う、うんそうだね
いっそのこと四日から出掛けて、一泊する
もう、ケンジ馬鹿なこと言わないでよッ
変なことはしないよ一緒に手を繋いで寝るだけ、そんならいいだろ
遠藤が、下らないことを言ってる
まあ、いいやそのプランはオレがいただくことにしよう
ゴールデンウィークには、白坂さんと一泊してやるッ
暗い笑いが、オレの中に立ち昇った
おい、ニタニタわらって、こっちを見てるんじゃねぇよッ
不意に、遠藤がオレの方を振り向いたッ
お前のことだよ吉田ッ
キツい眼で遠藤がオレを睨み付けるッ
さっきからずっと、オレと雪乃の話を盗み聞きしやがって気持ち悪いんだよッ
遠藤の大きな身体が、ズカズカとオレの方にやってくる
やめて、ケンジ
遠藤を止めようとする、白坂さん
でもその腰は椅子から上がらない
遠藤の太い腕が、オレの胸ぐらをグイッと掴み上げた
吉田ッお前、本当にいい加減にしろよなッ
教室で食事していた女生徒たちからキャッと悲鳴が起きるッ
遠藤は、その子らの眼を気にして
ちょっと顔を貸せよ屋上へ行こうぜここじゃあ、人の眼が多すぎる
オレよりも遥かに体格の良い高校球児に、胸を掴まれているオレ
とりあえず、どうにかそれだけ返事をした
ちょっとやめなさいよ、ケンジ
背後から聞こえる白坂さんの声
大丈夫だよ、雪乃すぐ戻って来るから
うわっ、ケンカか
見物しに行こうぜ
小林と大宮が、興奮してついてこようとする
ついてくんなよッケンカじゃねぇよちょっと、オレと吉田で話をするだけだ二人きりにしてくれ
遠藤はそう言って、小林たちを制した
オレと遠藤は、教室を出る
ついてくる野次馬は、一人もいない
北側の屋上は、誰もいなかった
ドアが閉まったところで、いきなり遠藤は言った
吉田お前、一昨日のこと、誰にも言ってないだろうな
な、なんのこと
オレは、思いっきりトボケてみた
お前の顔のことだよッ
やっぱり気になってたんだ
下手すりゃ、暴力事件で野球部は出場辞退だもんな
何だオレが、遠藤と白坂さんの会話を盗み聞きしてたんじゃない
遠藤もずっと、オレの方を気にしてたんだじゃないかッ
お前誰かにバラしたら、タダじゃすませないからなッ
オレはプッと吹き出した
何だよタダじゃ済ませないっての
どうする気なんだよ
何がおかしいんだよッ
おかしいよそりゃ
マジで、この学校に居られないようにしてやるからなッオレ、本気だからな
どうやって
馬鹿じゃねぇのこいつ
っていうか、馬鹿丸出しじゃん遠藤
笑ってんじゃねぇッ
仕方ないだろ笑えるんだから
お前オレのこと、ナメてんのかよッ
判った、遠藤
つまり、お前はオレを殴ったことをほんの少しでも悪かったとは思っていないんだな
謝罪する気は、まったくないんだな
それどころかこんな馬鹿げた脅迫で、オレを黙らせられると思っているんだ
オレは、ニタリと笑って遠藤に言った
な、ナメてるとしたらど、どうするつもりだよっ
遠藤の顔に怒りが迸るッ
てめぇぇぇッッ
遠藤の拳がオレの顔に迫ってくるッッ
一発
次は、腹を殴られるッ
二発
胸を強く突かれるッ
三発
壁に叩き付けられたオレを、さらに殴るッ
四発
屋上の地面に転がったオレ
身体のあちこちが痛い
遠藤は、ハァハァと肩で息している
いいかぁっオレに殴られたことは、絶対に誰にも言うなよッもし、喋ったら、こんなもんじゃ済ませねぇからなッッ
遠藤は最後に、オレの腰をガツンッと蹴った
五発目
遠くで、屋上の重い鉄のドアが閉まる音が聞こえる
屋上に転がったまま、一人取り残されたオレ
痛い動けない
でもオレの顔は笑っていた
誰もいない屋上であははは、と大きく笑った
白坂さん今日は、五回だよ
この後、五回も白坂さんを抱けるっ
抱いてやるッ
犯してやるッ
ちくしょう
今日もギリでアップです
仕事に行く電車の中で書くことも考えたのですがエロはやっぱり難しいよなあ
次話で新キャラ登場します
眼鏡っ娘で、グラマー系です
18. 四番目と五番目
ん
オレ、いつの間にか眠ってたのかな
歌が聞こえる
どこかのクラスが音楽の授業で、合唱しているらしい
へえいい学校だな、ここ
オレが、三月まで通っていた中学山奥の閉鎖された全寮制の男子校じゃ、みんな音楽の授業なんてマトモに受けてなかった
寝てるかダベってるか携帯いじくってるか
音楽の先生は定年間近のジィさんで、全然やる気が無くて
ただ毎回の授業は、名曲のCDを適当に掛けてるだけで
感想文に適当にいい曲だと思いました、良かったですとか書いておけば、それでオーケイっていうような、クソ舐めた授業だった
みんなで合唱なんて、全然しなかったよなあ
だいたい、中学の校歌だってロクに覚えてないし在校生のほとんどが知らないんじゃねえの
ホントあそこは牢獄みたいな、嫌な中学校だった
しかし、オレ何でここにいるんだろ
どうして、こんなところで寝転んでいるんだろう
ああ、青い空が拡がっているなあ
空はどこまでも青く澄んでいる
うん空の青でいっぱいのオレの視界に、ニョッキリと白い何かが侵入してくる
なんだ、この白い物体は布っぽいけど
白地の布がもわんと山みたいに膨れてる
あれはボタンか
ってもしかして、女の子の制服のブラウス
瞬間ハッキリと、意識が戻った
オレ、遠藤に殴られてあのまま、屋上でダウンしてたのかっ
するとええ、もう、午後の授業、始まっちゃってるってこと
ん、起きたの
上から声がした
この青空みたいに澄み通った綺麗な声だった
ってあれっ、オレの頭、何かふんわりしてて温かい物をに乗っかってね
こここ、これってもしかして
ひひひ、膝枕っ
オレ誰かに、膝枕してもらってるぅッッッ
オレの視界青い空と白い布地
その布地の上から、ぬーっと女性の顔が現れたっ
きききき、金髪っ
さわっと揺れる、ボリュームのある金髪の髪
金髪って言っても派手な金色ではなく、とっちかっていうと白に近い乳白色だ
自然な色じゃない
多分、薬剤で染めた色の髪
その、ふわっとしたセミロングの髪の毛の中に優しげに微笑んでいる女の顔があった
オレ屋上の床に転がっていて、この女の人に膝枕されているッ
だからオレの顔と彼女の顔は、天地が真逆になっていて