この上まだあたしに何かさせるつもり
さあどうしましょうかね
ミナホ姉さんは、素っ気なく答えた
校長室に戻ると
マルゴさんとミッチィが居た
ミッチィは赤くて太いムチを持っていた
そのムチなら鋼球と同じ感覚で使えると思うんだよ工藤さんなら
ミッチィが、赤いムチを軽く振る
それでも、ムチの先端はシュッと、鋭く空気を裂いた
特殊な強化ゴムでできているからね、それ熟練者が本気で使えば、先端のスピードは音速を超えるよ
マ、マジかよ
そんなムチでブッ叩かれたら肌は裂ける骨だって、折れるかも
鋼球よりは、攻撃範囲が狭まるけれど鋼球だと、一撃を放った後に二撃目の攻撃に移るまでの時間が掛かりすぎるよねムチなら、そんなことは無いから半径2.5メートルの範囲なら、どこでもすぐに攻撃できるその空間を、君の絶対制圧圏にするんだ
ミッチィが、ムチを打ち込むッ
右に左に
シュバッ、シュバッとムチの先端が床を叩く
校長室の有の絨毯から、もわっ、もわっとホコリが飛び散る
これなら、いける
手応えに自信があるらしい
ミッチィがフッと微笑む
ムチの弱点は、知っているね絶対に奪われないこと相手にムチを掴まれないように、先端は常に動かしているか相手の手の届かない位置に置くこと敵に掴まれて引っ張り合いになったら、小柄な工藤さんの方が不利だからね
はい師匠
いつの間にか
マルゴさんは、ミッチィの師匠にランク・アップしている
この武器、気に入りましたお預かりします
ミッチィは、満面の笑みでムチを握りしめる
そのムチは、工藤さんにあげるよ
本当ですか師匠
うんあたしよりも、工藤さん向きの武器だと思うしそう思って、倉庫から出して来たんだ
ミッチィは、眼を輝かせてムチを見る
レッドビュート、レッドビュートと名付けます
ミッチィは嬉しそうに言った
マルゴさんは、ミッチィに
じゃあ、自分で色々と試して鞭の感触に慣れておいてここよりも、地下通路の向こうの隠しガレージの方が広いから、そっちで練習しようこの部屋は、ミナホたちが使うみたいだし
先に行ってて、あたしはミナホと話をしたらすぐに追い掛けるから
ミッチィは、下の階への隠しドアを開くと嬉しそうに、オレを見た
レッドビュート、確実に使えるようにしておきますからっ
あ、ああ頑張って
オレには、そんなことしか言えない
それからミッチィは、ミナホ姉さんに礼儀正しく一礼して、雪乃には憎しみの眼で一瞥して監視室へ下りて行った
現在までのところは異常なし工藤さんのお父さんたちも警戒してくれているしね
マルゴさんがミナホ姉さんに報告する
香月様の挑戦状が効いているんでしょ夜までは、襲ってこないと思うわ
挑戦状って
オレの質問に、マルゴさんは
ほら、ホテル一棟丸ごと使って、ヴァイオラを待ち構えるってやつだよ
シザーリオ・ヴァイオラ本人は寧に対するこだわりだけで来日しているけれど、他のメンバーは違うわ
特にヴァイオラの殺し屋集団のマネージャーのロレンザッチョ・バンディーニはねせっかく日本まで来たんだ金になる仕事と自分たちの能力の宣伝をしたいって考えているわよ
香月閣下は、その標的としてはベストだよね
みすずのお祖父さんぐらいの大物なら敵も多い
せっかくの機会だからそういう人と契約して、香月さんを暗殺して大金を稼ぐ
また、そのことで日本の裏社会に自分たちの能力を誇示したいんだ
そういう流れになるように香月様が、ご自分から動いて下さったのよ
ま、閣下は楽しんでいるよねヴァイオラの標的になることを
だから少なくとも、学校に居る間はヴァイオラの襲撃は無いと思うわ
百パーセント安全てことは無いけれどミスター・ヴァイオラだって、下手なことをして戦力を失いたくないだろうし
少数の精鋭しか連れてきていないんですから
シザーリオ・ヴァイオラは、閣下のお膳立てしたゲームに喜んで乗ってくるよそういう性格の男だからね
だから心配事は、なるべく今のうちに処理しておいた方がいい
マルゴさんがオレに言う
工藤さんのガス抜きはあたしがしておいてあげるから
ガス抜き
あの子は、みすずさんに言われてあたしたちと合流しているだけで黒い森のメンバーでは無いだろだから、一晩、見知らぬ集団と一緒に居てちょっと、ストレスが溜まっているんだよ
だから朝、吉田くんに強く当たったのよ
ていうかあの子も大分、吉田くんに依存し始めているよね
あの子吉田くんにみすず様だけを選べみたいなことを言っていたけれど心の中は違うよね
ええ正確には、みすず様と自分を選んでってことなんでしょうね
元がみすずさんLOVE一筋のレズっ子だから
男の子に全然関心の無かったレズッ子が吉田くんのことが、気になってしょうがなくなっているってことだよ
さっきも吉田くんを意識して、ムチを振り回していたわよね
うん可愛かったよね
まとにかく、少し運動させて気を紛らわせてあげることにするよそれにあのムチは使えるよヴァイオラとの対決には、工藤さんの力も必要になるし
そうね護衛に徹して貰うにしても、鋼球よりもムチの方がいいわね
彼女の思い通りに使えるように指導しておくよ
頼むわマルゴ
警戒監視は、克子さんと寧でやっているけど
寧一人では無理かしら
大丈夫だと思うよセンサーに何かが引っ掛かったら、アラームで知らせてくれることになっているし
じゃあ克子にここへ来るように伝えてくれる
マルゴさんも隠しドアへ向かう
ふと、立ち止まって
吉田くん、頑張ってね
マルゴさんは、オレにそんなことを言った
君が正しい選択をすることを祈っているよ
とにかく、そう返事をした
マルゴさんが隠しドアの向こうに消えるとすぐに、入れ替わりで克子姉が上がって来た
お呼びですか、お嬢様
ええ克子、雪乃さんの背中の機械を外してあげて
背中に貼られた遠隔操作の電撃ユニットか
はいかしこまりました
克子姉が、雪乃の方へ行く
そうね隣の部屋を使ってちょうだいここであたし、吉田くんに内密の話をするから
隣の部屋
校長室の隣は緊急事態が起きたときの放送室になっているのよ
確かに、壁に小さなドアがある
外の廊下かからも入れるけれど校長室からも直接入れるようになっているのよ
じゃあ、雪乃様参りましょうか
克子姉の言葉に、雪乃は
不安な表情をしている
ずっとそのままスタンガンを貼り付けにしておいた方がいいのかしら
ミナホ姉さんが冷たくそう言った