森にいた白いの、とは白アールヴの事かもしれない。ハルピュイアは東西南北と言う概念を持っていないから細かい場所は聞けないが、探してみればエレン達の敵が見つかるかもしれない。ハルピュイアの行動範囲を思い浮かべながら、Olは心のメモに書きとめておく。
しかし、光る水とはなんだろうか。翼でハルピュイアが指したのは、ダンジョンの奥だった。Olが知らない何かがあるなら、調査しなければならない。
褒美だ。受け止めろ
あーっ! あぁーっ!
Olがハルピュイアの中に精を放つと、彼女は翼をばさばさと動かしながらそれを享受した。ハルピュイアには恥じも外聞もない。口からだらしなく涎をたらしながら舌を突き出し、快楽を貪る。
快感に正体を失った彼女を持ち上げて引き抜くと、すぐさま残りの二匹がOlの股間に群がった。
歯は立てるなよ
あーぃ
はーぃ
Olの一物に付着した精液を懸命に舐め取りながら、ハルピュイア達は元気よく返事をする。魔力を多量に含むOlの精は、彼女達にとっては上下どちらの口で受けても甘露の様な物だ。
技巧も何もあったものではなく、ただ飴を舐めるように舌を這わせるだけなので大して気持ちいいわけではなかったが、愛くるしい顔を寄せ合いペニスを舐め回すその姿は精神的にOlを満足させた。
その豊かな乳房の感触を両手で楽しみつつ、そろそろ精液も舐め尽され、どちらに入れてやろうかとOlが思案していると、右手のハルピュイアがOlの一物にがぶりと噛みついた。
まずいー
そして、歯に伝わってくる木の感触に顔をしかめる。
歯を立てるなと言っただろうがッ!
別に痛みがあるわけではないが、視覚的に気持ちのいいものではない。思わず股間の一物を萎えさせながら、Olは怒鳴った。
三匹のハルピュイアに支えられ、Olは空中から地面に降り立った。
なっ、何やってたのあんた!?
Faroが顔を真っ赤にして叫ぶ。Olが何をしてきたのかは、三匹のハルピュイアの股間から流れ出る白い液体で丸わかりだ。ハルピュイアには服を着るという習慣はないから、隠しようもない。
やっぱり
ウィキアが眉をひそめてじっとOlを睨む。
情報を得てきた。この先に、なにやら光る水とやらがあるらしい
Olは彼女達の反応を気にした風もなく言った。
それと、土産だ
そう言ってぽんと大きな宝石をFaroに渡す。
えっ、何これ!? 瑪瑙? こんなに大きな?
ハルピュイアが巣に溜め込んでいた物だ。礼として貰った。待たせた詫びだ、受け取ってくれ
空を飛ぶ魔獣の大半がそうであるように、ハルピュイアも光り物に目がない。宝石から金貨、ただの石まで、キラキラする物であればなんでも巣に持ち寄っては溜め込む習性があった。
Olはその中から大振りの瑪瑙を選んで、代わりに銀貨を数枚くれてやった。ハルピュイア達は数が増えたと大喜びし、Olに瑪瑙を渡した。
これ、金貨10枚くらいにはなるんじゃないの?ホントに貰っていいの?
ああ。俺にとっては大した価値もない
あのスケコマシ
と言うかあのハーフリング、チョロすぎないか
いいなあ、あたしもお土産に精液欲しい
狙いはわかるけどムカつくなーあの爺
宝石を貰ってぽうっとなるFaroを陰から見て、こそこそと囁きあう女たち。
で、光る水とやらに心当たりはあるか?
Olが改めて問い直すと、Faroははっと我に返り、鞄に宝石をしまいながら答える。
あ、うん。多分、回復の泉じゃないかな
回復の泉は、ハルピュイア達の巣から数分の距離にあった。細い通路の突き当たりに小さな部屋が出来ており、その片隅に青く輝く水が湧き出している。
これが回復の泉か
Olは泉の水を手にとって確かめた。水自体はどうやら、地下水が土から染み出した物が溜まっているだけの様だ。しかし、その中に在り得ないほどの魔力を含んでいる。
飲めば身体が楽になるし、しばらく身体を浸しておけば傷も魔力もすぐに回復する不思議な泉だよ。まあ、しばらくすると枯れてなくなっちゃうんだけど、迷宮のあちこちにたまに沸いてるんだ
水をすくって飲みながら、Faroはそう言った。
ここ、魔力の吹き溜まりになってる
やはりそうか
魔力の瞳で魔力の流れを見ながら言うウィキアに、Olは頷いた。Olの迷宮は本来、龍脈の魔力を蜘蛛の巣の様に絡めとり、通路を通じて澱みなくダンジョンコアに運ぶように設計されている。
しかし、第一、第二階層はコボルトやダンジョンリーチが無秩序に拡張するせいで、魔力の流れに澱みが生まれているのだ。そこにたまたま地下水脈が流れていると、水に魔力が溶け込み、通常の何百倍もの魔力濃度を持った泉が生まれる。
これって放置してるとちょっとまずくない?
小声でリルがOlに尋ねる。特定の場所に沸いているわけではないらしいからまだマシだが、厄介な事にはかわりない。と言っても、コボルトやダンジョンリーチの動きを完全に抑制するのは無理だし、地下水をせき止めるのはもっと無理だ。
でも、テオはあんまり飲まないほうがいいかも
悩むOlに、Faroはそう声をかけた。
経験の低い魔術師に特に多いんだけど魔力の配分を測り損ねるんだよ。ここにくるまでに結構魔力使ったでしょ? ここで全回復して進んで、魔力が半分になったところで帰り道につくと、帰りは魔力が足らなくなる。その頃にはもう泉の水は枯れてるしね
なるほどこの泉は良く見つかるのか?
Olの問いに、Faroは首を横に振った。
滅多にないよ。あったらラッキーって思うくらいで、宛てにするもんじゃない。後、結構危険だからあんまり長居も出来ないしね
危険ああ、なるほどな
Olは立ち上がり、泉から離れる。泉を利用するのは何も人間だけではない。むしろ、迷宮に定住する魔物達こそ積極的に使っているはずだ。
それならば、無理に対処する事もないだろう、とOlは判断した。
では、先に進むか
こくりと頷き、Faroは考える。彼女の知る限り、冒険者が踏破したのはこの辺りまでが限度だ。しかし、魔物の言葉を自在に操るテオの交渉術と、アラン遊撃隊の面々の実力、活力を補給する回復の泉に遭遇する幸運。
これだけの条件が決まっていれば、もしかしたら前人未到の領域にたどり着くことが出来るかもしれない。彼女も冒険者の端くれだ、未知の領域には恐れと共に憧れにも似た強い興味がある。
行く先が断崖である事に気付かぬまま、小さな盗賊は目の前の道に胸を膨らませた。
第13話魔王の迷宮を攻略しましょう-4
いよいよ、ここを抜ければ第三階層ね
巨大な両開きの扉を前に、Faroは興奮を隠せないでいた。
この先に行ったものはいない。少なくとも、あたしの知る限りじゃ初めてだ