とても暗い元気の無い声で
うんまあ、今日が山場だからね
今夜、これからミナホ姉さんの復讐が決行される
白坂創介の眼の前で4人の娘が、オレに犯される
その後ミナホ姉さんが、白坂創介をどうするつもりなのか、オレは知らない
そうわたくしに手伝えることがあったら、何でも言ってちょうだい
翔お姉さんが、そう言ってくれたのは最悪の事態を考えてのことだろう
もし、ミナホ姉さんが、白坂創介を惨殺してしまったとしたら
その可能性は、とても高い
オレたちは、公安警察の監視下にある現在の状況の中で白坂創介の遺体を処分しないといけない
ハァと、オレは溜息を吐く
アニエスと瑠璃子は、オレにしがみついたままだ
イーディは再びベランダへ、トレーニングに出る
この部屋の張り詰めた空気が嫌なんだろう
わたくしにはこういう風にしか言えないのだけれど
復讐というのはどこかで、線引きしない限り終わらないものだと思うの
線引き
今回のケースだと黒森のお姉様は、何年も掛けて綿密に計画を練り上げて来られたんでしょだから、もう復讐の基本計画の部分は、変更できないと思うのコアな部分を取りこぼすと達成感が得られない、不完全燃焼な気持ちに陥るわ
あらかじめ決めていたことの大枠は、スッキリと遂行しないとねそれで、線引きをする復讐は、これで完了全てはもう、過去のことってことにね
そんなに上手くいくでしょうか
瑠璃子が、尋ねた
いや、どんな風に実行したって、どうせ予定通りにはできないのよ絶対に、取りこぼしが出るわ現実って、そういうものでしょうでも大枠で復讐が完遂すれば、一応の満足感は得られるわというよりわたくしたちの力で、黒森のお姉様が満足して下さる範疇に納めないといけないのよ取りこぼした分については、仕方無いと笑って諦められるようにね
翔お姉さんはオレたちの姉として動き出そうとしている
恭子さん、ミナホ姉さんの次に年長なのが、翔お姉さんだもんな
考え方が大人なんだ
ではわたくしたちは、どこで線を引くべきでしょう
再び、瑠璃子が尋ねる
それは黒森のお姉様に直接会って、あなたが感じ取るしかないと思うわ
あなたオレ
全ては、オレ次第か
わたくしの今の印象だと最悪の状況を避けられるかどうかその瀬戸際だと思うの
最悪
それぐらい、思い詰めていらっしゃる声だったわ
ああ恭子さんだけでなく、マルゴさんまでミナホ姉さんの側に居る
マジで危険信号が出ているんだ
ミナホ姉さんは、白坂創介を殺して自分も死ぬかもしれない
そこまで、煮詰まっている
でも、黒森様は黒森家の当主でいらっしゃいますわたくしたちやお兄様を残されて逝くことは
そうだミナホ姉さんは、黒い森のリーダーだ
姉さんがいなくなってしまったら、オレたちは
瑠璃子の言葉を翔お姉さんが遮る
この人が、どっしりしてきちゃったでしょだから、マズイのよ
黒森のお姉様は自分がいなくなっても、この人が居れば家は、まとまるって感じていらっしゃるのかもしれないわ
そんなオレなんて何の力も無い、ただの高校生ですよ
あなたには、力が無くてもあなたの周りには、能力のある人たちが集まっているわ
あなたには、家の女性たちを安定させる力があるわ問題なのは黒森のお姉様が、それであなたさえ健在ならば、自分が不在でも家が何とか存続すると思ってしまわれるかもしれないということもし、そうなったら極端な選択をなさる可能性が強いということよ
すなわち自死
白坂創介と差し違える
だから、マルゴさんは麗華という、あなただけでは安定化させられない案件を放置しておいたのよあなたが、あたふたしている間は黒森のお姉様は、心配していらっしゃるでしょうから
それで、マルゴさんはわざと
と、同時に黒森のお姉様は、あなたに自分の心の中の動揺を見られたくなかったのよ恥ずかしいっていう気持ちが強かったんだと思うわ
恥ずかしい何でです
それは乙女心というものでしょうね
オトメゴコロ
あなたの前ではいつも、落ち着いていて、クールで知的なお姉さんで居たいのよいつでもあたしも、そうだからよく判るわ
翔お姉さんは微笑む
わたくしもよく判ります
わたくしもお兄様の前では、いつも可愛くありたいと思いますから
恥ずかしそうに眼を伏せた
とにかく復讐の決行が迫って来るにつれて、黒森のお姉様の心の中は色々な感情がせめぎ合って、ハラハラドキドキしているんだと思うわその心の動揺をあなたの前で隠すのが耐えられなくなってきたから、あなたたちと距離を取ったんだと思う
思えば最初に、2人でアニエスの部屋を覗き込みに行った時、ミナホ姉さんは感情的でちょっとおかしかったと思う
あの辺りから変調は出ていたんだ
その後のミナホ姉さんは、極力、アニエスの部屋には近付かなかったし
オレとの接触も抑えていた
そして昨夜からは、お屋敷を出て、学校へ籠もってしまった
じゃあ、マルゴさんがレイちゃんの脱走作戦を実行させたのは
そろそろ、潮時だからでしょ今日の夕方には、予定通りに復讐を遂行しないといけないのだしその時になって、あなたたちと顔を合わすんじゃ、何もかも手遅れになるわ
あのままオレたちはお屋敷、ミナホ姉さんは学校と分かれたままで、夕方まで時間を費やしていたら
ミナホ姉さんは、極端に煮詰まった頭のまんまで白坂創介への復讐を始めることになる
何にしてもここで1アクション起こさないといけない
マルゴさんは、そう判断したのか
いや、ミナホ姉さんを側で診ている恭子さんの発案かもしれない
わたくしは、そうマルゴさんから聞いているわ
翔お姉さんは、全て事前にマルゴさんから作戦についての詳細を聞いている
それでオレ、どうしたらいいんですかね
オレは、率直に尋ねた
自分では判らない
あなたに判っておいてもらいたいことはね最良な状況を望まないでってことよ
翔お姉さん
変な期待は、絶対にしない甘い考えは全て捨てて一番最悪の状態にならないようにするために、わたくしたちは行動するそう、肝に銘じなさい
つまりミナホ姉さんの自殺を回避することだけを考えろってことか
他のことは全て諦めて覚悟するのよ
ミナホ姉さんが、何とか白坂創介を殺さないようにならないかと考えていた
ミナホ姉さんに、殺人者の十字架を背負わせたくなかった
それは甘い考えなんだ
事態は、オレが想像していた以上に深刻なんだ
ミナホ姉さんの心の中は
線引きはそこなのですね