そこへ寧さんが、ススッとやって来て
はい、ペッタン
雪乃の裸の背中に、大きな札を貼り付けた
札に書かれている文字は
差し押さえ品
いいかい、この娘は借金の形なんだお前ら、勝手に手出しすんじゃないよあたしたちに内緒で、この娘に手を出したやつは全員ブチのめすからねっそいつだけじゃないそいつの家族から、友人まで含めて、ことこどく追い込むからねっ
マルゴさんが生徒たちを恫喝する
体育教師の山口がやって来る
お前、今年卒業生した留学生だろそっちは、2年の奈島かお前、いったい、どういうつもりなんだあん
山口は学生時代に、柔道で全国大会のベスト4まで行ったという話で校内では不良たちも一目置いている
がっちりとした巨体で一応、校内一の猛者ということになっている
おっそう言えば、そうだ
あの不良の先輩たちだよな
馬鹿、あの二人は不良なんてレベルを超えてるよ
極悪だよな
街でチンピラ狩りやっているって噂だろ
オレ、見たことがあるよ本物のヤクザをボコッてた
さすがマルゴさんと寧さんのコンビの悪評は、知れ渡っている
相変わらずウザったい先生だね
マルゴさんが、拳を握って山口の前へ進む
おいお前
山口が反応した時にはすでに終わっていた
シャッ
山口の大きな身体が、くるんと宙を舞いドカッっと地面に落下した
ぐぇぇぇ
たった一撃で巨体の体育教師が、ブッ飛ばされ、失神したという現実に
辺りはシーンとなる
あたしはね裏の社会に就職したんだよ
マルゴさんが、フッと笑った
他にも裏の社会の人間とケンカしたいやつはいるかいっ
誰も返事はしない
それなら白坂雪乃は貰って行くよ文句は無いね
あるはずが無い
今日からこの娘はあたしたちの差し押さえ品だこいつに関わる人間に、命の保証はしなからね
ほら、車に乗りなっ
寧さんが半裸の雪乃をベンツの後部座席に押し込む
そのまま、自分も車の中に乗り込み
そういうことだから白坂雪乃は、アンタッチャブルってことで
そして、ベンツは再び走り出す
教職員用の駐車場から、雪乃さんは回収するから安心して
ミナホ姉さんが、オレにそう囁いた
いいの秘密ガレージを使って寧さんも表に出しちゃったし
オレがそう尋ねると、ミナホ姉さんは
そろそろ、また潮目が変わってきているのよ
潮目
閉じ籠もっているだけでは、後手後手になるだけよそろそろ、違う対応をしないとヴァイオラにつけ込まれるわ
ミナホ姉さんには、考えがあるらしい
それなら信じて任せるしかない
一度、恵美と教室に戻りなさいあたしは、職員会議を取り仕切るからこのまま午前中だけで授業は終わりにするから
ミナホ姉さんは、そう言うと一人で校舎に戻って行った
オレは、もう一度校舎を見上げる
まだ、窓にはたくさんの生徒たちが集っていた
みんな走り去るベンツの方を見ている
雪乃は今、あそこに居る
行こう、ヨシくん
メグがオレに手を差し出す
ふたりで校舎へ向かって、歩き出した
色々ごめん
何か言葉が思い付かない
あたしこそあたしって、ダメだよね
御名穂さんは本当にヨシくんのこと、よく判っているじゃないううん、ミナホさんだけでなくて克子姉さんも、マルゴさんも、ヨシくんのこと判っている判っているから、落ち着いて見守っていてくれるじゃない
余裕の無い自分に自信が無いらしい
そりゃそうさみんな、オレより頭が良いしオレは単純な男だもの
オレが、どんな風に行動するかなんてみんな、お見通しなんだよお姉さんたちにはさ
うん、そうだねヨシくんが、雪乃が遠藤くんに叩かれているのを見逃せないなんてこと、判っていなければいけないことだったよね
メグは悲しそうにそう言う
あたしヨシくんが、あたしの望むように行動して欲しいって思ってた甘えてた傲慢だったと思うヨシくんは、ヨシくんだものいつだって、ヨシくんらしい行動しかしないだから好きになったのに馬鹿みたいよね、あたし
でもメグは、メグなりにオレのことを考えてくれていたんだろだったら、しょうがないじゃないか
あたしはあたしの考えていたことなんて、結局、自分のことばっかりだったのよ
そうかなメグが悩んでいたことって、全部オレとメグのことだろメグはずっとオレと一緒にいたいって思ってくれているからだから、だろ
いいんだよ間違っていたと思ったら、直せばいいんだしずっと一緒に居るんだから時間を掛けて、少しずつ判り合っていけばいいんだよ
あたしヨシくんの隣に居て、いいんだよね
メグはそれでもなお、心配そうにそう言った
いいとか悪いとかじゃないんだよ居ろよ
オレはあえて命令形で答えた
メグは、ずっとオレと生きていくんだメグが居ないと、オレは困る寂しいメグが必要だだから、オレの側にずっといろ
オレはメグを抱き寄せた
メグもオレに寄り添う
メグは、嬉しそうに答えた
やっぱり、これが正しい答えか
人それぞれ付き合い方が違うんだな
メグはオレとの恋愛では、自分に自信が無い
だから、すぐに悩み出す
オレとの間に何の問題も無いのに一人で不安になって、落ち込んでいく
その結果が早朝のセックス中毒症状だったり
雪乃への過度の恐怖心になっている
だったらオレの方が少し強気で、メグを引っ張っていかないと
メグが迷ったり、落ち込みそうになったらオレが、力尽くで引っ張り上げるしかない
多少命令口調になってもいい
メグとはそういう付き合い方をしよう
ヨシくん、何を考えているの
メグがオレの顔を覗き込む
雪乃のこと
オレは靴箱の影に、メグを引っ張り込んで無理矢理キスする
メグと一緒にいるんだメグのことしか考えていないよ
嘘でも、嬉しい
オレは、メグのお尻をキュッと揉む
嘘じゃないキスしてくれ、メグ
メグの方からキスして欲しいんだ
もう一度、唇を交わすオレたち
すごく嬉しいよ、ヨシくん
ヨシくんがあたしを求めてくれたから
ギュッと抱き締め合うオレたち
馬鹿だないつもは、オレが欲しくなる前にメグの方から迫って来過ぎなんだよ
そうだねここのところ、あたしの方からヨシくんに寄って来過ぎだったよね
オレだってメグが欲しくなれば、いつだってどこだって求めるさ
うんいつでもいいわ欲しくなったら言ってね
しばらくオレたちは靴箱の影に隠れて
抱き合って、キスを重ねた
さて、教室に戻ると大騒ぎになっていた
授業は自習
先生たちは、緊急の職員会議になっていた