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とにかくお前はもう、野球部とは関係ない人間だ今日、運動部の会合があるから、そのことはハッキリと伝えておく

安宅キャプテンは、そう言った

オレたちもさ、夏の予選が近いんだよお前みたいな、クソ馬鹿野郎の相手はしてられないんだよ

本当なら、全員でボコボコにしてやりてぇところだよな

よせよせ、こんな馬鹿殴ってそれで、出場停止になったら元も子もねえからな

絶対、こいつ、親に言うだろうしな

パパー、みんなにイジメられたーんってか

そうそう親に泣きついて、どうにかして貰おうとすんだよ、どうせ

でもこいつんちの親、今、そんな余裕あんのかね

そこは可愛い、可愛い、お坊ちゃまのためにネジ込んでくるだろ学校と高野連に

怖い怖い過保護ちゃんは、怖いですねぇ

部員たちが遠藤を罵って、笑う

先輩方、それはちょっと言い過ぎなんじゃないですか

学習能力の無い遠藤のガマンの利かない幼稚な心が、眼を開く

言い過ぎふざけんな、バァーカ

昨日の試合だってお前のミスがなけりゃ、オレたちが勝ってたんだ

余計な恥をかかせやがって

無期停学喰らう前に、自分から学校辞めちまえよ

そうだ、その方が清々するっ

売り言葉に買い言葉

遠藤の心が、一気にヒートアップする

ああこっちから辞めてやるよ、こんな学校

ここでガマンできれば、まだ良かったのに

そうできないのが遠藤ケンジという人間の小ささだ

お前らみたいな弱っちぃやつらとは、こっちから縁を切ってやるよ

あーあやっちまった

何だ何だ何だ、お前ら寄ってたかって、オレのことをコケにしやがって大して野球も上手くねえくせにオレはな、お前らなんかよりも、よっぽど才能があるのにわざわざこの学校へ来てやったんだぞ

そこで止めとけばいいのに

オレの親父の寄付で、備品だっていっぱい揃えたじゃねぇか飲み物とかプロテインとか、オレがお前らにどれだけ投資してやったと思っているんだそれをこんな、どうでもいいようなことで手の平返ししやがって

遠藤の本性が出る

もういいや、お前らなんてオレは、他の高校へ転校するわそこの野球部に入って絶対に、お前らを後悔させてやるからな

遠藤は野球部員全員に中指を立てて、力一杯、そう叫んだ

遠藤は、ガツンとかましたつもりなんだろう

眼を血走らせて、野球部員たちを睨み付けている

その言葉を叩き付けられた野球部員たちの頭上には、しらけ鳥が飛んでいた

ふぅん

あ、そう

がんばってみれば

うん、できるもんならな

部員たちの反応は、氷のように冷たい

な、何だよ、手前らオレは本気だからなお前らのことは、公式試合でギッタギタに叩き潰してやるからな、覚えとけよ

お前は、悲しいまでに馬鹿なんだな

えっと誰かこいつに説明してやれ、オレはもう口を利くのも嫌になってきた

安宅キャプテンは、呆れた様子でそう言った

ほんじゃあ、オレがキャプテンの代理で

一人の背の高い部員が手を挙げる

こいつは見たことがある2年生の鯉住って先輩だ

前にこの野球部員が屋上でタバコを吸ってそれを目撃したオレが、たまたまその場に居た遠藤に殴られて

雪乃レイプのそもそもの起点になった二人組のうちの一人だ

その鯉住が遠藤に言う

お前さ公式戦で、オレたちと当たるような学校へ転校するつもりなわけ

当ったり前じゃねえかオレの目的は、あんたたちに後悔させてやることなんだからこんな下らねぇことで、オレを追い出したことを死ぬまで後悔させてやっからな

激高している遠藤は大声でそう怒鳴る

でもよー県内の予選でオレたちと当たりそうな高校が、マジでお前を受け入れてくれるって思っているわけ

遠藤の怒りの顔が、引きつる

どどどどういうことだよっ

だっからさあうちの高校の野球部の中でトラブルを起こして、その上無期停学をくらって学校を辞めた様な生徒をさわざわざ引き受けてくれるような殊勝な学校があると思っているのかっての

お前の叔父さんとか親父さんの神通力は、もう使えないって判っているよな

遠藤の顔がみるみるうちに真っ青になっていく

しかもお前は対外試合の最中に騒ぎを起こしたんだし

予選で当たりそうな他の学校の偵察メンバーも来ていたよな

ああお前多分、近隣の学校の野球部員には、相当有名になっていると思うぜ

試合中にうちのパパに言いつけて、監督はクビにしてもらうもんねって、叫んでグラウンドから逃げ出した大馬鹿野郎だぜ

ていうかあの時の様子、何でだか動画投稿サイトに載っているし

えそれ、マジかよ

偵察に来ていた学校のやつがビデオ撮ってたろそれをそのまんまアップしたんだろ

あ、オレも昨夜見たネットのまとめサイトの笑えるニュースでも紹介されていたし

うん昨日の注目度ランキングのトップ5に入ってた

それも多分、ミナホ姉さんの仕業だろうなあ

あの人、恨み事に対しては、地道に復讐していくから

ってことで県内には、お前を入れてくれる野球部なんて無ぇからよッ

鯉住は、意地悪く遠藤に告げた

どーしても野球が続けたいんなら、県外の遙か彼方の田舎の学校とかを探すんだなインターネット回線とか繋がっていないようなド辺鄙な学校をさそんなところなら、お前の悪行も知られないまま、無事に転校できるかもしれねえし

でも、まあどっちにせよ、オレたちとは二度と会うことは無いよな

県外の学校なら、全国大会に出ない限り、公式戦で当たりようがないし

でもオレたちの実力じゃ、甲子園に行ける可能性なんて素粒子レベルでしか存在しねぇし

さらに、遠藤の転校した田舎の学校と、オレたちが甲子園で対決できる可能性に至ってはこれはもうゼロに等しいな

とにかくオレたちはもう、お前とは縁切りだ

うんまあ、しょうがないよな

遠藤が自分で決めたことだもんなうちの学校を辞めるってのは

まあ他の高校でも達者で暮らせよ

二度と戻って来るんじゃねえぞ

山へお帰りッ

野球部員たちは、ギャハハと笑い合う

遠藤は今にも、小便をちびりそうな顔でブルブルと震えている

最後に、安宅キャプテンが遠藤に言った

昨日の試合でお前が着たまんま持って帰った、公式戦専用のユニフォームだけどなあれだけは、返して貰えっていう部員の意見も多かったんだけどこうなっちまうと、お前が着ていたユニフォームなんて縁起が悪過ぎて使えねぇやいらねえよお前にくれてやるから高校野球の最後の思い出にな

安宅キャプテンは遠藤が転校して、高校野球を続けることは不可能だと思っているらしい

確かに県内の近隣の学校は、みんなお断りだろうし