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もっとも彼や瑠璃子様に対してだって、自分が警護しなくても多分平気だろうっていう感覚を持っているのが、すでに大問題なんだけれどね

関さんは、溜息を吐く

ほら、立ちなさい藤宮さん

関さんは、麗華を立ち上がらせる

ビンタ合戦しましょう

ビンタ

問答無用いくわよっ

麗華をビンタする関さん

はい、次あなたよあたしにビンタしなさいっ

やりなさいってのっ

ウワァァッ

麗華の平手が、関さんの頬を打つ

やるじゃないのっ

関さんが、麗華をビンタするっ

ほらっ、あんたの番よッッ

もう許してもう許して下さいっ

泣きながらへたり込む

結局ね谷沢チーフが、いけなかったのよ剣道の高校女王のあなたをスカウトしてきて剣道の専門家として、あなたに敬意を払ってしまったから

だから、藤宮さんは警護人としての師匠を持たないまま、そのままプロの警護人になってしまった

泣いている麗華の頭を関さんは、撫でていく

警護人としての心構えも、覚悟も誰にも教えられないで剣の実力だけを、認めてしまったそんなの大間違いよ

人は、ちゃんと大人にブチのめされて負かされて屈辱と敗北感を感じながら、一つ一つ仕事を覚えていくしかないんだから

関さんの言葉が麗華に染み込んでいく

あなたは弱いわ撲殺ステッキと、それを振り回せる膂力と、剣道の技があったとしても藤宮さんは弱いあなたは、今まで本当に心の底から人を守りたいと思ったことが無かったから

自分の身を盾にしてでも誰かを守りたいという気持ちよ仕事だから、職業だからっていうことだけでは割り切れない熱意がなければ警護人なんて、やってられないわ

そうね藤宮さんは、お祖父様を亡くされてからはずっと1人だったものね自分1人きりで自分の命なんてどうなっても構わないとしか思っていなくて、自暴自棄で警護人をやっていたんでしょでもね、そんな考えじゃあ誰も守れないのよ自分自身だって

でどう今のあなたには、家族がいるのよあなたの家族は誰

アニエスちゃん、真緒ちゃん、マナちゃんそれと、みんな

ああ、麗華の心の中では

幼い子供たちの方に親しみを感じているんだ

オレや瑠璃子の優先順位は低い

そうねみんながいなければ、家族は守れないわよねほら、見てご覧なさいアニエスちゃんは、しっかりと彼にしがみついているわ彼も、アニエスちゃんをしっかりと抱き締めているアニエスちゃんには彼のことが必要なのよ

関さんは、そう言ってオレたちの存在意義を補強してくれる

アニエスちゃんあんな風に、藤宮さんのことを抱き締めてくれるかしら守って欲しいって、近付いて来てくれるかしら

いいえわたくしには、近付いて来てくれないと思います

そうあなた、それでいいのこのままでいいの

あなたはアニエスちゃんに、自分に頼って欲しいと願っているんじゃないの

はっきりしなさいよっ藤宮麗華っ

関さんがまた、麗華を平手打ちするっ

頼って欲しい頼って欲しいですっ

アニエスちゃんを守りたいのねっ

守りたいですっ

なら大人になりなさい強くなりなさいあの子のためには、絶対に負けないって誓いなさい

関さんは麗華の頭を優しく抱き締め

あたしもねあなたと同じで女子校の出身だから藤宮さんのことはよく判るのよ

あなたは周りの子たちに王子様になることを求められて根が真面目で、責任感の強いあなたは、一生懸命、その子たちに応えてしまったそれで姿形だけの王子様になっていた

ついには、男装の麗人撲殺剣士、藤宮麗華となる

でも、あなたという王子様には誰も臣下がいなかった見た目だけの王子様心の中は、ずっと空虚だっただからこんなことになったのよ

その上谷沢チーフが、王子様のまんまのあなたをスカウトしてきて、そのまま警護人にしてしまったから

麗華の孤独は晴れないままだった

これからは、もう平気よあなたには家族がいるいいわあなたは、アニエスちゃんや小さな子たちの心配をしていなさいその子たちだけを守ることに集中していればいいわその代わり死んでも守りきるのよ

あなたの心配はあたしたちがするわだから、あなたはあたしたちの前では、安心して心を拡げなさい

関さんは麗華の保護者になろうしていくれている

言ったでしょあなたは女子校の王子様だったんでしょうけれど安心して、あたしはずっとお姉様であることを求められてきたから

お姉様

お姉様歴なら、長いのよあたし

麗華をそっと抱き締める

あたしがあなたのお姉様になるわ

富野監督の作品にザブングルというロボットアニメがありまして

それのやぶれかぶれのラグという回のラストが凄いんです

裏切り者の女の子を、主人公が鉄拳でボコボコに殴って許すという

現在では、考えられないというかマンガでもアニメでも、ああいう表現を観たことがありません

富野監督は、イデオンでも女性2人が、延々とビンタを張り合うというラストシーンがありましたけれど

西洋人のメンタリティですね

己の意地を張り続けて、ビンタし合ってもお互いに引かずに叩き続ける

周りも止めないというのは

ヨーロッパで演出経験のある演出家に、そういうエピソードを聞いたことがあります

449.糸をほどく

関さんがうなだれた麗華を抱きかかえて、部屋の中に戻って来る

イーディも、心配そうに付いてきた

さていいかしら

関さんは、ニコッと笑ってオレを見る

部屋の中の人間瑠璃子も、アニエスも、関さんを見上げている

雪乃だけは、興味なさそうにそっぽを向いていた

あなたが今までしてきた、藤宮さんへのアプローチについてはマルゴさんから、全部聞いているわ

やっぱりマルゴさんは、オレたちの地下室での様子を克明に観察していたんだ

藤宮さんの過去に遡ってこの人の外面は、周囲から王子様で居ることを望まれたことに生真面目に応えてきた結果だって判ったのよね大きな収穫だったわねこの人の本質がいまだに、か弱い少女のメンタリティしか無いってことも

関さんは全てを把握している短く、麗華の現状をまとめてくれた

だからあなたたちがこの人をレイちゃんとして小さな女の子として扱った経緯は、よく判るわこの人の心の欠損箇所の修復に対してはただし

関さんがハァと息を吐く

そのアプローチはあなたでは、無理なのよ

藤宮さんは、もう大人なのよ身体だって、普通の女性よりもずっと長身でしょこの人は、いつだってあなたを見下ろしているのよ仕方無いでしょ背が高いんだから

あなたたちの選択したアプローチはね藤宮さんよりも、年上でそうね、できれば父親的な頼れそうな男性が、彼女のバックアップに付いて、初めて有効的になるのよ