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雪乃が再び、ゆっくりと、校舎を見る

窓という窓から好奇と侮蔑の視線が、雪乃に降り注いでいる

あたし自分が愚かだということを否定しないわ

校舎を見上げてそう呟く

でもいいのこれであたしは、あたしだもの

あたしは何一つ間違っていないわよあたしは悪くないあたしは、ズル賢いあんたたちに騙されただけだもの

そして雪乃は、校舎に向かって大きく手を振る

胸を張って堂々と

という声が校舎中から轟いた

今の白坂雪乃は学校一のヒロインだ

全ての生徒が雪乃がレイプされる場面を

いや、淫蕩なセックスに耽る場面を見ている

ここには、雪乃を知らない人間は一人もいない

あたし、一生忘れないわこの光景をこの口惜しさを

口惜しいのか、雪乃

オレは思わず、そう尋ねた

当たり前じゃない騙されて、こんな酷い目に遭っているのよ口惜しいわよあんたたち、絶対に許さないからね

口惜しいだけなのかよ

どういう意味

雪乃が、チラッとオレを見る

いや

雪乃には言わない方がいいんだろうな

こんな状況に陥って口惜しいだけで恥ずかしいとは思わないんだ

人間として一番他人に見られたくない姿を全校生徒に見られたというのに

雪乃はそれを恥ずかしいとは、感じていない

お前本当に、自分中心にしてしか世界を見ていないんだな

正直ここまでくると凄いと思う

当たり前じゃないあたしの人生よあたしは、あたしのために生きているんだから

結局、この娘はこんな立場になってもなお、人々を見下している

自分は特別で高い場所に君臨していると信じている

だから、屈辱的な体験に口惜しさと憎しみは感じても

それを恥ずかしいことだとは、感じないらしい

肥大しすぎたプライドと、他者への無神経さが白坂家の特権階級意識の中で成長したことが雪乃を、こんな恥知らずな女に仕立て上げてしまった

あたし絶対に許さないからねあんたたちのこと

雪乃が校舎の窓に向かって手を振りながら、オレたちに言った

忘れない忘れるもんですかあんたたちのことは、死んでも許さないから

このメンタルの強さ傲慢さ

これこそが白坂雪乃

許さないのはいいけれどどうするつもり

ミナホ姉さんが、ニッと笑って雪乃に言った

別にどうもしないわよあたしの頭じゃ、あんたには勝てないことはよく判ったからだから、今はこの口惜しさを心に刻みつけておくわそれしか、今のあたしにはできないんだから

雪乃は潤んだ瞳でそう答えた

この学校へは、もう居られないわね別にいいわあたしは、どうせ転校するんだからどこでもいいわよいっそ、日本を離れてアメリカの学校にでも行こうかしらそうね市川のお祖父様に、そうお願いするわ

雪乃がそう言って、微笑む

あんたたちのいない場所なら、どこでもいいのよ

あんたたちのいない場所へ行って、あたしはあたしの人生をやり直すのよ恋だってもう一度、恋だってするあんたたちのいない場所で、あたしは幸せになるのよ絶対に幸せになってみせるわそれが、あたしのあんたたちに対する復讐よ

雪乃はまた、自分に都合の良い夢を語る

弓槻御名穂は、そんなことを許すほど甘い女では無い

あら、雪乃さん逃がさないわよ

雪乃が凍り付く

あなたはずっとこの学校に居るのよ卒業までね学校中の生徒に、淫乱な変態女と罵られて、これから悲惨な毎日を過ごすの妊娠して、お腹がどんどん大きくなる姿もみんなに見て貰いましょうねそれから、出産も公開しましょうかあなたは、全校生徒が見守る前で赤ちゃんを産むのよ

ミナホ姉さんはいつも通りの冷たい目をしていた

全て平常通り

つまりミナホ姉さんは、本気だ

あなたみたいに、メンタルの強い子は相手にしていて本当に楽しいわ大抵のことでは、心が壊れないから

雪乃の背筋が、ブルッと震える

もっともっと、あたしに反抗して徹底的に、ブッ潰してあげるから楽しみだわ

大丈夫よあなたが気が狂わないギリギリのところをちゃんと見極めるから壊してしまったら、面白くないもの三年間、思いっきり遊びましょうね

雪乃が絶望する

ほらお迎えが来たわよ

ミナホ姉さんが校舎裏から走って来る、一台の車を見る

それは黒いベンツだった

車内にいるのは

マルゴさんと寧さん

どうして、寧さんがここに

シザーリオ・ヴァイオラの偵察員に見つかったら、どうするつもりなんだ

ガラス窓越しに、寧さんがオレに手を振っている

ベンツは砂煙を上げながらグラウンドを突っ切り、オレたちの前で停まった

ガチャリとドアを開けて

マルゴさんと寧さんが出てくる

二人とも黒い森の黒い革ジャンを着ていた

夜の街で、ヤクザや不良をブチのめす時の格好だ

いや寧さんは、いつもスカートなのに

今は、ぴったりとした革のズボンを履いている

足はブーツ

髪は、後ろでまとめて帽子を被っている

まるで男の子のような格好をしていた

白坂雪乃ってのは、あんたかいっ

野次馬や校舎の生徒たちに聞こえるような大きな声でマルゴさんが叫んだ

マルゴさんは、サングラスをしている

長身で金髪体格の良いマルゴさんは、遠目にはヤクザにしか見えない

あたしたちは関西タテジマ連合のカネモト組長の依頼で、あんたを連れにやって来たんだあんたの親父が、カネモト会長に多額の借金をしているってことは知っているねっ

マルゴさんの言葉に、生徒たちが動揺する

そういえば、テレビでそんな話が出ていたよな

白坂創介が、ヤクザと繋がっているって話し、本当だったんだ

ヤクザに金を借りて、豪遊してたって話だよな

その金が返せなくて、オーストラリアに逃げたんだろ

いや、オレがネットで聞いた噂だと、ヤクザの金を持ち逃げしたんじゃなかったっけ

ともかく白坂創介とヤクザ組織の関係は、すっかり世間に知れ渡っているらしい

あんたには、これからその身体で、親父の作った借金を返済して貰う白坂雪乃は、高校生売春婦になるんだっ

マルゴさんの言葉に野次馬たちが湧く

高校生売春婦だってよ

マジかよ

オレとかでも金を出せばヤらしてくれるのかな

そんな野次馬たちにマルゴさんは

こいつは金持ちのヒヒ親父専門に稼いで貰うんだよっ高校生なんかには、安売りしないからねっ

マルゴさんは、ツカツカと雪乃の前に行き

雪乃の纏っていたバスタオルをいきなり、剥ぎ取る

遠藤にビリビリにされた白ブラウスの残骸も力任せに引き剥がした

雪乃の裸の上半身が、人々の前に晒される

マルゴさんは、雪乃の背中をグッと強く押さえ込んだ