そういう眼で、オレに迫ってくるッ
みんな、そろそろ奈島センパイのハイテンションに付いていけなくなってるみたいで
一昨日は一日、授業サボったし
昨日も午後の授業出てないし
オレも、不良街道まっしぐらだな
吉田ちゃん、克っつんからおやつ貰って来たでしょそれ、持って来てねっ
カッツン
ああ、克子さんのことか
そうか、登校の時に貰ったあの紙包みは
ということは、オレが授業をサボってセンパイと一緒に屋上へ行くのは、最初っから弓槻先生の計画に入っているんだ
判りました行きましょうっ
オレはカバンから紙包みを取り出して、席を立つ
クラス全体がほぅと溜息を吐く
待って
オレに声を掛けて来たのはや、山峰さん
い、行ってはダメよ、吉田くんちゃんと、授業は受けないと
オレが、驚いて彼女に振り向くと
山峰さんは立ち上がって奈島センパイに深々と頭を下げた
奈島先輩、お願いです吉田くんは、このクラスの一員ですどうか、みんなと一緒に授業を受けさせてあげて下さいっ
先輩の顔が、ニッと微笑む
あたし人に指図されるのって、あんまり好きじゃないんだけどなぁっ
山峰さんは顔を上げて、奈島センパイを真っ直ぐに見るッ
吉田くんを悪いことに巻き込まないで下さいっ奈島先輩が困っている吉田くんを助けるために、わざわざこの教室まで来て下さったことは判ります本当は良い人なんだって思いますでも先輩と一緒に行ってしまったら、吉田くんまで不良生徒ということになってしまいますクラスのみんなから誤解されてしまうかもしれませんですから吉田くんを連れて行かないで下さいっ
この子、本当にいい人なんだ
山峰さんの言葉に奈島センパイの顔も優しく微笑む
微笑むというかつかつかと歩いて、そのままセンパイは山峰さんの前へ
いいねえ、君っ
センパイは、山峰さんの顎の下に手を入れて、クッと顔を持ち上げる
山峰さんは驚いてビクッとするがそのまま、センパイの好きにさせる
センパイは、右手で山峰さんの顎を持ったまま左右から顔を見る
じっくりと、眼や骨格や肌を観察して
いいっ実にいいっ
ええっと、山峰ちゃんだっけ下の名前は
め恵美です
山峰さんは、すっかり驚いてセンパイに触られるままになっている
恵美ちゃんか大変、気に入りましたっ
き、気に入ったぁ
センパイ、いったいどういうことです
性格もいい優しくて、勇気があるそこがいいっその上、顔もいいっっていうかこれ結構、掘り出し物かもマジにいいわっ君
あの、奈島さん
山峰さんの問いかけを無視して、センパイはオレに振り向くっ
吉田ちゃん、この子、磨いたらすっごい美人になるよっそこの白坂雪乃なんて、全然メじゃないっ化けるよ、この子はっあたしが根本から手を入れたら、とんでもないことになるよっ
は、はいっ
い、いきなり、何を言い出すのですか
とにかく顔の作りは完璧お化粧の仕方覚えて髪型を変えたら、どえらい美少女になるよっ背も高いし、身体もスレンダーだし、足も細いし胸がちょっと足らないけど、これは個性だッむしろ、無くていいっこういう、おっぱいは感度がいいって決まってるし
センパイは、どんどん暴走していく
ブレーキは無いのかこの人のブレーキッは
恵美ちゃんさあ、あたし、君にお願いがあるんだけどっ
山峰さんも、すっかり動転している
そうだよなあ急にこんな、徹底的に褒め殺されたら
君、吉田ちゃんと結婚しなさいっ
なななななななななな、何ですとぉぉぉぉぉぉッッ
ほらっ、吉田ちゃんも自分でお願いするっこんな美人で、優しくて、根性も決まってる子、なかなかいないよっ一生大切にするから、ずっとボクの側に居て下さいって言いなさいっっていうか、言いいやがれっ
な、奈島センパイ、ぬななななッ何を言うんです
わわわわっ山峰さん、真っ赤になっちゃってる
早く、ほら、土下座してっ
な、何がなんだかよく判らないけれど
とにかく、オレは土下座するッ
ごめんっ山峰さん、とにかくごめんッ
何かお詫びの言葉しか出て来ない
とにかく、申し訳なくって
ところが、奈島センパイは今度はクラスの連中に向かって
はいっ、クラスのみんな、よく聞いてっ注目ッ今日から、恵美ちゃんは吉田ちゃんのものだからねっ妻だからねっ正妻っ奥さんっだから絶対に他の男子は手を出しちゃダメだからねっ出したやつはブッ殺すッ
ぬなななっ、何を言っているんですかッ
わっ雪乃が見てるっ
すっげぇ眼でオレを睨んでるっ
違うッ
そうじゃなくって
うん、うんっ良かった、良かった恵美ちゃん、今度、遊ぼうっお化粧の仕方とか教えてあげるっそうだっ、君に似合いそうな洋服があるのっあたしの服で、恵美ちゃんが欲しいのがあったら全部あげるっあっ、そうだ、アクセサリーもあるんだ可愛い指輪があるんだけどあれは、吉田ちゃんが恵美ちゃんの指にはめてあげた方がいいねっうんうん、そうしょっねっ
ねっじゃないですってば
みんな、さっきとは違う意味で固まっちゃってるじゃないですかッ
山峰さん、顔を真っ赤にしたままおろおろしちゃって
すっかり、涙目で
まあ、確かに可愛いけど
センパイは、ニヒヒヒンと悪戯な笑顔でオレを見ている
酷いよ奈島センパイ
ちょっと、遊びが過ぎるよっ
でも恵美ちゃん、安心してねっあたしは、単に吉田ちゃんが弟みたいに可愛いだけだからっお姉ちゃん、恵美ちゃんから吉田ちゃんを取ったりしないからねっだから君たち二人は、ずーっとずーっと仲良くしていていいんだよっ
山峰さんの顔は真っ赤になりすぎてあっ、泣き出した
な泣かせちゃったよ、おい
どどどどうしよう
そうかっ、泣くほど嬉しいんだねっうんうんっじゃあ結婚が無事決まったところで、ろそろ屋上へ行こうか、弟の様に可愛い吉田ちゃんっ食べ物、忘れずにねっ
ほんと徹底して、楽しんでますねセンパイ
人が悪いというか
まあ、弓槻先生の周りの人は、みんなそうだけど
ごめん奈島センパイ、からかっているだけだからただの冗談だから
えーっ、あたしは本気だよっ君たちは結婚するのっもう、夫婦ッ
ちょっと、黙ってて下さいよぉっ
奈島センパイに、黙ってて下さいと言ったオレに、教室中からおおーっという歓声が上がる
そういうんじゃないっ
そういう関係じゃないからっ
と、とにかくオレがこのままここに居ると、クラスのみんなが勉強に集中できないと思うから今は、センパイと屋上に行くよ山峰さん何か、色々と気を遣ってくれたのに、申し訳ないんだけど