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オーダーメイドの武具なんかは作ってはくれないのか?

Olの問いに、キースはおやと眉を上げた。

今んトコ、そういうのはやってないな。修理だけでも手が追いついてないんだ。テオ、あんた魔術師みたいだが、剣も使うのかい?

いや、そういうわけではない

心なしか表情を明るくしたOlに、リルは笑いを堪えた。彼はこの街を自分の迷宮と比べているのだ。Olの迷宮で働くドヴェルグたちは、オーダーメイドで武具を作ってくれる。

ふうん? まあいいや。反対側の通りは、魔術屋に教会だ。魔術が入り用な時は魔術屋に、怪我人、死人は教会に

蘇生魔術を使えるものがいるのか

Olは驚いて言った。死者の蘇生は不可能ではない。が、非常に高度な魔術だ。

あー、俺も魔術使えるわけじゃないから詳しくないんだけどよ、何でもここは魔力がすげー濃厚だから大きな魔術が使いやすいらしいぜ。それなりの僧侶が数人掛かりで儀式を行えば、心臓を一突きにされたくらいの死者なら蘇らせることもできるって話だ。もっとぐちゃぐちゃになってりゃ勿論無理だし、べらぼうに高い。その上、失敗しても金は返さないとくらぁ

なるほど、とOlは納得する。どうやら魔力が迷宮の外に多少漏れ出ているようだ。

魔術屋って何?

リルには魔術を売る、と言う概念がいまいち良くわからない。

ん、自分が魔術師だから使ったこと無いのか?剣に祝福の呪いをかけたり、簡単な魔術が篭った呪具を売ったりまあ、俺みたいに学のない冒険者がお世話になるところだ

キースは大通りの奥へと歩を進め、その先の大きな建物を指差した。

そんであれが、ノーム百貨店。この街の元締めさ

第12話魔窟の住人と触れ合いましょう-2

元締め?

百貨店?

Olとリルはそれぞれに反復した。キースはしたりといった顔で頷く。

元々、ここにはあの店だけがあったんだ。それが冒険者を相手にするうちに段々規模が大きくなって、別の店が出来て、やがて街になった。ま、俺もその様子を見てたわけじゃないから受け売りだがね

ノーム百貨店は、この街の中で最も小さな建物だった。二階建てで、入り口には激安回復薬ありマスノーム百貨店切り裂きの剣入荷!などと広告が乱れ飛んでいる。とても、元締めと言われるような人間が住んでいるようには見えなかった。

迷宮で倒した怪物共の牙だの爪だの毛皮だのは、あの百貨店に持っていくと金に換えてくれるんだ。何でも、魔法薬や武具なんかの材料になるんだとさ。その他にも、迷宮内で手に入るものは大体あそこで引き取ってくれる。しかも適正な価格で、即金だ。お陰で俺達は街に戻ったりせず、ここで暮らしていけるってわけさ

ふむ、と興味深げにOlは唸った。龍脈の魔力は迷宮中を流れ、満ち満ちている。自然、その中の空気を吸った生き物は外の生き物よりも濃い魔力を得る。そして、その濃い魔力を持つ生き物をより強い生き物が食べ、その死骸を虫やネズミが食べ、それをまた弱い生き物が食べと、魔力は蓄積していく。

そんな魔力が体中に満ちている魔物であれば、さぞ高品質な素材になるだろう。冒険者を引き入れるためにわざわざ財宝を用意したOlだったが、その必要が半ばなくなっていることに初めて気付き驚いた。

ちなみに買い取りは武器屋や防具屋じゃやってくれない。この街で迷宮内の物を売りたきゃここに売るしかない。日用品や雑貨なんかもここで買える

どうやら、この小さな店の主はこの街を経済的に取り仕切っているらしい。どうにも主体性の無い街ではあるが、それでも上手く回るのは冒険者の支援に特化しているからだろう。

では、その元締めとやらに一言挨拶してくるか

おう。じゃーな、俺はいつも酒場で飲んでるから、迷宮に潜るんなら声かけてくれよ。いい仲間を紹介するぜ

ひらひらと手を振って酒場に向かうキースを見送って、Ol達は百貨店の中に足を踏み入れた。

店内は思っていた以上に狭く、他に客はいない。

いらっしゃいませー!

所狭しと並べられた商品の奥、カウンターで笑顔を輝かせているのは赤毛を側頭部で一つに纏めた、背の低い少女だった。Shalと同じくらいの身長と幼い顔立ちに似合わぬ大きな胸をたゆんと揺らし、彼女はOlに愛想良く笑いかける。

元締めと聞いて、何と無く恰幅のいい豪商を思い浮かべていたOlは肩透かしを食らった。

店主はいるか?

傷薬に血止め、毒消しにロープ、ランタン油も切れたらどうぞ!剣、槍、鎧も扱います、何でも売ってるノーム百貨店へようこそ!あたしが店主のノーラ・ムルクディス。どうぞノームとお呼びください

ノームと名乗った少女は、嫌な顔一つせず流れるような口調で語った。

お前が、この街を作り上げたと言う元締めなのか?

あたしが作ったと言うと、語弊がありますね。あたしはここで商売をしていただけ。街を作ったのは、街のみんなの努力です

愛想良くノームは語る。

こんなところでよく店を出そうと思ったな

ここは魔王Ol様のお膝元ですからね。何の心配もしちゃいませんでしたよ

ノームは胸を張って自信満々に答えた。

冒険者さん達が魔王退治を夢見て迷宮に潜り、財宝や素材を持ち帰る。持ち帰った素材で、商品を作る。作った商品を、冒険者さんが財宝で買う。そしたらこっちは、商品を作る手間だけで財宝を手に入れられるって寸法です

なるほど。しかし、魔王が倒されたらどうする気だ?

その時は、大人しく店を畳んで他に行きますよ。でも、そんなことにはならないでしょう、魔王様?

意地悪く聞くOlに、にっこり笑ってノームは答えた。

な、何いってんの!?

おろかもの、そんな反応ではそうだと言っているようなものであろうが

わかりやすく慌てるリルに、Olは嘆息した。

まあ良い。別段、隠す気もない。それで、俺が何を言いたいかわかるか、商人よ?

Olが尋ねると、ノームは人好きのする笑みを浮かべてはいと答えた。

あたしがここで商売すれば、Ol様の邪魔になる。冒険者を助けてやるんですからね。それをOl様が黙って見逃す意味はない。だったら、黙って見逃す意味を作らなきゃあいけませんよね

じゃらりと音を立てて、ノームは金貨のつまった袋を取り出した。

売り上げの一割です。どうぞお納めください

お前の店が繁盛するほど、こちらの懐も暖まる、か。まあ当然の話だな

Olはそれを受け取り、それで?と促した。彼女の瞳に、ほんの一瞬動揺が走るのを彼は見逃さない。が、売り上げの一割で同意するほど彼は生易しくもなかった。

Ol様は美女がお好きとか

ノームはカウンターの上に身を乗せると、スカートの両端を摘んで持ち上げた。