説明を聞いて、Olは助けを求めるようにフォリオに視線を向けた。

ええと季節というのがありまして。季節によって出てくるモンスターが変わるんですが、四種類のローテーションなんです。同じ季節に戻ると一年ですね。暦のスキルがあればもっと正確にわかるんですが

やはりスキルか、とOlは内心独白する。この世界は全てがスキルとアイテムで成り立っていて、それはモンスターを通じてもたらされる。だがまさか、季節までもがそうだとは。

まあ良い。それよりも、この氷だが

この世界が奇妙なのは今更の話だ。Olは目前の問題に目を移す。

はい。見ててください

フォリオの手のひらから巨大な炎が迸り、氷に当たった。石でできたダンジョンキューブさえ投下するほどの熱量を持つ炎だ。もしそれが本当に氷で出来ていたならば、一瞬で蒸発してしまうだろう。

この通り大炎のスキルでも、ラディの鉄腕でも全く傷つかないんですよね

だが爆炎が消え去った後、氷柱は変わらない佇まいで残っていた。

スキルで作り出したものや影響を消す解呪というスキルも持ってるんですが

フォリオの手のひらから淡い光があふれ、氷柱を照らす。そちらには一応効果が認められた。氷はほんの僅かにその表面が溶け、確かに減じていく。しかしそれもほんのわずかで、フォリオが光を照らすのをやめるとすぐに元の形状に戻ってしまう。

こんな感じで、全部溶かすのは難しそうなんです。だから、もっと強い解呪を使えればなんとかなるんじゃないかとただ、解呪の上位スキルなんて聞いたことないんですよね

伝説に聞くスキルを育てるスキルであれば解呪を強化することもできるのではないか。フォリオはそう考えたらしい。

俺自身がその上位の解呪を使えるとは思わなかったのか?

っ!使えるんですか!?

勢い込んでOlに詰め寄るフォリオ。

残念ながらそんな都合のいいものはない

ですよね

肩透かしをするような返答に、肩ごとバサリと両翼が下を向いた。

これはそもそも氷ではない。それどころか、物質ですらないな

そうなんですか!?

Olは再びそれに触れる。ひんやりとしていて冷たいが、Olの体温で溶ける様子はない。氷であるなら多少なりとも溶け、手のひらに水滴がつくはずだ。

これはおそらく高度な封印術の一種だ。中の熱すらも封印されているため冷たく感じられるが、実際に温度が低いわけではない

どういうことー?

Olの説明に理解が及ばなかったのか、ラディコは首をかしげる。

人の肌が暖かく感じられるのは、それそのものが熱を放っているからだ。人間の体温などそう差はないが、抱き合えば互いに暖かく感じるだろう?