寧さんが、助手席の窓から顔を出して、大きく手を振るっ
あっ寧さぁんっ
向こうから、中学生の三人組がパタパタと駆けてくるっ
その制服はオレでも知っている有名お嬢様中学校のものだった
古風な薄墨色のセーラー服スカーフはグリーン
三人は少しマセているのか、スカートをお腹のところで折り畳んで、ミニスカ気味にして履いている
ソックスは紺色で、学校の校章が付いている指定品
靴は黒の革靴
三人とも可愛いけれど、舞夏ちゃんと呼ばれた子はずば抜けて可愛い
まさに、美少女だ
眼が大っきくて、鼻筋が通っている
将来きっと、美人になる
さすがにまだ胸のふくらみは小さいけれど
えへへっ、お友達も連れて来ちゃった
舞夏ちゃんと呼ばれた女の子が、笑って寧さんにそう言う
全然構わないよっあたし、可愛い子はみんな大好きだしっ
寧さんは、親しげに彼女と喋っている
どういう関係なんだろう
すっごぉいね、この車、寧さんのお家の
これはねっ、マルちゃんのだよっこの間、話したでしょあたしの大親友の
マルゴ・ハイウェイ・スタークウェザーです初めまして、お嬢さんたち
格好いいーっ外人さんだぁっ
中学生たちが、運転席のマルゴさんに歓声をあげる
そうだよな、マルゴさん普通に美形だし背も高いし外人だしスポーツ・ウーマンだし
顔に傷があるったって、かえって歴戦の戦士っぽくて、凛々しくて格好いいもんな
中学生の女の子には、人気が出ると思う
こんにちは、舞夏ちゃんお友達のお二人も
克子さんも、シートの間から顔を出して中学生たちに挨拶する
あっ、克子さん、こんにちわ絵美ちゃん、優ちゃん、この人が克子さん
うわぁ、ホントにすっごい美人なんだ
こらこら、あたしはどうなのよっ
寧さんが、中学生にぷんぷん怒る
だって、寧さんはすっごく可愛いじゃないですかっで、克子さんは、すっごく綺麗で、マルゴさんは格好いいですっ
舞夏ちゃんが、フォローを入れた
うんうん、判っているのならよろしいっ
寧さんの言葉に、中学生たちはケラケラ笑う
ああ寧さんて、年下の女の子に好かれるタイプなんだ
何か、新しい面が見えて新鮮な感じがする
今日は二時間ぐらいしか時間が取れないんだけど、あたしと寧でファッションとかお化粧とか、色々と教えてあげるからねっ
克子さんが、笑ってそう言う
この人も中学生からすれば、克子さんなんて憧れの大人そのものだよなあ
綺麗で、優しくて、明るくて
ありがとうございますっあの、マルゴさんは
舞夏ちゃんの言葉に、マルゴさんは爽やかに返答する
ごめんねあたしは、まだお仕事が残ってるんだ今度またね
じゃあ、マルちゃん送ってくれて、ありがとうねっ
ドアを開けて、寧さんが車から降りる
シートを倒して、後ろの席の克子さんも
じゃあ、寧、気を付けて克子さん、よろしく頼みます
マルちゃん、まったねぇーっ
マルゴさん、さようならっ
マルゴさんが、車を始動させる
わざとブルルルンと大きくエンジン音を響かせる
中学生たちが、喜んでキャーと歓声を挙げた
その声を背中にマルゴさんのマセラッティは、加速する
30秒ほど走って、マルゴさんは車を路肩に止めた
もういいよ、隠れていなくても毛布を被ったまんまじゃ暑いだろ
はい暑いです
四月末の陽気だこんなん、やってられない
助手席へおいでよそこだと話がしづらいだろ
オレは言われるままに、後部座席から助手席へ移った
もちろん、このスポーツカーの中で車内移動するのは無理だから、ドアを開けて一回外に出て座り直す
さっきの子、可愛かったと思わない舞夏ちゃん
ホント可愛かったです誰なんです
判らない誰かに似ていると思わない
えっと
確かに、どっかで見たことがあるような顔だったぞ
って、あんなに可愛い子っていうと、誰だ
オレ、ゲーノージンとか、よく知らないし
あの子のフルネームはね
マルゴさんの眼が、ニッと微笑む
白坂舞夏
雪乃の妹っ
ねっ、面影があるだろ
た、確かにそう言われてみれば、似ているっ
えっどういうことなんですかっ
オレは、思わずマルゴさんに尋ねた
三日前に、寧と克子さんが偶然、街で知り合ってねもちろん、そう仕組んだんだけどそれで、仲良くなったってわけ
三日前っていうとオレが、遠藤に屋上で殴られた日か
まだ、雪乃を犯してはいない
そんな頃から弓槻先生は、すでにこんな計画を
ところでさ君は、ロリコンは平気
ああ、高校一年生と中学二年生じゃ、二歳しか違わないんだから、ロリコンていうのは変か
どういうことです
あの子とセックスできるかってこと
中学生の雪乃の妹とセックスする
あんな小さい子と
大丈夫だよ十三歳なら、もうセックスはできるからあたしの初体験は、十二歳だったし
あたしねレイプされたんだ男、三人に取り押さえられて輪姦されたんだ
マルゴさんは、静かに正面を向いて運転している
うんだから、舞夏ちゃんには、優しくしてあげて欲しいな
そのまま車の中は、しばらく無言が続いた
オレはしばらく、窓の外の街の喧騒を眺めていた
判りました、オレ
あの子とセックスすれば、いいんですよねやりますやってみます
いいのかい
弓槻先生の命令なら何でもする誰でもレイプするって約束したんですから覚悟は、できています
車が、キキキとカーブを曲がる
君は、本当に理由を聞かないんだね
どうして、あの子がターゲットなのか、何で君がセックスしなければいけないのかとか知りたくはないの
きっと、理由は色々あるんだろうなって思いますオレに話した方がいいことなら、誰かが教えてくれるでしょうし、話してくれないのなら、オレが知るべきことではないんだと思います
君はいいのかいそれで
はいオレ、頭悪いですから言葉で話して貰っても、頭で理解できないかもしれないしゆっくり、時間を掛けないと判らないことって多いと思うから
そっかそういう風に考えているんだ
マルゴさんは、何やら考え込んでいる様子だった
君は、本当にあたしたちのことについて質問しないよねあたしか、寧や、克子さんの過去には興味が無い
興味無いわけはありませんだけどそれは、オレから質問するべきことじゃないと思うしオレだって、他の人に話したくないことがあるから
でも、君のことについては、あたしたちは全員知っているよお家のことは弓槻先生の調査書を読んでいるから
でも書いてある書類を読むのと、本人から直接話を聞くのとは、やっぱり違います本人の言葉には、痛みと実感が籠もっているから