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と、オレが山峰さんに尋ねると

彼女はオレに、レポート用紙数枚の束を差し出した

こ、これ、一時間目の授業のノート吉田くんの分も取っておいたからっもし、判らないところがあったら、あたしに聞いてね

切れ長の瞳が、ニコッと笑顔を作る

本当にこの子はいい人だ

優しい人だ

奈島先輩、ご用がお済みでしたら、吉田くんを教室に返してあげて下さいお願いしますっ

彼女は、寧さんにも深く頭を下げてくれた

こんな、オレのために

解説回はひとまず終了です

今回、寧とマルゴがした話は、あくまでも二人の視点からの意見です

真実ばかりでは無いかもしれません

また、作者は彼らの生き方を肯定はしていません

よくエロゲのパッケージにある作品中の人物の言動を、推奨してはおりませんという一文と同じです

しかし、解説回は理詰めでくたびれました

34. 校長室へ

ホントに可愛いねっ、君

寧さんが、優しい眼で山峰さんを見る

あたし、可愛くなんかありません

顔を真っ赤にする、山峰さん

ねえねえ恵美ちゃんは知ってるヨッちゃんのお家のこと

寧さんな、何を言い出すんですッ

ヨッちゃんさ、この春休みにご両親が離婚して、お母さんが実家に帰っちゃったんだってお父さんも元々、ちょっと精神的に参ってたみたいで、入学式の日に失踪しちゃったまま行方不明なんだよっだから、今、ヨッちゃんは家で一人ぼっちなのっ

寧さん、何で知ってるの

弓槻先生が調べたその資料を読んだ

驚いた顔で、山峰さんがオレを見る

仕方が無い

オレは、小さく頷く

だからさあヨッちゃん、学校でいつも暗いでしょ恵美ちゃん、悪いんだけどヨッちゃんの友達になってあげてくれないっ仲良くしてあげてよっそんで、できればヨッちゃんと結婚してあげてっ

寧さんはそう言って、ニヒヒと笑った

山峰さんはジッとオレを見ている

結婚は無理ですけど

山峰さんは、俯いて言葉を続ける

あたしは、吉田くんとはもう友達のつもりですクラスメイトですから

ごめんね、あたし吉田くんが大変なこと全然気付いてあげられなくて

山峰さんは、オレに頭を下げた

その時、次の授業のチャイムが鳴る

いけない、戻らなきゃ

山峰さんが、オレに手を差し出し寧さんに行ってもいいですかという眼をする

寧さんは、

恵美ちゃん、先に教室に戻ってて一分だけちょうだいヨッちゃんと内緒の話がしたいからさっ

大丈夫、ヨッちゃんはちゃんと教室に返してあげるっお姉さんを信じなさいって

山峰さんは、心配そうにオレを見た

すぐに追い掛けるから心配しないで、寧さん、本当はとても優しい人だから

判った、先行くね次の時間の先生にも、吉田くんはトイレに寄っているだけで、すぐに戻りますって伝えておくね

ありがとう、頼むよ

山峰さんは、寧さんとマルゴさんにもう一度頭を下げると、パタパタと走って屋上から出ていった

そのしなやかな肉体の後ろ姿

健康的で、お日様の匂いのする肌

風に揺れる黒い髪

ヨッちゃんさ恵美ちゃんと、セックスしたい

したいでしょあの子と

お姉ちゃんがさせてあげるからねっ

寧さんの眼が妖しく光った

寧さん

うんあの子なら悪くないね

と、マルゴさんまで

ヨッちゃんさ君とあの子が、クラス委員だってこと、覚えているよねっ

そりゃあ弓槻先生が、最初に決めたことだから

高校一年生の一学期のクラス委員て、どんな風にして決まるか判ってるよね

そりゃあ

まだ、みんなお互いをよく知らないから

担任の先生が、入試の成績や中学の内申書を見て決めるんだろうけど

弓槻先生の前の担任は、彼女と別の男の子を委員にしていたんだよね

ええはい

そして、女の委員はそのまま彼女のままにして、男の委員は君に替えた

そうです

マルゴさんも、オレのことは何でも知っているんだ

弓槻先生という人はね、無駄なことは一つもしないんだ

うんっ、先生のやることは必ず意味があるっ

そうだよ山峰恵美は、候補者だ八番目の

最初っからねっ

あの子には、あたしたちと同じ歪みがある心の暗黒面が

結局、五分遅れで教室に戻った

日本史の男の教師には怒られたけれど山峰さんが、ホッとした顔でオレを出迎えてくれた

雪乃の方を見ると彼女は、オレを無視してそっぽを向く

遠藤が、こっちを睨んでいる

二時間目は、無事終了

休み時間になっても、クラスの中はいつものような騒がしさはない

みんなオレと遠藤に注目している

小声で何かを囁いている

冷たい眼で、雪乃を見ている

雪乃は黙って、ファッション誌を広げている

遠藤は野球部の友達と、わざと大きな声で馬鹿話をして笑っている

それが返って遠藤の小物っぷりを印象づけた

三時間目は、数学だった

定年間近の白髪の男性教師が、黒板に式を書いていく

その時事件は起こった

急に教室の戸がスルスルと開く

現れたのは、校長だった

うちの学校の校長は五十過ぎの太った背の低いオッサンで、外見はサッカーのマラドーナ監督に似ている

だが、校内での校長の仇名は昔からJBあるいはゲロッパということになっている

理由は、よくわからない

あ、先生ちょっといいですか

突然のゲロッパ校長の来訪に、教室内がざわめく

遠藤くん、吉田くん、白坂さんは手を上げて

ゲロッパが、挙手したオレたちを見る

君たち三人は、ちょっと校長室まで来て下さい

クラスメイトたちの注目を浴びながらオレたちは、ゲロッパ校長に連行されて行く

遠藤は、ムスッとしている

雪乃は、俯いて消沈している

全然緊張していなかったまるで他人事みたいに、映画の世界の中にいるような気分だ

どうせ、なるようにしかならない

最後に破滅するってことだけは判っているんだ

慌てることはない

そんな自分を冷静に観察してみるとなるほど、マルゴさんの言う通り、オレは壊れているに違いない

校長室は、校舎の中央の2階にあった

もちろん、訪れるのは初めてだ

ゲロッパ校長がドアを開け、オレたちを中に誘った

カーペット敷きの豪華な内装の部屋

そこに案の定あの人は居た

あら、遅かったわねぇ

先生は椅子に腰掛けて、塩せんべいをバリバリ食べながら、卓上のパソコンのモニターを見ている

校長先生の大きな机に置かれた大型のモニター

そこには屋上でオレを殴る遠藤の姿が映し出されていた

隠しカメラによる、一昨日と昨日の映像

映像のみで、音声は流れていない

雪乃はビクッと震えている