あたしが、あなたたちを犠牲にして生きるように、あなたたちもあたしを犠牲にして生きてゆきなさいって
あたしが罪も無い人々を喰らって生きていくように、あなたたちも他人を犠牲にして生きていきなさいあなたたちの罪は、あたしが許してあげるあたしの罪は、悪魔が許してくれるって
だからいいんだあたしは、あたしが耐えきれなくなったら罪も無い誰かを殴る殴りたいだけ殴ってそれでも生きるッ
あたしだってガマンできなくなったら、火を付けるよみんな燃やしちゃうでも、生きるっ生きてやるんだから
この二人の過去に何があったのか
多分、悲しくて、寂しくて、おぞましいことが、たくさんあったんだろう
心ない誰のせいで彼女たちは、こういう生き方を選ぶ以外道がなくなってしまったのだろう
それは、奈島センパイとマルゴさんだけじゃない
弓槻先生も、克子さんも、岩倉会長も
そして、オレも
オレはいつか、それぞれの人の物語を知るのだろうか
オレもこの人たちに、オレのことを話すのだろうか
今は、まだ判らない
吉田くん君は、あたしたちの同族だ君を七番目として受け入れる
あたしも吉田ちゃんのお姉ちゃんになってあげるよっ
それでもとにかく二人の先輩は、こんなオレを受け入れようとしてくれている
もし、君の性衝動が白坂雪乃だけでは間に合わなくなったら、いつでもあたしの身体を使ってくれどんな要求にも応えるよ
あっもちろん、お姉ちゃんの処女だって、いつでもあげるよっ何でもしてあげるからねっ
もし、他に君がレイプしたい女がいたら教えてくれあたしが、気絶させてでも連れてきてあげるからっ
もぉっ、マルちゃんたら暴力的なことをしなくても、あたしや弓槻先生がダマして連れてくるってば克っつんだっているんだし
その代わり、君もあたしたちに協力してくれっ
うんっあたしたちと一緒に、いっぱい悪いことをして欲しいの
罪も無い人たちを傷つけ、心を汚すあたしたちの心の闇を晴らすために
酷いことたくさんしようっきっと楽しいよっ
ああ、可能な限り一緒にいよう
仲間になってくれるよねっ
答えは、とっくに出ていた
オレはこの人たちの同族だ
自分の心の暗い喜びのために普通の人たちに、害をなすもの
よろしくお願いしますっ
奈島センパイの顔が喜びに包まれる
マルゴさんも、ニッと白い歯を見せた
オレと同じなんだ
こんなことが、ずっと続けられるとは思っていなくて
それでも可能な限り長く、自分の地獄の喜びを味わい続けようと
学校の校舎そのものを改造し
問題のある生徒を集め
そして自ら、トラブルを生み出し続ける
いいさオレも、そんな悪魔の一人になってやる
生まれて初めて仲間ができた
嬉しい
とても、嬉しい
彼女はこの先どうなってしまうんだろう
その後パンの残りを食べながら、奈島センパイとマルゴさんと話した
もう、怖い話はしなかった
過去の話も、心の闇の話もしなかった
ただ、たわいのない会話を続けた
仲間らしく
克子さんが、通信販売で買って失敗した料理器具の話とか
マルゴさんが、週に二回、子供たちに格闘技を教えている話とか
奈島センパイが、使っている化粧品のブランドの話とか
ヨッちゃんさそろそろ、その奈島センパイってのよそうよっ
えっじゃあ、何て呼んだらいいんです
お姉ちゃんって呼んで欲しいなっ
それは、ちょっと
何でよっ恥ずかしいっ
じゃあ、寧ちゃんでいい聞いた感じはお姉ちゃんと同じだからっ
そ、それもどうかと
嫌なのっ
そんなキーッという眼で見ないで下さい
寧さんじゃ、ダメですか
えーっ、何か堅苦しいっ
でも年上ですし、センパイですし
寧さん、ネイさん、ねいさん、ねえさん、姉さんまあ、そのうち進化していくでしょっ取りあえず、許可
寧はね、弟がいたんだよ
マルゴさんが、ぽつりと言った
いたってことは
死んじゃった、へへっ
ヤバイ
寧さんの眼に、くぅぅと涙が溜まる
ごめんこれは禁句だったよね
マルゴさんが急いで謝るけど
もぉマルちゃんのせいで思い出しちゃったじゃないっ
まずい
このままでは泣いてしまう
急いで、別の話に切り替えよう
そうだっ、オレマルゴさんのことはマルさんて呼んでもいいですかっ
マルゴさんの顔がピシッと強ばる
吉田くん次にそれ言ったら、君の金玉二つとも潰すからね
も申し訳ございませんでしたぁぁッッ
そんなことをしているうちに一時間目の終了を告げるチャイムが鳴った
ヨッちゃんどうするの次の時間は授業に出る
雪乃と遠藤と顔を合わせるのも、面倒だしなぁ
クラスの連中も、色々オレのことを噂しているだろうし
あたしは、そろそろお屋敷に帰るよ卒業生がずっと学校の中に居るわけにはいかないからね
マルゴさんは、そう言って立ち上がる
あたしは、まだここにいるつもりだけどフェラチオくらいならしてあげるよっ
ね寧さん
処女はさ、みんなが見ている前で失くしたいんだっ克っつんが写真撮ってくれると思うしヨッちゃんも欲しいでしょ、記念写真
そ、それは確かに
だから、フェラチオだけなら今してあげるあっ、でも、あたしフェラチオするの初めてだから、あんまり期待しないでねっ
初めてなんですかっ
うん人がやるのは散々見てきたから、一応のやり方は知ってるけどね
う、嘘っ
寧さんは、ぷっくりとした唇から赤い舌をペロっと出す
この舌が舐めてくれる
おいおい寧フェラチオする前に、ちゃんとキスも済ませておいた方がいいと思うよ
あっ、そうだあたし、ファースト・キスってまだだったっけ
寧さぁぁんっッ
と、思ったその時
突然、屋上の鉄のドアがバタンと開いた
中から現れたのは
はぁはぁと肩で息している山峰さん
吉田くん、まだここに居たのねっ
山峰さんは、パタパタとオレの前に走って来る
制服姿の寧さんはともかく私服で外人で顔に傷のあるマルゴさんに、ちょっと怯む
こんにちわあたしは去年の卒業生だよアメリカから来た留学生のマルゴ・スタークウェザーって誰かから聞いたことない
知っていますこんにちは、先輩
運動部員らしく、山峰さんはマルゴさんに礼儀正しく頭を下げる
うん、こんにちわ
マルゴさんも、山峰さんに礼を返す
でどうしたの、もうすぐ二時間目始まるでしょ