克子さんは、うっすら涙を浮かべていた
あたしみたいな女で、よろしければっ
こうして、克子さんはオレのセックスの先生になった
それじゃあさっ克っつんに習ったセックスでさあたしのことも気持ち良くしてねっ
ニヒヒッと笑う、寧さん
克っつんが、ヨッちゃんにセックスを教えてあげて、そのセックスをヨッちゃんがあたしにしてくれればいいのっそしたら、あたしはさ
天使が微笑む
ヨッちゃんのこと、幸せにしてあげるねっ
何て言う幸せの連鎖
本当に、そうなればいいのに
本当に
今のオレには、まだそうなる実感は無い
自分が幸せになる自信が無い
克子十四番の画像を拡大して
突然弓槻先生が克子さんに命じる
長い黒髪に隠れていて判らなかったが、先生はずっとイヤホンで校内の監視を続けていたらしい
はい、十四番映ります
壁の一番大きなモニターに、学食の映像が映った
真ん中に居るのは遠藤と雪乃だ
雪乃は今朝の教室と同じ状態だった
やたらと遠藤とベタベタしている
大きな声で喋って、大きく笑っている
感情表現が派手だが少し、異常な感じがする
無理矢理、笑顔を作って笑っているような
克子、音声も拡大して
スピーカーから、盗聴している声が流れる
そんでねっ、妹とママがね
あっ雪乃、オレそろそろ部室行かないと
えーっ、まだいいじゃない
いや、ホントにヤバイんだよもう着替えないと、先輩たちが集まっちゃうからさ
あーあ、つまんない
本当なら、一年は先に行ってグラウンドの整備をやらないといけないんだけどオレ、レギュラー決まったし、監督に気に入られてるだろっだから、他の一年のやつらに任せてきたんだそれで今まで、雪乃とダベッてられたんだぜ
だけどさぁ
一年の部員はオレの舎弟だから、どうにでもなるんだけどさ先輩連中はそうもいかないだろっ一年坊のオレがレギュラー取ったことだけでも、あの人たちのプライドを傷つけちゃってるのにさその上、雪乃のこともあるだろ
あたしのこと
そうだよオレが雪乃みたいな美人と付き合い始めたってんで、みんな嫉妬してるんだよっまっ、モテねぇ上に、野球の才能も無いやつらに勝手なことを言われても別に気にしないけどさだけど、練習で目を付けられるのはカンベンだろ監督の見てないところで、シメられるのは嫌だし
そうなんだ
お前もさ、先輩連中には愛想良くしてくれよ特にキャプテンの安宅さんとエースの滝本先輩には要注意なあの人たちに嫌われたら、野球部では生きていかれないから二人とも、野球はできるけれど女はできねぇっていうタイプだからさ、とにかくニコニコしててくれればいいから
判ったわ
野球部なんて、みんな童貞野郎ばっかりだからさ、雪乃みたいな子が可愛く笑ってりゃ、それだけでイチコロなんだから雪乃がチラッと足でも見せれば、あいつらみんな鼻血を出してブッ倒れるんじゃねぇの
もう、バカ
二人は、ゲラゲラ笑う
すごいわね、遠藤くん童貞のくせに言いたい放題ね
先生が呟く
えっ、そうなんですか
毎年、うちの学校の野球部員は最初の合宿の夜に、新入部員の自己紹介の後に童貞か、童貞じゃないかを発表させられるのよ
まさかそれも
ちゃんと記録してあるわよ遠藤くんが童貞ですって公表している場面もその場には、遠藤くんと同じ中学から来ている新入部員もいたから間違いないわ嘘をついてたら、部内で村八分にされるってルールだから
はぁ遠藤童貞のくせに、彼女がいるだけで舞い上がってるのか
いや童貞だからこそ、ここまで天狗になれるのか
そうだ雪乃お前、四時にグラウンドの前で私服で待ってろよ野球部の連中に、私服の可愛いお前を見せつけてやるからさそのまんま、オレと手を繋いでデートに行こうぜな、な、ないいだろ
うんいいよ
雪乃は、遠藤にニッコリと微笑む
何だ、このバカ・カップル
じゃ、オレ行くから
うん練習がんばってねっ
そうして遠藤は席を立つ
学食の席には、雪乃一人
雪乃は、紙パックのイチゴ牛乳をストローでチュッと吸った
ぷっくりした唇
ほんの一時間前、あの唇にフェラチオさせた
雪乃は思い詰めた顔で、ハァと溜息を吐く
ちょっと、揺さぶってみようかしら
弓槻先生が、携帯電話を取り出す
ボタンをプッシュするとモニター画面の中の、雪乃の携帯が鳴る
ハッとする雪乃
おどおどしながら、電話に出る
もしもし、白坂さんあたしよ、弓槻です
画面の中の驚愕の雪乃
どうして
どうしてって、教師が生徒の電話番号を知っているなんて、別に変なことではないでしょう
というか雪乃の携帯は一晩、先生の屋敷の中に置き去りにされていた
あの夜の間に、携帯の中の全ての情報が引き出されたに違いない
あの夜、あの屋敷には、克子さんも、寧さんも、マルゴさんも居たのだから
ところでね、白坂さん今日のセックス・クラブの活動についてなんだけれどね
今日は今日は、休ませて下さい
いいのかしら後、72回分も残っていると思うんだけれど
今日の分は明日、やりますだから、今日はもう帰らせて下さい
まあ、あなたがそれでいいのなら、あたしは強制しないわ明日からお休みですしね朝から晩まで、犯され続ければ間に合うんじゃないかしらっ
とにかく今日は、許して下さい
先生は、電話を切る
画面の中の雪乃は、ホッとした表情で
克子どう分析する
先生が、克子さんに意見を聞いた
感情の起伏が激しすぎます何かしら、企んでいますね
あなたも、そう思う
モニターの中雪乃の座るテーブルに、別の人物が近寄って行く
陸上部のジャージ姿の長身の少女
それは山峰さんだった
雪乃は山峰さんから眼を背ける
何か用
山峰さんは、雪乃の正面に廻り込んで話し掛ける
ここ二、三日雪乃、変だよ何かあったの
あなたには、関係ないわ
あたしで良かったら話してみて力になるから
関係ないって言ってるでしょ放っといてよっ
放っとけないよ
山峰さんの切れ長の眼が、悲しそうに雪乃を見る
そうやって、善人ぶるのはやめてよっ
雪乃が叫ぶ
学食の中が、騒然とする
雪乃
名前で呼ばないでっあたしたち、そんな関係じゃないでしょっ
でも、雪乃は雪乃だよあたしにとって
名前で呼ぶなって言ってるでしょっあんたみたいな人間に、あたしの名前を呼んで欲しくはないのよっ
黙りなさいよっあたし、あなたなんて大ッ嫌い偽善者嘘つきあんたみたいな女、世界で一番嫌いなんだからねっ
もはや、ヒステリーだった