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普段から緊急避妊薬を持ち歩いているマルゴさんの言葉には、説得力があった

あの雪乃に渡していた別の薬は射精三回まで避妊できるっていう

ああ、あの偽薬あれはね、あの日に弓槻先生が岩倉さんに持って行ったんだ白坂雪乃に渡すようにってこれは、岩倉さんの身体には合わない薬だからって言ってねまあ、絶対確実とは言えない避妊薬で、三回まではオーケイだけど、四回目は妊娠するかもなんて言うんじゃ、岩倉さんは絶対に自分では使わないよ

バックミラーの中の鋭い眼がオレを見る

岩倉さんは、これまでに三度も堕胎しているんだよ彼女は、妊娠には誰よりも恐怖感を持っているだから、普段はコンドームと避妊フィルムを併用して使っているらしいよ

はああの人がねえ

あれっ待てよ

援助交際していて、堕胎の経験があるって

それは寧さんの噂だ

一般の生徒たちは、寧さんがそういう人だと信じている

うん岩倉さんの活動は派手だったからね、警察沙汰になる前に何とかしたんだけど生徒レベルでは噂になっていた校内に援助交際の女王がいるってねだから、あたしたちはそれを寧の伝説に仕立て上げたんだ

なぜ、寧さんがみんなから陰口を言われるようなことになったんだ

あんな、明るくて優しい人がどうして

それはねちょうどその頃、寧も色々とトラブルが重なっていてねとにかく、岩倉さんのやった悪行は、全て寧が引き受けることになったんだよ

そうだ、あの時

今日の一時間目を抜け出して、寧さんと屋上へ行く途中

岩倉会長が、寧さんに深くお辞儀をしていた

詳しくは、寧が話してくれるまで待ってあげて欲しいあたしからは教えられないことなんだよ

マルゴさんがそう言うのなら今は無理に聞くことではないのだろう

とにかく話を元に戻すよ

あたしたち、弓槻先生に拾われた玩具のメンバーは、みんな揃って猛獣なんだよ

猛獣

そうトラやライオンと同じ可哀想な子羊を屠らないと生きていけない

子羊

ここにいる、みすずもそうだ

オレのために、犠牲になった可哀想な子羊

トラやライオンに肉食を止めさせることができないようにあたしたちは、誰かを犠牲にしてしか生きていくことができない人間の社会からすれば、見つけ次第に射殺するべき存在なんだろうね、あたしたちは

ミラーの中のマルゴさんの眼が、悲しそうにオレを見る

あたしたちは、居てはいけない間違った存在だでもあたしたちもまた、この世界に生まれて来てしまった生まれた以上、死ぬまでは必死に生き続けなければいけない誰を犠牲にしようとも

克子さんたちは、セックスで人を喰っていく

マルゴさんは、暴力で

寧さんは、火を付ける

弓槻先生は、ただただ人の不幸を願う

吉田くん君も、そうなんだよ

そうだオレも

雪乃をみすずを、屠っている

ミナホは、ずっとこんなあたしたちが暮らしていける場所を作ろうとしてくれているミナホ自身も、自らの破滅願望と闘いながらね

先生は自分と玩具たちの捕食テリトリーとして、学校を支配しながら

同時に、そのテリトリーが自分の支配地域から拡がらないように画策している

矛盾した、行動だ

一方では、自分たちの犠牲者を増やしもう一方では、それ以上被害が増えないようにしている

それでも彼女は玩具たちを守るために、そうせざる得ないのだろう

学校は、動物園ではない生徒たちは、普通の人間だ

玩具たちは、檻に入れられない野生の猛獣だ

猛獣を、人間の街の中で放し飼いにするという難行

しかも、弓槻先生本人もまた、血に飢えた猛獣なのだ

ミナホはミナホで苦しんでいるんだ判ってあげてくれ

オレが、みすずを得て飼い主としての義務と責任を重く感じたように

弓槻先生もオレたち玩具に、義務と責任を感じてくれている

しかし、待てよ

ではオレたちの犠牲になった子羊はどうなるのだろう

犠牲者たちは、ただオレたちに屠られたままそのままなのか

それでいいのか

マルゴ様

不意にオレの子羊、みすずが口を開いた

あたしの教会の牧師様が、前にこうおっしゃっていました人間は誰かに迷惑を掛けないと生きていけない生き物だだけど、迷惑を掛ける量を減らす努力はできるそれが隣人への愛というものだよ

みすず

また、こうもおっしゃいました人間は、愛している相手にだけは平気で迷惑を掛けることができる甘えることができるだから、誰かに迷惑を掛けられたら、自分は愛されているのだと思いなさい

みすずは、ニッコリオレに微笑んだ

ですから、旦那様みすずにいっぱい迷惑を掛けて下さい甘えて下さいみすずは、旦那様に愛されたいんです

みすずはオレの手を取って、自分の赤い首輪に触れさせる

みすずは、ペットで幸せなんですからっ

オレの子羊は本当に良い子だ

ハハハ君は、本当に良いペットを手に入れたね

マルゴさんは、そう言って笑ってくれた

オレは、みすずの手をにぎる

みすずは、オレに身体を寄せてくる

大切な、オレのペット

なのに、オレという猛獣は

これから会う、雪乃のことを考えている

雪乃の肉体の感触を、思い出す

みすずとは違う肌の感触

違う、ヴァギナの味

早くまたあの肉体を犯したい

雪乃の泣き顔が見たい

酷いセックスで、雪乃を啼かせたい

猛獣なんだ

マルゴさんの言う通り

待てよ

窓の外の青い空を見ながらふと、思う

もう一度落ち着いて、よく考えてみよう

さっきのマルゴさんの話から、逆算して

オレまだ何か、大事なことを見落としているかもしれない

今まで知ったことを、一回、頭の中で整理してみるべきだ

オレがこれまで知ったことを、時系列順に並べ直してみると

六年前

・弓槻先生が赴任克子さん、渚さんが入学玩具になる

※克子さんと渚さんは、かなり激しいセックスの調教を受ける

五年前

・高校の改築が始まる

※弓槻先生の監視システムが、校内に組み込まれていく

四年前

・渚さん、妊娠玩具を抜ける花屋を開店

三年前

・マルゴさんが入学

※ただし、マルゴさんが弓槻先生と知り合ったのはアメリカだから、玩具のメンバーになったのはこれ以前だと思われる

・真緒ちゃん、誕生

二年前

・岩倉さんと寧さんが入学

・岩倉さんは、一年生の春の段階で玩具になる

※援助交際は、それ以前からしていた

・岩倉さんの調教は、秋までその後、生徒会長になるための改造を受ける