あっ!
そして、ついに今までは届かなかった最奥へと辿り着き──
ああぁ
ユウェロイが感じたのは、絶望であった。
なんで
男でいいのならば、鉄の篭手だっていいはずだ。だが実際にそこへ届かせてみれば、まるで味気のない快楽だけがそこに存在していた。
ならば
形や大きさを制御できるという点においては、投げ槍のスキルもまた同様だ。切っ先を丸め、大きさを最大限短くし、形を変え出来上がったものは、もはや完全に槍とは呼べぬものであった。いや、肉槍というくらいだから、それもまた槍と呼ぶべきかもしれない。ユウェロイは迷いなく、それを己の中に突き入れる。
あっくっ、あぁっ
冷たい塊が、己の中を満たしていく感覚。その冷たさは不愉快ではあったが、感覚そのものはこれこそ己が求めていたものだとユウェロイは確信する。
あっ、あぁっ、Ol、Olぅっ!わたし、もうっあぁっ!中にっ!中に、下さいぃっ!いっしょに、いっしょにぃっ!
ああ、出すぞっ!
Olの、低い、どこか切羽詰まった声。男のその声に、反射的にユウェロイの身体に衝撃が走る。
あああああああぁぁぁぁぁっ!
フローロの声が高く上がり、Olの肉槍が一際深く彼女の膣内にねじ込まれた。聞こえるはずもない射精の音が、聞こえてくるかのような絶頂。全身を突っ張り身体を震わせる雌の体に、雄が容赦なく種を流し込む。
あぁぁっ!ああっ!あっ、あぁぁぁあっ!
二度、三度、四度。絶頂のただ中にあるフローロを更に追い込むようなピストンを見つめながら、それに合わせてユウェロイも絶頂に身を震わせた。
は、あぁぁはぁぁ
ぬぷり、と音を立ててOlの一物が腰から引き抜かれ、大量に注がれた白濁の液がフローロの膣口から溢れ出る。
気持ちよかったです
この上なく幸せそうな表情で、フローロはそう呟いた。
気持ちよかった。それは、ユウェロイもまた同じであった。Olの物を模したそれで奥を貫く感覚は、かつてないほどの快楽を彼女に与えた。
だと言うのに、なぜ自分は今これほど惨めな気持ちになっているのだろう。
膣内に残されているのは冷たい鉄の塊で、穢らわしくおぞましいはずの白濁の液が、なぜこれほど羨ましく感じられるのだろう。
同じ快楽を味わいながら、フローロはあんなに幸せそうなのに、なぜ自分はこんなに虚しいのだ。
次はわたくしの番ですわ
ナギアが嬉しそうに、反り立ったままの肉の塊に顔を寄せ、舌を這わせる。
あれは排泄の器官でもあるはずだ。そうでなくとも、他の女の愛液と精液とにまみれて汚れきっている。そんな物を舐めしゃぶるなど、正気とは思えない。だが、ナギアの表情もまた、幸せそうに見えた。
己の膣内から引き抜いた鉄槍をぼんやりと見つめ、ユウェロイはそれをぺろりと舐める。
鈍くまずい、鉄の味がした。
第10話ダンジョンを探索しましょう-1
ここから先が探索区だ
先頭を進むサルナークが通路に置かれた石像を剣で指し示し、不愛想にそう告げる。
Olはサルナークとフォリオ、ラディコの三人を伴い、モンスターの狩猟に探索区と呼ばれる区域を訪れていた。特異個体のような例外がない限りは、モンスターを倒してアイテムやスキルを集めることがOlに課せられた日常的な仕事だ。
これは何だ?
Olはその石像に目を留め、尋ねる。
見れば分かるだろ。探索区と居住区の境には、この像が置いてあるんだ
それはそれでどういうことなのか聞きたくはあったが、聞いても納得のいく答えは返ってこないであろう事はわかっている。代わりに、Olは別のことを尋ねた。
これは何をかたどった像なのだ、と聞いている
それはOlの腰くらいの大きさの、翼と角を持ち二本の足で立つ生きものの像だった。造形としては非常に大雑把で、かろうじて頭と体と手足の判別がつく程度でしかない。人に類するものなのか、モンスターなのかすらわからなかった。
あん?どういう意味だ?
これは立つ者と呼ばれています
怪訝そうに眉をひそめるサルナークをフォローするように、フォリオが声を上げる。
母なる壁と同様、壁界に最初から存在していると言われています。この像に似たモンスターは見つかっていませんね
彼女の説明に、Olはサルナークの反応の意味を悟った。そういえばこの世界には、物を作るという発想が極めて希薄なのだ。だからこのような像も、誰かが作ったものであるという発想がない。故に何かをかたどるという言葉の意味も分からないのだ。
立つ者境界に立っているという意味か?
確かにその石像は、二本の足で立ってはいる。しかし像などというものは基本的に立っているものなのではないか、とOlは訝しんだ。
名前に大した意味なんかないだろう。別にモンスター共がこれを超えられないってわけでもない
退屈そうにサルナークが吐き捨てる。
確かに結界の類はないようだ。では探索区と居住区とは違いとはなんだ?
出てくるモンスターの質と出方が違うんだ
モンスター自体は、居住区にも出現する。かつて最下層でフローロが倒し日々の糧としていた角兎などはその典型だ。
居住区に出てくるモンスターははっきり言って雑魚だ。それに出てくる場所も決まってる。だがこの像を超えた場所に出てくるモンスターは一段凶暴だし、どこから出てくるかも予測できない
似たような像は更にこの奥にもあります。そして、像を一つ超える度に出てくるモンスターの脅威度は上がります。奥に行けば行くほど敵は強くなる、ということですね
サルナークの説明にフォリオが補足する。すると、サルナークは軽く舌打ちした。魔族嫌いは相変わらずらしい。
つよいモンスターをたおすと、つよいスキルがもらえるんだよ!
端的なラディコの言葉に頷きつつも、奇妙なことだとOlは思う。奥に行けば行くほど敵が強くなり、その分実入りがよくなるというのはOlのダンジョンでも同じだった。と言ってもそれは、侵入者である冒険者側から見た時の話だ。
Olたちダンジョンに住む者から見れば、自分たちの住居に近い場所ほど強力な魔物が守っているという事になる。魔物とて、戦えば傷を負うし疲弊もする。どれほど強大な魔物であろうと数の暴力の前にはやがて屈してしまう。だから多数の弱い魔物を敵の近くに配し、少数の強い魔物で中枢を守る事は理にかなっている。
だがこの世界の者たちは皆ダンジョンに暮らす民でありながら、同時にそのダンジョンを探索する者でもあるのだ。彼らはダンジョンの中心に近い場所に住んでいるから、そこから離れるほどに敵は強くなるという事になる。
だが、それは何故なのか?法則性があるからにはそこには理由があるはずだ、とOlは考えていた。