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と、運転席の弓槻先生が説明してくれたが

イ、インディアン

どうかした吉田くん

あのインディアンて言葉、使っていいのかなって

マルゴさんの顔が、ピクッと動く

何だ、お前、インディアンをバカにする気かッ

こ、怖ぇぇぇーっ

いやあの今は、ネイティブ・アメリカンとか呼ばないといけないんじゃないですか

そんなようなことを、習った覚えがあるのですが

ああそれは日本の出版社が一時期、勝手にやってたキャンペーンよアメリカじゃ、今でもインディアンはインディアンよっ

弓槻先生が運転席から助け船を出してくれた

そうなんですかオレ、知らなくてあっ、別にインディアンを馬鹿にしたりはしてませんからっあの

オレのビビッた様子に、マルゴさんはクックと笑い出す

初めましてマルゴって呼んでくれ

マルゴさんがオレに手を差し出してくる

吉田です

握手してみて判った

すげぇ分厚い手拳のところが硬くゴツゴツ盛り上がっている

これ普段から何かを殴り慣れてるってことだろ

吉田くん、マルゴは武闘派だから変なことして怒らせたら、大変なことになるからね

いや見れば判ります

そんなことないから、マルちゃんとっても優しいよっいつもあたしのこと抱っこして寝てくれるんだからっ

って、マルゴさんに抱きつく奈島センパイ

ど、どんな関係なんだこの三人

奈島センパイが金髪に染めて、青いコンタクトを入れてるのはもしかして、マルゴさんに合わせている

では行きましょう、吉田くんは後ろの座席に座って

言われるままに、席に着く

どこへ行くつもりなんだろう

弓槻先生は車を走らせる

車は学校から大通りへ私鉄の駅の方へ向かって、走っていく

車中では、奈島センパイだけが明るくペチャクチャと話している

マーゴさんと先生が、たまに相づちをついてオレは黙ったまま

やがて車は、私鉄の駅のロータリーに着いた

ここはそんなに大きな駅ではないから、そんなに賑わってはいない

ドーナツ屋とコンビニがやっているだけで、他の店は全部閉まっている

もう十一時近いから、電車が着かない限りほとんど人も通らない

そんな中に一台のワゴン車が停まっていた

見るからに不良の車

メタリック・パープルという頭の悪そうな色に塗り替えられてる

後ろのドアを開けて、車内からでっかいスピーカーでズンチャカとヒップホップ風の音楽を垂れ流している

車の周りには大学生くらいの男が四、五人とケバイ顔の女が二人たむろっている

あっコンビニから何か買って出てくるのは、うちのクラスの小林と大宮じゃないか

センパイッビールと摘み、買ってきましたっ

おっ、寄越せっみんなにも配れよっ

何で、あいつらこんなとこでパシリやってるんだ

地元の不良グループの集まりとかなのか

あーあ、駅前で酒盛り始めちゃったよ

地べたにみんなして座り込んで

標的は、あの車よ

運転席から、先生が命ずる

ドアを開けて、マルゴさんがスッと外に出る

んじゃ、吉田ちゃん、あたしも行って来るねっ

っと奈島センパイ

えっどこへ

センパイは、ニコッと微笑んで言った

んふふっあたし、おとりだからっ

マルゴさんとは違い、奈島センパイは大きくドアをガチャっと開けて外に出る

そのまままっすぐに、不良の車の方へ

黒い革ジャンを着た、金髪のミニスカートの美少女

するするするーっと、地べたにたむろっている不良たちの前へ

何よっ、あんたっ

最初に奈島センパイに声を掛けたのは、ケバイ不良女の一人だった

ねえねえ、この辺にトイレないかなっ

奈島センパイは、いつものニコやかさで女に尋ねる

そこのコンビニですりゃいいじゃんかそれより、一緒に飲まねぇか

デブッた不良大学生がジッポーでタバコに火をつけながら、じろじろと奈島センパイを視姦している

うん遠くから見ても、いい女だもんなあ

克子さんの方が、プロポーションはいいけれど逆に凄すぎて引く

その点、奈島センパイの身体は、親しみを感じるナイス・バディだし

やめてよ、そんな女

いいじゃんか、すっげぇ美人だぜっ

不良たちが奈島センパイに注目する

すると

もうガマンできないやっここでするぅぅ

奈島センパイは、水玉のミニスカートをまくり上げたッ

ぱぱぱ、パンティを履いていないッッ

そのまま奈島センパイは、放尿したッ

座り込んでる不良たちに向かって

シャーっと勢いよくおしっこが、奈島センパイの股間から吹き出すっ

てめぇぇ、何しやがるッッ

おしっこを引っかけられた不良の一人が立ち上がった瞬間

シュルルルンと物影から、マルゴさんが飛び出したッッ

シャッシュッ、シュッ、シュッ、シュッハァッ

蹴るッッ

殴るッッ

打つッッ

投げるッッ

グァッギッヒィィアアッゴォアッギョエッ

不良たちが男も女も声を上げる間もなく、あっという間に倒される

マルゴがスゴイのはね一撃で相手の行動力を奪いながら、絶対に失神させないってことなの誰にやられたのか、どれだけ痛くて苦しい思いをしたのかを、ハッキリ記憶させるためにね

倒れた不良たちは気管を強く打たれたのか、喉や胸を押さえてのたうち廻っている

これでは悲鳴も上げられない

あーあ、小林と大宮も引っ繰り返ってる

じゃ、吉田くん、これ被って行ってきて

弓槻先生が、オレに黒い物を差し出して来る

何ですか、これ

広げてみると覆面レスラーの被るマスクだった

完全な真っ黒のマスク

額に赤い字で吉と書いてある

それを被ったら、これを持ってマルゴと寧に渡して来て

それは、ビール瓶が2本

それから半分の長さにブッた切ったゴルフのクラブが2本

ビニールテープをぐるぐる巻きにして、持ち手を作っている

これって

オレが尋ねると、先生は

ぶん殴り棒よ

ぶん殴るのに使うから、ぶん殴り棒

早く行きなさいあんまり待たせるとマルゴがキレちゃうわよっ

先生は、ニタァと微笑んだ

吉田くんも、正式に犯罪者デビューしましょうねっ

オレは、急いでマスクを被って、ビール瓶とぶん殴り棒を抱えて車から走り出るッ

おーおー、来た来たっこっちだよーんっ

やっとおしっこを出し終わった奈島センパイが、オレに声を掛ける

遅いぞっ

すいませんっ

謝りながら、マルゴさんにぶん殴り棒を手渡す

マルゴさんは棒を手にすると、いきなり不良の車のフロントガラスを叩き割ったッッ