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遠藤は、チッと舌打ちをした

君たちも座りなさい

ゲロッパがオレたちに椅子を勧めてくれる

その辺から適当に持って来た、パイプ椅子だった

遠藤は、ハァッと大きな溜息を吐いて、行儀悪くドカッと椅子に座った

すでに臨戦体勢だ

雪乃は、わざとオレから遠い位置に椅子を置き直し、遠藤の隣にベッタリと座った

校長は自分の革張りの豪華な椅子へ

オレも遅れて椅子に着く

君たちを呼んだのはこの映像のことについてです

ゲロッパは、額の汗をハンカチで拭きながら話を切り出した

これは今朝、弓槻先生が私に提出してきたものですまだ、他の先生には観せていません私と弓槻先生だけです野球部の山崎先生や近藤監督にも話してはいません

遠藤の背筋が、スッと伸びる

まだ、最悪の状況では無いと知って、にわかに態度が変わる

とりあえず何があったのか、君たちの説明を聞きかせて下さい

校長の言葉に、遠藤が優等生モードで答える

ただのよくあるクラスメイト同士のトラブルですよッ意見の行き違いで、ちょっとした小突き合いになっただけですこんなの、大した問題じゃありませんよ

いけしゃあしゃあと、遠藤は話す

これは生徒同士の個人的な問題ですから、生徒同士で解決させて下さいッ!学校や先生方が立ち入るような必要は無いと思います

イジメとか、暴力行為ではないと言うのですね

ゲロッパが苦い表情で遠藤を見る

まあ、一般的に当事者の片方が一方的にイジメられたって喚き立てると、それだけでイジメ事件にでっち上げられてしまうのかもしれませんけれどでも、そういう事実ではありませんから何なら、裁判を起こして下さっても構いませんボクは、完全に潔白ですから

しかし映像を観る限り、君が一方的に彼を殴っているようにしか見えないですが

それはそういう風に、編集してあるんですよこの映像がどうして、わざわざそんな手間の掛かることをするのか判りませんけれど

遠藤が、ジロッと弓槻先生を見る

先生に無理矢理、罪を押しつけようというのだ

もちろん現実には、オレは一発も遠藤を殴っていない

確かにボクも彼を叩きましたが、彼もボクを叩いていますケンカ両成敗って言葉がありましたよねですから、この件は双方痛み分けで水に流した方がいいんじゃないでしょうか

勝手な提案をする遠藤

しかしそれは校長じゃなく、オレに言うべきことじゃないのか

あら吉田くんがあなたを殴ったなんて、初耳ね

先生が意地の悪い眼で遠藤を見る

事実ですから

突っぱねる、遠藤

何なら、証人を連れて来ましょうか野球部の鯉住先輩と杉山先輩に聞いてみて下さいこれはただの揉み合いで、一方的な暴力行為でないことは、先輩たちが証言してくれます

どうやら、あの時の二人の先輩には、金か何かで、すでに話をつけてあるらしい

ふぅん、嘘の証言で切り抜けようっていうの

弓槻先生が、楽しそうに微笑む

そっちこそこんな意図的に編集した映像でボクを陥れるつもりなんですねッ酷い何て酷い先生なんだッボク、弓槻先生のことは、父に話しますからね

遠藤の猿芝居が続く

そうやって、中学の時も切り抜けたわけ

遠藤の顔に衝撃が走るッ

あたし、調べたのよ遠藤くん、中学生の時の野球部でもイジメ事件を起こしているでしょう

あれはボクのことを妬んだチームメイトが無茶苦茶なことを訴えてきただけで、ボクに落ち度が無かったことは、ちゃんと証明されていますッ

証明はされていないわあなたが、お父様の弁護士に頼んで、学校と被害者の家族を説得したんでしょこんなこと、裁判したってロクなことにはならないマスコミの噂にでもなったら、学校と被害者の将来に傷が付きますよって、言って

嘘だッ校長先生、弓槻先生は明らかに嘘を吐いていますッ

必死に抗弁する、遠藤

雪乃はおろおろと二人の対決を見ている

ゲロッパ校長は、すっかり困惑している

あら、どこが嘘なのか説明してくれるあたしの方は、きちんと調査が終わっているんだけど

弓槻先生は遠藤に向かって、A4サイズの封筒を投げた

ドスンと遠藤の足下に落ちる封筒かなりの厚さの書類が入っているようだ

封筒の表には、中学校の名前がハッキリと印刷されていた

その学校名は、遠藤の出身校に違いない

チェッ、めんどくせえなッ

追い詰められた遠藤は、豹変する

すいませーん、うちの弁護士を呼んで下さいーっこっから先は、オレじゃなくて弁護士と話して貰えますか

足を崩し、横柄な態度で遠藤は、校長に迫る

言っておきますけど、あんまりゴタゴタすると学校のためにはなりませんからね校長先生は、この学校に何年ぐらい勤務なさってますぅ

校長に赴任して五年になります

じゃあ、知ってるでしょうオレの親父のこととかあっ、市会議員の遠藤栄三がオレの叔父ってことも当然ご存じですよねこの学校の理事もやっている

もちろん、知っています

なら判るでしょオレのことは特別扱いしておいた方がいいってことくらい校長先生ったって、理事会から雇われている身分ですからねあんたを首にすることなんて、簡単なんですからね

遠藤の恫喝

ホントはさ、オレ、こんな学校に入りたくはなかったんですよッでも、中学の時のその事件のせいで一応、オレはおとがめ無しになったんですけど、野球部の監督が頭の固いオッサンで、オレを野球の強い高校に推薦してくれなかったんですで、まぁ、叔父のツテでこの高校へ来たんです叔父だけでなく、遠藤家がこの学校にかなり寄付していることは知ってますよね判ってますよねあんまり、オレを怒らせない方が身のためだと思いますよ

そのままの勢いで、次に遠藤は弓槻先生に向かう

弓槻先生あんたは、ここから追放しますこの学校だけじゃないこの土地にいられないようにしてあげますから、覚悟してて下さいね遠藤家のコネを全部使って、先生に追い込みを掛けさせて貰いますからっうちの知り合い、表の人間ばかりじゃないですからカタギじゃない連中が、先生の廻りをうろつくことになると思いますんで、よろしくお願いしますッまあ、それで先生がどうなろうと、オレの知ったこっちゃないですけどねッ

うわぁ、半分はハッタリなんたろうけど、薄っぺらい

不良の口ゲンカかよっ

しかも言ってる内容はうちのパパはなぁって、小学生レベルだし

まあ、こんな脅しでも学生同士なら有効なんだろうけど

そう、楽しみにしているわっ

ほら、弓槻先生が楽しそうにしている

遠藤の宣戦布告に嬉しそうに笑ってるよ

あんたみたいな若い女、遠藤家の力ならどうにでもできるんだぜ

遠藤は、もう一発脅しをカマす