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ほらお姫様のお戻りだお出迎えしてやんな

竹柴キャプテンが、オレの背中をドンと叩く

オレも走って、メグを迎えに行く

あのねっ、ヨシくんっみんな優しくしてくれたのっキャプテンも、他の子も、みんなあたしのこと

本当は白坂創介の隠し子であるメグ

誰にも言わないが内心では、色々な思いがあるのだろう

白坂創介への憎しみ白坂を破滅させてやりたいという思いがあるのと同時に

白坂の娘として自分も世間から罰せられるという恐れがずっとあったのだろう

だからオレへの依存が高まっていた

メグにとっての心の避難場所として

良かったなみんな、いい人たちで

うんみんないい人だよぉいい人たちで良かったよぉぉ

メグはオレの胸の中で、涙を零す

女子陸上部がメグをいつも通りに受け入れてくれたことが、本当に嬉しいのだろう

これから教室へ行って、授業を受けなければならない

クラスの連中は

メグをどう受けとめるのか

今は判らない

子供の頃に相手が話している時は、ちゃんと相手の眼を見なさいという小学校教師の言うことを真に受けたからでしょうか

私は、本当に話をしている相手の眼を見る癖があります

そしてそういう会話をしていると

どういうわけか、昔から、私には色んな人が話し掛けてきます

それもことごとくそんなに私とは仲良くない人ばかりです

私は基本的に人畜無害で、集団の中では居るのか居ないのか判らない空気みたいな存在感の人間です

また、セックス・アピールという物が、これっきしも無いらしいです

だから周囲の人からすれば話しやすい相手なんでしょうか

その人の仕事上の人間関係の問題を、延々と聞かされたり

私の知らない無関係な、職場のトラブルについて話し続けられたり

その人の将来の夢とかを、延々と語られたり

あとどういうわけか、女性から高校時代から現在に至るまでの全ての恋愛遍歴を延々と語られたことが2回あります

もちろん、二人とも別の女性で私に好意を持っているわけではありません

なのになぜか、私に語るのです

語られると、聞かないといけませんからこっちは、真剣に聞きます

そんなわけのわからないことが何度もあります

そして話をした人は、その後、私と疎遠になっていきます

何で、オレあんなやつに、会社の愚痴とか喋っちゃったんだろうとか

あんなやつに、自分の夢を話しちゃって恥ずかしいなあとか

どうして、あんな人に色んなことを話しちゃったんだろうあの人、よそで喋らないかしらとか

みなさん私に話した後、後悔するみたいです

なのでみんな、私から離れていきます疎遠になります

そういうものみたいです

いつも私の中に彼らの物語だけが残って彼ら自身はいなくなります

私が、文章を書くようになってからは

作品になりそうな話があるんだけど、聞いてくれない

という人が何人も現れました

その話というのは、ほぼ百パーセント、その人の個人的な体験談です

でも、それは

私の作品としては、書けないんです

あくまでもその人の体験した物語なのですから

書きようがないんです

結局私は、その人の物語家族の問題や、恋愛での葛藤、病気や死にまつわるものまで重いプライバシーの話を延々と聞かされることになります

話が終わった後だいたいの人は、満足した顔をしています

そして、言うのです

今の話次の作品の参考にしてくれていいからねっ

でもね参考には、ならないんです

作品には使えないしそれらは、私が使ってはいけない物語なんです

もし、その人の物語を私が書くのならその物語に登場する全員にインタヴューしないといけないんです

複数の視点からの意見を集めて、客観的に判断して

そうして彼らの物語ではない、別の物語に再構成しなければ

人様にお見せしていい作品にはならないからです

ある人の個人的な涙をその意味と価値を他の人が、本人と同じ重さで認めてくれるかどうかは判らないのですから

結局私の中に、重い話だけが残って

たくさんの疎遠になった人たちがいます

さて私が、ここまで何でこんなことを書いたかと言うと

ノクターンには、感想欄の他に作者とダイレクトにメールを送ることのできるメッセージ・ボックスという機能があります

私のメッセージ・ボックスに長文のお手紙を送って来るのは、ご遠慮下さい

連続で幾つもメールを次々に送ってくるのは、やめて下さい

特に個人的な思い出話とか

近況とか悩みとか送っていただいても困ります

何通も連続で送って来られても、困ります

今までの人生で大変だったこととか書かれても、困ります

読むのも大変ですし何を返信したらいいのか、全然判りません

私はプロの作家でも、悩み相談の人でもありません

ただの一般人です

自分の書いた物を、ただ投稿しているだけです

文通相手は、募集していませんしそういうことをする気はありません

そんな時間もありません

ついでに書くと作品の間違いや矛盾点などを指摘して下さるのは大変有り難いのですが

もっと、こうしたら面白くなるぞとか私なら、こうするとかは

そういう作品の展開に関わるようなことは、送って来ないで下さい長文で

そういうアドバイスは、迷惑です

好きに書かせて下さい私の作品です

お願いしますお願いしますマジでお願いします

ということなのでメッセージ・ボックスに届いた私的なメールに関しては、今後は基本的にお返事しないと思います

ご了承下さい

199.クラスの人たち

あたし弱いよね

メグがうつむいて、そう言った

二人で校舎へ向かっている途上

他の女子陸上部員の一年生たちは、気を遣ってくれてオレたちとは距離を取ってくれている

ついこの間まであたしは、白坂さんに命令されるまま、娼婦にさせられるって思っていたのに学校だって、もう何日も通えないって諦めていたのに

白坂創介は黒い森を離れて、自分の売春組織を立ち上げようとしていた

そしてメグをその組織の娼婦にしようと企んでいた

ゴールデンウィークが終わればメグは山峰家から連れ去られるはずだったんだ

なのにヨシくんと出会って、御名穂さんにも再会できて幸せな気持ちになったら、すっかり気持ちが緩んじゃってたダメだよね、あたし

自分でも判っているのあたし、ヨシくんに頼りすぎているってヨシくんが側に居てくれるから今だって教室に向かえる本当は心臓がドキドキしているの

教室のみんなはメグが雪乃の親戚だと知っている

白坂創介の血縁だと