もっともあの人たちは、ホモだから谷沢チーフの様な人じゃ無い限り、男の上司の下には付かないわ女のわたくしの方が、良いみたいよ話も合うのよ美容用品とか、健康グッズとか、ブランドのセールのことで
あの熊だか鬼だかっていう体型の人たちが美容か
ということで今は、トップ・エリートでわたくしの下に付くのは嫌だって言う人たちを1人1人ブチのめしているのよわたくしの現場責任者就任の挨拶代わりにね
関さんは、大きく肩を回し膝を屈伸させる
戦闘前の準備体操か
しょうがないわよねなかなか、大変なんだけれど仕方無いわわたくしの能力に疑問を持っている人たちを、そのまま谷沢チーフの顔だけで配下にしてもそういう不満を抱えた人たちを残して置くと、大切な時に寝首をかかれることになるから結局、警護人の世界なんて、究極の実力主義だからねきっちりと格の違いを見せ付けておくのも、上に立つ人間の義務だわね
関さんちょっと、待って下さい
余裕のある表情で関さんは、麗華を見据える
わたくしは別に関さんが、社のトップに立たれることについて反対ではありませんわたくしは、すでに充分関さんの実力は、知っていますし
麗華と関さんはオレたちと一緒に、ホテルで闘っている
死地での関さんの働きぶりは、よく知っている
あら、そうかしらわたくしたち、まだ正面からぶつかって闘ってみたことは無いわよね
そんな必要は、無いではありませんかわたくしたちに、闘う理由など無いはずです
あなたになくてもわたくしにはあるのよ藤宮さんっ
関さんの言葉に室内はシンと静まり返る
今までは、同僚だったから大目に見ていたけれど今度は、上司と部下ですからねはっきり言うけれど谷沢チーフのあなたへの指導は、間違っていたと思うのよわたくしは、わたくしの考えであなたに教育的な指導をしないといけないと思っているの
わたくしと闘いなさい命令よ藤宮麗華
そして、関さんはオレたちの方に微笑む
ああ、あなたたちは黙って見ていてこれは、社内の問題だから
しかし、関さんなぜ、なんです理由をお聞かせ下さい
この状況で、関さんと藤宮さんが闘えば藤宮さんは、上司になられる関さんに遠慮するかもしれません一方的な攻撃になる可能性もありますわ
それが、何か問題ですか
関さんは、クスッと微笑む
まあ、一応本気で闘いなさいという指示は出しておきます
いいから瑠璃子
瑠璃子を、制する
お兄様、しかし
お前まだ、香月家の娘のつもりだな香月セキュリティ・サービスの人は、自分の臣下だと思っているだろ
だから関さんの行動に反発する
関さんに任せろ信じよう
関さんが、何の考えも無しにこんな闘いを求めるはずが無い
ありがとう信じてくれて
関さんが、オレに言う
嬉しいわお腹の底がゾクゾクしちゃう
そして彼女は再び、麗華を見る
ルールは二つだけ武器の使用は、禁止にしますあなたはステッキ無しよ
わたくしは、剣士です
その言葉にクッと麗華は、関さんを見上げる
撲殺ステッキは麗華の警護人としてのアイデンティティだ
あら得意な武器を使っていいことにしたら、わたくしは拳銃を使わなくてはならなくなるでしょそんなことも判らないの
こんなところで撲殺ステッキ対ピストルの闘いなんてやられたら
近くに居る、オレたちにまで危険が及ぶ
だいたいあなたは、警護人なのよいつでもステッキが使える状況にあるとは思わないでっそういうところが、谷沢チーフがあなたに甘かったのよっ素手での武闘訓練だって、一応は受けているんでしょそれともステッキが無かったら、あたしにはボロ負けするってことかしら
挑発的に関さんは、微笑む
まあ、何にしたってズタボロになるまで、ブチのめしてあげるけどねっ
ステッキが無くともわたくしの膂力は変わりませんが
あらわたくしのスピードだって、なかなか定評があるのよ
スピードだけで決定力に欠けるという評もありましたが
ふうんそれじゃあ、あなた、わたくしに勝てるの
ご命令とあれば
関さんは麗華を見て、フッと笑う
ようやく、警護人らしい不貞不貞しい顔付きが戻って来たわね
そしてベランダの外へ向かう
よろしいでは、戦闘よ本気で掛かって来なさいわたくしも全身全霊を掛けて、あなたを叩き潰してあげるからっ
麗華が立ち上がる
オレに撲殺ステッキを差し出す
預かっていてくれということだろう
オレはステッキを受け取る
ズシリと重い
麗華はいつも、こんな重いものを振り回しているのか
アニエスが怖がって、オレにしがみつく
大丈夫だからレイちゃんに、頑張ってって言ってあげるんだよ
レイちゃん、がんばってですの
アニエスの言葉が麗華の心に浸みていく
うんがんばる
藤宮さん精一杯、闘って下さい
瑠璃子も麗華を応援する
早く終わらしてきてよっあたし、お腹ペコペコなんだからっあたしのソーセージとポテトの盛り合わせはどうなったのよ
後ろから、雪乃が言った
そもそもまだ注文してないだろ、雪乃
とにかく悔いが無いように全部、吐き出してくるんだ
オレは、長身の麗華を見上げる
吐き出す
うん吐き出して来いレイちゃん
30人以上のパーティが開けそうなベランダに関さんと麗華が立つ
関さんがイーディに、英語で何か言った
これから2人で試合をするから、邪魔するなとかそういう話だろう
イーディは、うんと頷いてベランダの隅へ行く
空は初夏の青空
背景には広大な海
吹き込む潮風の中で2人は対峙する
関さんは香月セキュリティ・サービスの警護人らしい、黒いパンツスーツ
手には辛子色の革の手袋
麗華はいつもの英国紳士の男装
手は黒い革手袋
それじゃあ始めましょうか
関さんが構える
一方、麗華はステッキ無しで、何となく手持ちぶさたな感じになっている
ゆっくりと、関さんが間合いを詰める
藤宮さんわたくし、思うんだけどね
人間だって動物でしょ動物っていうのは、動く物と書くわだからね悩み事のある時は、身体を動かした方が良いと思うのわたくしはね
関さんに、何が判るというのです
先に仕掛けたのは、麗華の方だった
床を砕きそうなドンという強い踏み込みッ
麗華の手が、関さんの首へ
関さんは、その麗華の手を下から跳ね上げッ麗華の懐に飛び込むッ
ガッシィッ
関さんの肘が、麗華の腹に
麗華は、すぐに関さんの身体を捕まえようとするが
その時には、もう関さんの身体は麗華から離れている
遅い、遅い、遅いわよっ藤宮さん