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関さんは憤る

ホントあの世代のオッサンは、そういうところで手を抜くんだからっ即戦力と、自分で勝手に成長してくる子ばっかりを贔屓して伸び悩んでいる子のサポートとかは、おざなりなのよ

警護人の世界はオレには、よく判らない

わたくしが現場責任者になった以上はこれまでの悪癖は一掃するわだから、まず最初にわたくし、あなたのお姉様になることにしたの

ウフフと微笑む関さん

えっとあの関さん

なあにもう一回、ベランダへ出るコテンパンにブチのめされないと判らない

関さんは、革手袋を填めた手を胸の前で合わせる

組んだ指と指の間から、革が擦れてキキュウという音が鳴る

体育会系でいきましょうあなたもわたくしもそっちの世界の出身なんだからあなたの中に鬱憤が溜まったら、何度でも相手してあげるわよっわたくしに文句があるのなら、まずわたくしに勝ちなさい

関さんは麗華の前に拳を突き出す

いつでも、どこでも、何度でもお姉様が相手をしてあげるわっ藤宮さんっ

関さんが麗華の頬を撫でる

判っているわ今まで誰も、真っ正面からあなたの相手をしてあげなかったのがいけなかったのよねだから、あなたこんなに負けるのが下手になった

負けるのが下手

戦闘能力なら藤宮さんの方が上よ体力だって、わたくしがあなたに勝てるはずが無いでも今、あなたとわたくしが闘ったら何百回やったって、わたくしの勝ちよ判るわよね

どういうことなんだそれは

負けたかったんでしょあなたふがいの無い自分を、誰かに叩きのめして欲しかったずっとそうよね、藤宮さん

麗華の眼からどわあっと涙が零れる

関さんの足に縋り付いて泣く

もう判ってるわよわたくしあなたのお姉様なんだから

オレは全然判っていなかったんだな

麗華の本質はやっぱり武人で

警護人としての魂を持っていて

だから年下のオレたちに優しくされることをふがいないと感じていて

誰かの鉄拳で制裁されることを望んでいた

同じ警護人である関さんにはそれが見えていた

だから、麗華を叩きのめした

ほら、もういいでしょ涙を拭いてもう、あたしのスーツのズボンに鼻水つけちゃって

済みませんお姉様でしょ

関さんが妹に微笑む

済みません、お姉様

いいわねわたくしとあなたとマルゴさんの3人で姉妹の契りを結びましょう武闘三姉妹通称ハリケーン・シスターズよこれは香月セキュリティ・サービスとは関係無しよわたくしたち3人だけの、個人的な関係わたくしが長女で、あなたは次女、マルゴさんが末っ子よ桃の花の季節だったら、もっと良かったけれど今は5月だから菖蒲の花の誓いってことにしましょう

ハリケーン・シスターズは助け合うし、トレーニングも一緒にするわ悩み事も聞くし、ムシャクシャしたらいつでもバトルしてあげるでも、あなたとわたくしの二人きりの姉妹にはしないわあなたも、マルゴさんのお姉様になること姉に甘えるばっかりじゃなくって、妹に頼られるような人間にならないといけないものねっ

それと、なんだけど

わたくしねこの子のこと、好きなの

関さんの発言にみんな驚く

わたくしは、もちろん香月家に対して敬意を抱いているし、閣下や瑠璃子様、みすず様、美子様を命懸けでお守りするわでも、それとは別にこの子のことが好き大好きなの

な、何を言ってるのよあんた

後ろから雪乃が言う

雪乃アフロのカツラがずれているぞ

わたくしもねやっぱりずっと、年上で頼りがいのある男性を求めていたんだと思うのわたくしのことを、包み込んでくれるような包容力のある男の人を

関さんは麗華に言う

瑠璃子とアニエスが、そんな関さんをジッと見つめている

でも、そんな人には今まで一度も出会わなかったし理想的な男の人なんて、この世には存在しないんじゃないかって感じていたわそんな時に、この子に出遭ったの

オレを見て関さんは、フフッと微笑む

この子、一生懸命でしょいつでもまっすぐで、嘘を付かなくてでも、ちょっとお馬鹿さんで最初は可愛いなって思ったのでも、そのうち何かこの子は、あたしが守ってあげないといけないって思えてきて

やっぱり頼りないんだ

この子があの時シザーリオ・ヴァイオラを撃ってあたしたちは、この子に重荷を背負わせてしまったわそして、この子もヴァイオラを殺したことで気絶してしまって気を失っているこの子の顔を見た時に、誓ったのわたくしはこの子を幸せにしてあげたいずっとこの子と共にありたいって

でも、こいつは色んな女と

雪乃の言葉を、関さんは遮る

そんなの関係無いわよっわたくしが好きなんだものっ好きになっちゃったんだからっ

雪乃は関さんの勢いに口籠もる

それに今では、この子が、たくさんの女の子を抱え込まざるを得なかった状況も判っているし

関さんは、再び麗華を見る

であなたに判って欲しいことなんだけれどわたくしが、好きなのはこの子だけよ本当はわたくしこの子たちの家族には、そんなに思い入れはないの

関さんは黒い森という組織に入り込みたいわけではない

でもねこの子を愛するということは、この子が抱えている全てのものも受け入れるということでしょだからね、あたしこの子のために、この子の家族全てをわたくしは守るわ

わたくしは警護人わたくしができることは、守ることだけだから

関さんは、オレをまっすぐに見つめる

あなたはこんな年上のお姉さんは嫌かもしれないけれどううん、あなたの気持ちは関係無いの迷惑だったら、近付かないからでもねわたくしは、一生、あなたの味方よいつだって、わたくしの力が必要だと思ったら呼んでちょうだいわたくしは、あなたの力になりたいの!

オレは、ただの高校生で何の力もないし

あなたはただいつも通り、一生懸命でいてくれたら、それでいいのよあなたの一生懸命な姿を見ていたら、わたくしも頑張れるわあなたは、わたくしに力をくれているのよ

わたくしあなたの素敵なお姉さんになりたいその気持ちが、わたくしの心に元気をくれるのわたくし、切磋琢磨しなくちゃって

素晴らしいですわ関さん

わたくしも、そうですお兄様が一緒に居て下さるから瑠璃子は、頑張れるんです

瑠璃子は、オレの手を握りしめる

ううん今の関さんの告白に比べたら、瑠璃子の言葉なんて弱々しいですよねあのねお兄様あのね

好きです愛しているのお兄様っ

潤んだ瞳で瑠璃子は言う

オレはどうしたらいい

アニエスもパパが好きですの

オレの腕の中のアニエスまでが心に着火する

ずっと一緒にいたいですの

関さんが、アニエスの頭を撫でる

心配しないでわたくしは別に、この人を取って行ったりはしないわよ