Выбрать главу

この学校は黒い森の一部ですしシザーリオ・ヴァイオラみたいな人間が暗躍している時に、報道関係者の群れが押し寄せてくるのは悪夢でしょだから、学校への取材は規制して下さっているはずよ幸い

ミナホ姉さんの眼が、マナを見る

舞夏さんの通っている中学校は、お嬢様学校でしょ政治家や有名人のお嬢さんたちがたくさん通っているわけだから、取材は絶対にお断りするという姿勢を取っているしマスコミも、それに従わざるえないわうちの学校は、その流れに便乗させてもらうわまあ、三流のゴシップ誌の記者ぐらいはぶらつくでしょうけれど工藤さんのお父さんたちが蹴散らして下さると思うし

そうか深刻な事態にはならないのなら、いいか

とにかく学校の敷地内で、外部から見られない場所にいる限りは平気よ午後までは安心よ

午後まで

午後には下校してくる生徒に、取材する記者がいるでしょうから雪乃さんが、この学校に居ることはバレるわ

雪乃を授業に行かせる気なんだ

こんな状況の中で

オレは狭い監禁室に閉じ込められている雪乃のことを思い出す

御名穂さんあたし、そろそろ

メグが顔を上げる

時計を見ると6時20分

そろそろメグは、陸上部に向かわなければいけない

そうね吉田くん、恵美を送って来てあげて

ミナホ姉さんが、当然のこととしてオレに告げる

オレは席を立つ

あ、吉田くんあなた、校舎の1階の奥の非常口って判る

あたし、判ります

あそこは内側から鍵が開くからそこから外に出てもう、クラブ活動の生徒が登校してきていると思うから、見つからないように気を付けるのよ

恵美を送ったら、吉田くんはここに戻って来ていいわね

メグはすでに出られる準備を終えている

朝練の後に、そのまま教室に行けるようにカバンも持つ

カバンはオレが持ってやるよ

いいわよこれくらい

いいって持つから

オレは奪うようにして、メグのカバンを持った

気を付けてね

マナちゃんは、あたしとお留守番しているからっ

寧さんが、マナを抱き締めてそう言ってくれた

すぐに帰って来てねお兄ちゃん

マナは心配そうに、オレを見ている

大丈夫だよ校内なんだし心配なら、監視カメラで観ていろこの学校の敷地内なら、どこに居たってカメラで観られるんだから

マナは小さく頷いた

再び、上の階の校長室から外に出て

もう一度、階段を下りて校舎の1階へ

面倒くさいが、仕方ないそういう構造なんだから

校舎の玄関は、6時30分にならないと開かない

でも、玄関口の前には、すでに生徒が来ている可能性がある

だから人気の無い、校舎の奥の非常口から外に出る

朝の外気を吸う

まだ、空気が冷たい

メグはずっと無言だった

オレはメグに手を差し出す

右手はメグのカバンを持っているから空いている左手を

手を繋いだまま二人で裏庭から部室棟へ向かう

メグがうつむいて、呟いた

あたしやっぱり、朝練、休もうかな

みんなあたしが雪乃と親戚なことは知っているし

メグの手が、ギュッと強くオレの手を握る

どうしようもし、あたしが白坂創介の娘だって、知られたら

そんなことみんなが知ってるはずはないだろ

でもそういうことを調べる新聞記者とかレポーターとかがいて今頃、テレビで報道しているかもしれないわ白坂創介には、もう一人娘がいるって

メグはそんなことを心配していたのか

あたしあの人のことをお父さんだって思ったことは一度無いわそれでももしみんなが、あたしが白坂創介の娘だって知ったらみんな、あたしのこと嫌いになると思うのみんな、あたしから離れて行くと思うの

メグそんなことないって大丈夫だから

メグは真っ青な顔で、オレを見る

ヨシくんあたし、ヨシくんとエッチしたい朝練は休むわねあたしのこと、抱いてヨシくんに思いっきり、抱いて欲しいのよ

これがミナホ姉さんの言っていた

セックスに逃げるということなのか

オレはメグの眼をジッと見つめる

そんなに弱くなってどうするんだよ

弱いよ、あたしだから、ヨシくんに抱き締めて欲しいの

オレが好きになった山峰恵美はそんな弱い女じゃなかったぞ

ハッとするメグ

お前は白坂創介の娘じゃない山峰恵美だそうだろメグ

そして吉田恵美になる女じゃなかったのか

メグの眼に光が差す

オレの嫁さんが、そんなに弱い女じゃ困るよ何があっても、オレがお前の側についていてやるお前のことを悪く言うやつがいたら、全部オレがブン殴ってやるよだからお前も強くなれ

うんヨシくんヨシくん

メグの眼から、ぽろぽろと涙が零れる

ほら、涙を拭いて前を向いて、胸を張って行こうぜメグは、メグなんだ白坂創介なんて人間とは、全然関係無い女の子なんだから

ありがとう、ヨシくんありがとう

周りに誰もいないことを確認して

メグにキスをした

時が止まる

メグとのキスは何度してもレモンの淡い味がする

あたし甘えてたごめんね

再び、部室に向かう途上でメグが言った

あたしヨシくんのいい奥さんになる絶対になるから

何度も何度もメグは、オレにそう言った

強くなる負けない負けないから

メグの手が、オレの手をギュッと握る

オレもギュッと握り返す

あたしにはヨシくんがいてくれるんだもんね

メグの眼に闘志が見えた

これが、メグの眼だ

セックスに逃げて、欲情に溺れたあの眼とは違う

誰にでも優しくて、頑張り屋で、我慢強い

オレのメグの眼だ

あ、来たぜ

陸上部の部室の前にはすでにたくさんの生徒が集まっていた

陸上部員だけでない

他の運動部の人間もいる

あいつか

男の方

いいや女の方だ

本当に、白坂家の人間なのか

うん1年の白坂の娘の親戚だってよ

そう言ってたの、あたし聞いたから

興味本位でオレたちをジロジロと見る生徒たち

多くがオレたちをよく知らない上級生たちだった

すでに、噂が一人歩きしている

昨日からテレビで大騒ぎになっている白坂創介の娘が自分の学校に居る

その親戚も居るらしい

ただ、それだけでこんなにたくさんの生徒が、集まって来る

物珍しそうな眼で

メグを見ている

オレは怒りを覚えた

こんなやつら全員、ブン殴ってやりたい

メグ平気だから

オレはメグの肩を抱く

ヒューヒューッと、オレたちを小馬鹿にしたように口笛が吹かれた

で何なの、あいつ

白坂家の親戚の娘の彼氏

つーか、あいつも白坂家なんじゃね

勝手なことばかり、言いやがって

と、その時

山峰おはよう