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ええと、つまり攻撃力10の武器を使っても50の武器を使っても、鉄の腕を使ったら100になるってことですか?

フォリオが少し考え、尋ねる。攻撃の威力を数字で表すという発想に奇妙なものを感じつつも、Olは首を振る。

いや、そのたとえならば10の武器を使えば110に、50の武器なら150になろう

じゃあ50の武器を使った方がいいじゃねえか

すかさず、サルナークが至極真っ当な事をいう。

攻撃速度が同じであればな

だがOlの答えに、すぐさま口をつぐんだ。

50の大鎚を一度振るう間に、10のナイフであれば三度振るえる。そのままならば50と30だが、鉄の腕があれば150と330だ

Olの袖口で、翼獅子アレオスがグルルと唸る。まるでそれに応えるように、巨大な猿のようなモンスターが通路の先に姿を現した。こちらを認めるや否や襲い掛かってくる大猿たちに指先を向け、Olは命じる。

ラディコ。振れ

理屈はわからずとも、本能的に自分の力の使い方は理解しているのだろう。ラディコはジョウロをぐっと構えると、大猿に向けてそれを振った。口の先から無数の水滴が飛び出し、そしてそれは爪よりも細かな無数の矢となって大猿たちを貫く。

これは、0を一振りで100回飛ばす道具だ

一粒一粒の水滴は、せいぜい細いナイフを突き立てる程度のもの。しかしそれを無数に浴びて、三頭の大猿はあっという間に絶命した。

うわっ、エグ

Olくんありがとう!これ、すっごく気に入っちゃったあ!

大猿は中層でも浅い区域に出るとはいえ、その中ではかなりの強敵だ。大炎の直撃でも絶命しない厄介な敵があっさりと即死するのを見て眉をひそめるフォリオとは裏腹に、ラディコはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。

扱いにはくれぐれもくれぐれも!気をつけろ!

残った微量の水滴が跳ねるのを避けながら、Olはラディコに釘を刺した。アレオスのローブであればその程度の威力は十分防げるが、味方から不意を打たれるのはぞっとしない。

だがこの威力は大したもんだな。もう二、三段奥に行ってもいいんじゃないか?

サルナークの言葉にまたこのヒトは油断してとフォリオは少し思いはするものの、彼女自身も戦力としては問題ないと判断したため、口をつぐむ。

いや。しばらくはこの辺りで稼ぐ

だがOlは首を振り、その提案を却下した。

新しい戦法を試しているから慎重になるのはわかりますケド、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますよ?元々、アタシとラディコの二人でもこの一つ奥の区画で狩ってますし

流石にこの区画は浅すぎるのではないか、とフォリオも口添えをする。ラディコの鉄槌は道具袋に入れておけばいいし、もしこの戦い方が通用しなければ元に戻せばいいだけだ。

Olくん、ボクももっと強いモンスターと戦ってみたい!

気持ちはわかるが、もう少し待て

ラディコまでが進行を提案するも、Olは頑なに方針を変えず。四人はその後も浅い区画で戦闘を繰り返す。といってもほぼ出合い頭にラディコが殲滅するだけの繰り返しだ。

たまに背後からモンスターが出たときはOlが対応し、水を補給するだけのフォリオと何もすることのないサルナークは暇そうにしていた。

そういや大将。探索をする上で、最も厄介な敵がなにか知ってるか?

結局大した収穫もないまま居住区に向かう道を指示するOlに、ふとサルナークはそんな事を問いかけた。

アンタがその服にしちまった特異個体や、毒を持ったモンスター、空を飛ぶやつ、仲間を呼ぶやつ、色々いるが中でも一番厄介な相手と言えば

他の探索者であろう

即答するOlに、サルナークは舌打ちする。

何だよ、羽女にでも聞いてたか?

言ってませんよ

それはOlのダンジョンにおいても、同じことだった。Olはダンジョンを運営する側だったから実際に目にしたことはないが、冒険者同士の争い自体は冒険者ギルドを運営していたナジャやノームから度々頭痛の種として聞いていたものだ。

探索をしている者は、その区画にいるモンスターを倒して進む。それはつまり、どのモンスターよりも強いということだ

強さは単純に推し量れるものではないが、様々な種類のモンスターを倒せるということは、対応力が高いということでもある。

ま、そういうこった。モンスターと違って探索者は何をしてくるかわからん。それに一番厄介なのは、出会った時点では敵か味方かすらわからんということだな

出会った時点では友好的なふりをして、油断したところで襲いかかってくるような者もいます。気をつけてくださいね

懐かしい。Olは思わずそう感じる。

そう言えばOlの魔窟を探索していた冒険者たちの間では、冒険者同士で出会った時の方針を決める習慣があった。

ひとまず攻撃されない限りは友好的に接するのが善。相手次第で対応を変えるのが中立。

敵か味方かなど、簡単に判別する方法があるぞ

嘘を見破るスキルを持ってるんですか?

そして──

簡単なことだ。こちらから先に襲えば、全部敵であろうが

Olは、邪悪なる魔術師なのであった。

第10話ダンジョンを探索しましょう-2

探索区に入ったばかりの通路を三人の男女が歩いていた。

金の髪を側頭部で二つ結びにした少女と、黒い髪をポニーテールにした少女。まだあどけない二人の顔立ちは、いかにも勝ち気そうな金髪と気弱そうな黒髪という違いはあるものの、基本的な造形自体はよく似ていた。

そしてその後ろを歩く、大柄な牙族の男。がっしりとした体躯に濃い焦げ茶の狼のような耳と尾。厳しい顔つきに一文字に引き結んだ口の端からは鋭い牙が覗いている。大斧を背に担いだ、いかにも屈強そうな戦士だ。

テール! 早くしなさいよ、すっとろいわね!

ルヴェお嬢様、あまり先にいかれると危険です

先頭を行く金髪の少女が後ろを振り返り、牙族の男に文句をつける。テールと呼ばれた男は自分の腰程度までしか背丈のない少女に、丁寧な口調でそう答えた。

あの、お姉様、ごめんなさい。わたしが脚遅いから

あんたはいいのよ可愛いクゥシェ。どうせこのウスノロに合わせてあげてるんでしょ?本当に優しいんだから

黒髪の少女が眉をハの字に下げて謝ると、ルヴェと呼ばれた少女はテールに対するものとは打って変わった態度でそう答える。

お嬢様!

その時、ルヴェの背後からモンスターが現れ、テールは慌てて彼女へと駆け寄る。

なーに慌ててんのよ

だが彼がルヴェのもとへ辿り着く前に、氷の壁がモンスターたちの動きを止める。

あんたなんかよりよっぽど優秀なあたしの可愛い妹、クゥシェがちゃーんと守ってくれてるんだから。それに