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真剣な表情で言うFaroに、一同頷く。

火口から火をつけた松明を掲げ、一行は探索を開始した。ナジャ、リル、Faroの三人が前衛を務め、Ol、ウィキア、Shalが後衛からそれをサポートする形だ。

Faroが松明を掲げて蜘蛛の巣を焼き払い、ウィキアが腰にランタンを吊り下げる。Olは杖の先に魔術の光を灯し、明かりとした。不意の事態に備えて灯りを複数確保するのは、冒険の基本中の基本なのだと言う。

この松明はいざとなれば投げ捨ててもしばらくは消えないし、火に弱い敵に対しては武器にもなる。だから、このパーティじゃ前衛で片手の空くあたしが持つのが一番なんだ

Faroの講釈を聞きながら進んでいくと、ギイギイと耳障りな声を上げてゴブリンの一団に遭遇した。

即座にナジャが抜刀して切り込み、それをフォローするようFaroもゴブリンの背後に回って短刀を突き刺す。

あ、ちょっとまって

最後の一匹を殺そうとした所でリルが口に指をあて、ちゅっとキスを投げる。すると、ゴブリンの瞳がどんよりと濁り、ふらふらとリルの元へと歩いていく。

これに松明もたせましょ

おー、便利だね

Faroは感心し、ゴブリンに松明を手渡した。

第一階層に住む妖魔たちは、それほど強くない。巨大蜘蛛や巨大蝙蝠、野犬などを切り伏せながら、松明を持つ役はオーク、コボルト、オーガと強化されていった。

暇ですねー

にこにこしながら、Olの左手でShalが呟く。ナジャの剣の冴えもさることながら、予想以上にFaroが強い。素早さだけで言うなら、ナジャはおろかアランも越えているだろう。力はけして強くないが、彼女は敵の隙を誘い、集団をかき回す術を熟知していた。

まあ、それも第一階層の間だけ。私達は魔力を温存するべき

Olの右手で、ウィキアが冷静に言った。

っと、折角だしちょっと寄ってくか。ここが、先生の部屋だよ

途中、粗末な木製扉の前でFaroが足を止めた。扉には、恐らく冒険者がつけたものなのだろう。先生の部屋と書かれた鉄のプレートがかかっていた。

先生?

Olが思わずリルに視線を送ると、彼女はふるふると首を横に振る。彼女も知らない存在らしい。

そう。この迷宮に潜る冒険者なら、大体皆お世話になる相手さ。テオ、見たトコあんた、魔術は凄いけど戦闘経験あんまりないみたいだから、ちょっと先生に鍛えてもらうといいよ

そういい、Faroは扉を開けた。するとそこには、半透明の中年男が空中にふわふわと浮いていた。要するに、死んだ男が迷宮の瘴気をまとって亡霊化したものらしい。その未練が強ければ強いほど強力な亡霊になり、迷宮に瘴気がある限り何度でも蘇る。

それが、戦闘訓練に手ごろな強さで、かつ何らかの理由でこの場所に縛られているのだろう。それが先生と呼ばれ、訓練相手にされているのだ。

あっ

リルがその亡霊を見て、妙な声を上げた。

ゴアアアアアアア!

その途端、亡霊は雄叫びを上げてリルに襲い掛かる。その両眼は血の涙を流しているかのように紅く輝き、完全に正気を失っている。

うわっ、何!? どうしたの、先生!?

Faroが驚きながらも、短刀を振るった。亡霊は生きている物とは異なる法則に従って存在している。物理的な攻撃は殆ど通用しないが、意思を込めた攻撃であれば散らす事が出来た。

テオ、亡霊には火も氷も効かない。魔術は基本的に役に立たない。けど、一つだけ有効なものがある

亡霊の攻撃を避けるリルを冷静に見つめながら、ウィキアが言う。

なるほど。こうか

Olは印を組み、魔術の一節を唱えた。魔力で出来た鎖が四方から伸び、亡霊を捕える。ただの鎖ではない。生きているものは触れることも出来ないが、この世ならざる物を繋ぎとめ、こちらの世界に実体化させる鎖だ。

鎖に囚われ動きが止まった瞬間、ナジャが亡霊を真っ二つに両断した。

ギアアアアアアアア!!!

亡霊は断末魔の叫びを上げながら、虚空に消えていった。

ふー、びっくりした。先生、普段はもっと紳士的に、まるで冒険者を鍛えるように戦ってくれるんだけど亡霊にも機嫌があるのかな

汗を拭い、Faroがそう言った。

どうした

何か言いたげな目で見ているリルに、Olは問い掛ける。

今の幽霊、ゲオルグだ

ゲオルグ? 知り合いか?

小声で答えるリルの挙げた名前に覚えがなく、Olは首をかしげた。

知り合いって言うかほら、最初の村の村長だよ

ああ

そういえばあんな顔をしていた気もする、とOlは思い出した。リビングデッドからスケルトンに加工されてユニスに破壊されたはずだが、亡霊となって復活するとは中々見上げた根性だ。

そういえばここはリルがスケルトン作成作業に使っていた辺りになるのか、とOlは改めて辺りを見回した。あの頃はまだ階層も一つしかなく、リルと二人きりのダンジョンだった。思えば、この迷宮も大きくなった物だ。

そんな風に感慨深げに辺りを見ていると、同じような顔をしているリルと視線があった。クスリと微笑むリルに、思わずOlも僅かに頬を緩める。その腕を、ぐいとウィキアが引っ張った。

さあ、ぐずぐずしているとまた亡霊が復活します。さっさと先に行きましょう

逆の腕を、Shalが抱きしめるように取る。

そうですね、まだまだ先は長いんですから

さあFaro、奥へと案内してくれ。リラズ、ぼうっとしてないで前を向いてくれ

リルの腕を引き、ナジャが促す。

なんだか妙な一行だ、と思いつつも、Faroは頷き、探索を再開した。

第13話魔王の迷宮を攻略しましょう-2

さて、いよいよここで第一階層はお終いだ。今から扉を開けるけど、絶対に中に入っちゃ駄目だからね。いい?

地下4階。大した弊害もなくスムーズに探索を続けていったOl一行は、しっかりとした作りの扉の前についていた。コボルト達によって日々勝手に拡張され、今では第一、第二階層の構造はOl自身全く把握できてはいないが、ここに配置されている魔物だけはわかる。Olは重々しく頷いた。

それを確認し、Faroは扉を開ける。扉の中は何の変哲もない、広い部屋だった。中には剣や鎧が転がっている。

魔物、いないように見えるでしょ?ところが、実はこれ、部屋一杯にスライムが満ちてるのさ

Faroが開いた扉に向かって短刀を振るうと、ぐじゅりと音を立ててスライムの一部が転がり落ちた。無色透明のそのスライムは、じわじわと地面を這いずって扉へと向かい、やがてもとのスライムと一体化する。

ゼラチナス・キューブ。透明な立方体のスライムだ。形があるからこうやって剣でも切れることは切れるんだけど、すぐ元に戻っちゃう。向こうに扉が見えるだろ?