Выбрать главу

克子さんに先導されて、ダイニングを出る

オレたちの後から、先生が挟まれている、オレたちは逃げられない

玄関ホールまで戻って、大きな階段を2階まで上がる

左側の大きな扉を、メイドさんが開けた

こちらです

その部屋はかつては、洋館のダンス・ホールだったのだろう教室二つ分くらいの大きな空間が拡がっている天井も高い

もちろん舞踏会なんて、もう何十年も行われていないのだろう

部屋の片側には、先生がトレーニングに使っているのだろうかジムの器械が数台置かれている

そして、部屋の奥そこは、まるで撮影スタジオのようになっていた

天井から白い大きな布が、床まで垂れている背景ホリゾントというやつか

そのホリゾントの前の床にだけ、淡いブルーのカーペットが敷かれている

その左右に照明器具と、大きな白い傘みたいなものあれには、確かフラッシュの機械が仕込まれているはずだ

そして、正面に三脚に乗せられた大きな一眼レフのデジタルカメラが

プロ用の最高機種だ百万円は軽く超す値段の代物だと思う

それが、3台も並んでいた

それ意外にも、脇のワゴンの上に、普通のサイズのデジカメも数台置かれている

テーブルにはノートパソコンも一台

じゃあ、あなた靴を脱いで、カメラの前に立ってくれる

女教師が白坂さんを見て、そう言った

え、あの

白坂さんは、事態がよく呑み込めていないようだった

言ったでしょ、記念写真が撮りたいって大丈夫よ服を着たままでいいわ

白坂様、こちらへお願いします

メイドさんに促されて、白坂さんはよく判らないまま靴を脱いでカーペットの上に

じゃあ、克子、お願い

かしこまりました

克子さんが、3台のうちの真ん中のカメラをいじりはじめる

吉田くんは、こっちにいらっしゃい

先生は、壁際のテーブルとソファーのある方へ向かっていた

そこは撮影の現場から少し離れている十メートルくらいの距離だ

そんなに離れてしまったら、白坂さんの撮影がよく見えない

残念だけどでも、先生の指示には逆らえない

先生はソファーに座ると、テーブルの上にあったパソコンを開いた

それでは参りまぁーす目線をこちらに下さぁい

メイドさんが、白坂さんに声を掛ける

どうやら、写真を撮るのは克子さんの仕事らしい

ちょっとちょっと、待って下さい

困惑している白坂さん

いつもの制服姿の白坂さんが、カメラの前で強ばっている

あっ、いいですよその感じ、初々しくてそのまま動かないでぇぇッ

はぁいッ

ビカッとフラッシュが光る

ビッとシャッターの音

ピピピピピというフラッシュの充電音が、その後に続く

うーん、ちょっとまだ顔が硬いみたいですねぇぇはい、次いきまぁす、視線はこっちはいはいはぁぁい、それぇっ

フラッシュビビビッ

あっちは面白そうだ

ああ近くで見たいなあ、と思っていたら、

吉田くん、これを見てご覧なさい

と、先生が笑って、パソコンのモニターを指し示した

覗き込むオレ

そこには、今撮ったばかりの白坂さんの画像が映っている

克子さんのカメラとこのパソコンは、繋がっている

克子には、カメラマンの才能があるからあたしはいつも、最初は彼女に任せることにしているのよ

いつもこんなことをしているんですか

そう質問したかったが、オレの眼はすでにモニター画面に集中していた

克子さんの写真は見事だった素人目にも判る

白坂さんの可愛らしさ、可憐さを、あますところなく写し取っている

急にこんな場所に連れて来られた不安や恐怖感、苛立ち、憎しみさえも

はい、それじゃあ、次は目線をそっちの壁の方に向けて下さぁいもう少し、上そうですもっと胸を張ってはいとっても可愛いですよぉぉ、そのままそのままはぁい

フラッシュ

克子さんは、次々に写真を撮っていく

パソコンの中の白坂さんの画像は10枚、20枚と増えて

ほら少しずつ、彼女の様子が変わってきたでしょう

先生が白坂さんの写真を見て、ニッと微笑んだ

確かに写真を見ると、いつの間にか白坂さんの緊張が解けている

不安感や苛立ちが解け落ちて克子さんに心を開いて来ている

というか、顔が上気していてうっすら汗をかいて

何か、ボーッとした感じにさえ見える

こんな白坂さんの顔学校の中でも、見たことがない

克子は、被写体を気分良くノせるのが上手いのよそれに、今この部屋の中は女性の比率が高いでしょうあたしとあなたは、わざと少し距離を取った位置にいるし

そうか撮影現場から少し離れた所から見ているのは、白坂さんの緊張を解くためだったんだ

わざと、明るくて親しげな克子さんに相手をさせて

写真を撮ることで、疑似的な信頼関係を結ばせて

ほうら隙を見せないように徹底して張り詰めていた彼女が、どんどんゆるゆるになっていくわ

白坂さんが、右手で額の汗を拭った

あらあらあらはぁい、タオルをどうぞぉぉ

克子さんがカメラから離れて、純白のタオルを白坂さんに手渡す

タオルで汗を拭う、白坂さん

洗い立てのふんわりとしたタオルの触感が、また彼女の心を緩和させる

じゃ次、上着を脱いでみましょうか

克子さんが、ニコニコして白坂さんに言う

暑いでしょ上着を脱いだ方がいいですよっ

ただ親切心から言っただけですよという、克子さんの笑顔

明るい元気美人の克子さんの言葉に、白坂さんは制服の上着を脱ぐ

うんうんいいですぅいいですぅこっちを見てぇぇ、はぁいっ

白いブラウス姿の白坂さんを、克子さんは撮していく

うーん、まだ暑そうですねぇ首のところのボタン、幾つか開けましょうかうん、その方がいいですよ

言われるまま、ブラウスのボタンを外す白坂さん

ほーらほら、もっと可愛くなったそこに座ってみて下さいあ、笑ってみて下さいニッとほーら、笑顔の方が素敵ですよぉぉ

この屋敷に来て以来、ずっと張り詰めていた白坂さん

一度も笑わなかった白坂さんがカメラに微笑んだ

カメラマン克子さんが白坂さんの心に浸食していく

あ、少し小悪魔的な感じが出したいですねぇ上半身を少しねじってみて下さぁいそそそそうです、その感じあ、ボタンもう一つ外してみて下さぁぁい

当たり前のように外される胸のボタン白いブラジャーの縁が、ちらりと見える

うんうん、いいですよぉぉはぁい

またフラッシュが、白坂さんの身体をくっきりと浮かび上がらせる

今度はしゃがんで下さいそう、バス停でバスを待ってる感じでまだかなぁ、まだかなぁそうです、それ

白坂さん、気付いていない