雪乃の中に溜まりに溜まった負の感情が滅茶苦茶な怒りと憎悪が、一気に山峰さんに襲いかかる
雪乃あたしはただあなたと仲良くしたいのよっ
ふざけないでよっあなたみたいな卑劣な女の娘が、あたしに堂々と話し掛けないでっ
お母さんのことは、言わないで
何よッあんたのお母さん、売春婦じゃないっ
山峰さんが雪乃を引っぱたいたッ
泣いている山峰さん
違うわ、あたしのお母さんは、そんなんじゃないっ
雪乃は、叩かれた頬を抑えて憎しみの眼でキギッと山峰さんを睨む
ふんっ本当のことを言われたら、手を出すのねっサイテイ母親が下劣なら、娘も下劣なのねっ
名前で呼ばないでって言ってるでしょっあたしのお父さんのお情けで生きてるくせに、いい気になってあなたなんて、生まれなければよかったのよっ
雪乃の言葉が山峰さんの胸に刺さるッ
あたしには、もう一生話し掛けないでっ近づかないでっあたしの視界に入らないでっいいわねっ
そう言って雪乃は、飲みかけのイチゴ牛乳のパックを山峰さんに思いっきり投げつけた
パックは山峰さんの顔に当たり潰れたっ
びしゃりと山峰さんの顔が、イチゴ牛乳でべちょべちょになる
酷いよ
酷いのは、あんたの母親でしょあたしの世界から消えてあんたと同じクラスなんて気が変になりそうよっさっさと学校を辞めて、転校しなさいよっ
あたしはあなたと友達になりたくて、この学校に
笑わせないでよ誰が、あんたなんかと死んじゃえ、バカッ、どこかの山奥で一人で死になさいよッあんたの母親みたいにっ
わあっと、山峰さんが泣き崩れる
違うわっあたしのお母さんは事故で死んだのよ自殺じゃないっ
学食の中がしーんと静まりかえる
雪乃は気まずそうに、席を立って学食を立ち去った
学食に居た全ての生徒たちの注目を浴びたまま
残された山峰さんは、泣き止まない
陸上部の友達らしい女の子の一人が、タオルで牛乳に塗れた山峰さんの顔を拭いてあげている
他にも何人かの女の子が、山峰さんに慰めの言葉を掛けている
それでも山峰さんは顔を覆って、静かに泣き続けている
雪乃と山峰さんの間にどんな経緯があるのだろう
吉田くん、彼女たちのこと知りたい
弓槻先生が、オレを見る
先生はきっと全てを知っているのだろう
いいえこっそり知るのは、よくないと思います
オレだってオレの家庭のことを、彼女たちに知られたくない
だからオレだって
寧さんが、後ろからオレをギュッと抱き締めた
豊かな胸が、オレの背中に当たる
お姉ちゃん、ヨッちゃんのそういうところ、大好きっ
寧さんが、オレの耳にそう囁いた
おやおや、学食の方はスゴイ騒ぎみたいだね
声の方を見ると地下室からの階段をマルゴさんが上がって来る
そっか外へ通じる通路があるんだって
マルゴ、ご苦労様どうだった
先生の問いかけに、マルゴさんは答えた
はい、やはり渚さんはトラブルに巻き込まれているようです
水くさいわね困っているのなら、相談してくれればいいのに
先生が、呟いた
渚さんて、誰だろう
渚さんはね、あたしたちの先輩二番目の人だよっ
二番目
それって子供を産んで玩具を抜けたっていう
今日は、秋葉原へ薄い本を買いに行きましたが、
レジ前に百人くらい並んでいたので、すごすごと帰って来ました
明日から、仕事かぁ
書きためとか、全然できませんでした
38.マルゴ・ハイウェイ
トラブルの種類は
弓槻先生が、マルゴさんに尋ねた
地元のヤクザみたいだよヤクザが渚さんのお店の利権と
彼女自身に眼を付けたわけね
そういうこと
渚さん、綺麗だもんねっ
寧さんが、そう言った
寧さんも、その渚さん二番目だった人には会ったことがあるんだ
ヤクザといっても、下っ端でしょ渚の店が、あたしの関係だって知らないわけだから
先生が、マルゴさんに尋ねる
そうだよ最近、関西から入り込んできた連中らしい
その人たちの、親は判る
もう、調べてあるよ
マルゴさんは、小さなメモを先生に渡した
ああ、あそこの組の関係ね判ったわ親には、あたしが話を通しておくからそのヤクザさんたちは、徹底的に潰してしまいましょうこの土地であたしの関係者に手出しすることの危険性を、もう一度、裏社会の皆さんに知らしめないといけないようだから
弓槻先生って何者なんだ
ヤクザさんとかにも、知り合いがいる
とにかく、マルゴ、すぐに渚のところへ行って安心させてあげなさい
そうだね、そうするよ
あのお嬢様っ
それまで心配そうな顔で話を聞いていた克子さんが、先生に話し掛ける
何、克子
あのあたしも渚に会いに行って、よろしいでしょうか
そうか渚さんという人が二番目なら、克子さんと同学年で親友だった人だ
友人の危機に、克子さんも気がかりなんだろう
あなたはダメよ克子は、渚のこととなると冷静さを失ってしまうから
とにかく今日はダメよあなたは寧と次の罠の仕込みがあるでしょ
次の罠
吉田くん、あなたもマルゴと一緒に行って
ヤクザ屋さん相手だけど別に構わないでしょう
それはあのそうなんですけど
別に、ヤクザさんなんてどうでもいい
それよりも、オレはあの
ああ、白坂さんのことが気になる大丈夫よ、午後四時までに学校に戻ってくればいいんでしょどうせ彼女も一度家に帰って、身体を洗って着替えて来るんだしふふふ
白坂さん、あの馬鹿げた浣腸器で、まだ膣内洗浄やっていると思う多分、やってるわよね、あの子の性格なら今日も、これから家に帰ってすぐにするんでしょうねあんなんじゃ子宮の中の精液なんて洗い出せないのにっ
そんなこともやらないといけないんだから、白坂さんは放っといても大丈夫よ一応、この部屋なら、彼女の携帯から居場所と通話内容は常に判るし白坂さんの追尾は、あたしがやっておくから安心なさい
そこまで先生が断言するのなら、まあ大丈夫だろう
じゃあ、行こうか克子さんと寧も、途中まで乗って行くといい
マルちゃん、車で来たのっ
ああ
青い方それとも、白い方
青い方だよ
やったぁっそれなら乗ってくっ克っつんも、車で行こうよ
寧さんが、大喜びで克子さんに声を掛ける
ちょっと待って下さいっあたし、着替えないとっ
そうだった克子さんは禁断の制服姿のままだ
あっ、なら、あたしも着替えよおっと地下に、あたしの服、幾つかあるよねっ
はいちゃんとクリーニングして掛けてありますっ
弓槻先生の秘密の部屋から、地下へと下りた