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だが、お前には俺がいる。俺ならば、領主として本当に必要な事を教えてやれる

本当ですか?

ユウェロイは喜びに目を見開いて、Olを見つめた。自分のやり方が間違っていたことは自覚したが、だからと言って具体的にどうしたらいいのかというと窮してしまう。それを教えて貰えるのならば願ってもないことだった。

ああ。夜ごとでもな

毎日ですと、公務に差し障ってしまいます

喉が枯れそうなほどに叫んだ事を思い出し、ユウェロイは控えめにそう口にする。今後も可愛がってもらえるのは嬉しいが、とても身体が持ちそうもない。

今も腰砕けになり起き上がることも億劫だというのに、Olにはまだまだ余裕がありそうだった。彼が何人もの相手と関係を持っているのも頷けるというものだ。

だが、そうするには一つ必要なことがある

からかうような口ぶりから一転し、改まった口調で告げるOlにユウェロイは息をのむ。その先に続く言葉を予測できたからだ。

ブランを討つ

そしてその予測は当たった。

安心しろ。討つと言っても殺してしまうわけではない

ブランがユウェロイに対して吹き込んだ教えは、確かに間違っていた。しかし彼女を慕い尊敬する気持ち自体がなくなってしまったわけではない。親を亡くしたユウェロイを守ってくれたのは紛れもなくブランなのだから。

それにおそらく奴自身もそれを望んでいるだろうからな

Olの不思議な物言いに、ユウェロイは内心首を傾げる。確かにブランは屈するくらいなら死ぬ、というようなタイプではない。だがそれは殆どの者がそうなのではなかろうか。

いや、少し前の自分ならばそのくらいのことは言ったかもしれない、とユウェロイは自嘲する。実際には命を絶つ度胸などないくせに、壁族の矜持に縋って生きていたかつての自分は。

私に何かできることはありますか?

この日のために──この言葉の為に、Olはユウェロイに快楽の種を植え付けた後、わざわざ殴られてまで彼女がOlを認めつつあることをブランから隠したのだ。

お前にしかできないことがある

ブラン様!もう我慢なりません。あのOlという男を即刻処刑してください!

その日、自室で鍛錬に励んでいたブランは、ノックもせずに勢い込んで入ってきたユウェロイに目を丸くした。彼女がブランの前でこれほどまでに怒りをあらわにするのは非常に珍しいことだったからだ。

一体どうしたのですか?

どうもこうもありません!あの男ときたら昼間から何人もの女を侍らせ色事にふけり、ロクに探索もしない始末!あのような男が我が領にいることが我慢できません!

烈火のごとき怒りを見せるユウェロイに、少し潔癖に育てすぎたかしらとブランは思う。彼女も一応Olの動向は監視してはいるが、処刑するほどのものではないと認識していた。むしろ

ですが彼は結果として十分な上納を集めていますし、ハルトヴァンを押さえ、レイユとも同盟を結んでいるでしょう。確かに少々独断が過ぎますが、処刑というのはあまりにもそれに、姫様がお許しにならないでしょう

ブランが庇護する少女。何よりも大切な存在。彼女を思うと、ブランの心中はいつもかき乱される。フローロを悲しませることなどあっては、ならない事だ。

それがブラン様を討つ為の準備であるとしても、ですか?

ええ。構いません

その可能性は考えていた。むしろあの男であればそれを当然画策している事だろう。だが何の問題もない。

私は負けませんから

刃向かって来たら正面から潰してしまえばいいだけの話だ。仮に前回のような手段を取ってきたとしてもフローロの手前殺してしまう事ができないのは向こうも同じことだ。

Olが快楽を用いて部下を篭絡しているのは知っている。だが、その手はブランには絶対に効かない。それは自信でも確信でもなく、ただの事実であった。

ではいっそのこと、こちらから仕掛けてしまうのはどうでしょう

すると、ユウェロイはそんなことを言い出した。

私の調べによると、Olは約束を破ることができないようなのです。奴に条件を付けて戦い、ブラン様が勝てば絶対に逆らう事がないよう約束させればどうでしょうか

しかし、そんな話に乗ってくるでしょうか?

そもそも戦いを受ける理由がOlにあまりにも乏しい、とブランは思う。

奴は女好きですから、適当な魔族から見目のいいものを選んでその身体を対価とでもすればいくらでも乗ってくるでしょう。ブラン様が真っ向から負ける事はないでしょうから、何なら私の身を賭けても構いません

流石にユウェロイの台詞は短慮に過ぎる。が、一理はあった。

ならば、私の身を賭けても構いませんね

なっ!?そ、それは駄目です!

ブランに勝てば彼の得意な快楽による洗脳に持ち込める。そうチラつかせれば乗ってくる可能性は大いにあった。

なぜですか?私が真っ向勝負で負けるとでも?

それはそうでは、ありませんが

Ol。最下層からフローロを掬い上げた、正体不明の異邦人。あるいは彼ならばと抱きそうになる期待を、ブランはすぐに打ち消す。

そんなことをしても無駄とは知りつつも。

第14話孤独な少女を救いましょう-3

この日を待ちわびたぞ、ブラン

そうですか

準備万端、とでも言いたげな表情のOlに、ブランは何の感情も込めずにそう答える。ユウェロイから例の条件を伝えれば、彼はあっけないほどに素直にそれに飛びついた。

条件を確認しよう。俺とお前とで勝負をし、お前が勝てば俺は謀反を企てたりせず、無条件にお前に従う。俺が勝てば、お前の身体を貰う。それでいいか?

ブランは首を横に振る。それは約束というにはあまりにも穴だらけだったからだ。

まず、勝負というのは戦闘。どちらかが敗北を認めるか死亡した時点で決着をつけます。私が勝てばそうですね。あなたには私が許可した事以外の一切の行動を禁じます。最低限の生命維持に必要な事は無条件で許可してあげてもいいですが。あなたが勝った場合には、一晩のセックスに応じましょう。しかしそれ以上の事は許可しません

お前は魔術師の知り合いでもいるのか?

意外そうに眉を上げ、Olは問う。

魔術師というのが何かはわかりませんが、あなたのように契約のスキルを持っているものは上級壁族には珍しくありませんので

特に王族に仕えていたブランにとって、言葉尻一つを捉えて陥れようとする壁族などというものは日常茶飯事であった。当然、その辺りの訓練はしっかりと積んでいる。

よかろう。ただしその条件、別に戦うのが俺だとも、一対一だとも規定しておらんな

構いませんよ。何人連れてこようと同じことです