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その全ての選択肢を考慮に入れてオレは、パンを作らないといけないんだ

別に競合する必要は無い

弁当の人が多いのならデザートっぽい、パンを増やすとか

考えるべき課題は、いっぱいある

実際、そんな話を、寧がしてたじゃないか

昼休みのみんなが弁当を食べた後の、お菓子としてのパンは需要があるって

お前が、これからパン屋を始めるというのはだなラーメン横丁に99軒目のラーメン屋を出すのと同じことだ普通のパン屋なんてどこにでもあるんだからな

そうだそれも、考えないといけない

本当に美味いパンが作れるようになるだけじゃ、ダメなんだ

完全手作りで美味くて評判のパン屋さんなんてすでにたくさん有る

そこに、割って入るんだから

それこそすでに評判の高いラーメン屋が並ぶラーメン横丁の99軒目と同じだ

お前はホント、真面目でいいな

私の私塾で、こういう話をするとあいつらのほとんどは、真面目に話は聞いていないぞあげくの果てに閣下は、そうおっしゃいますがなどと、余計な反論をしてくる

旦那様は素晴らしい方ですわ

わたくしもお兄様を尊敬しております

いや、あのみすず、瑠璃子

オレ何で、褒められているの

まあ、私は少しお前を強く脅かしたんだよでも、世の中に自分の旗を上げようとするということは、そういうことだそれでもお前はやるのかね

やるよそれでもオレと克子姉のパン屋は絶対にやるどんな苦しいことでも、乗り越えるパンが売れるようになるためには、何でもするそれはもう決めたことだから

ずっと黙っていた克子姉が呟く

そうかそれならいいでは、お前に商売の極意を教えてやろう

商売の本質はインチキだそれを忘れるな

インチキ

いいか客は、本当はお前が提供する物なんて、欲しがってはいない絶対に、それでないといけない物なんて、この世には無いんだ

例えば、お前の学校お前がパンを作らなくなったとしても、誰も困らないんだろお前が作るパンが、業者のパンよりも美味いとしていや、多分、美味いんだろうがお前がパンを止めたら、生徒たちの中でどうしても、お前のパンを食べないとやっていけないんだお願いだから作ってくれなどと懇願してくる人間はいるか

そんな人はいないと思う

当たり前だいや、業者のパンだって、廃止しても誰も困らん学生食堂すらだ選択肢が減ればみんな家から弁当を持って来るあるいは、朝、食べ物を買って来るだろう昼に学校を抜け出して、外に買い出しに出る者が増えるかもしれないつまり、どうにでもなる

さっきのラーメン横丁だって別に、世の中の客は、99軒のラーメン屋が全部消えてしまったとして困らないんだラーメン屋というものが、この世から消えてしまったとしても美味い食べ物なら、他にもある世の中というものは、果てしなく広いんだ

それも極論としては、判る

現実的には、ラーメンはなくならないと思うけれど

だからお前と克子くんが、自分のパン屋をやりたいというのはあくまでも、お前たち自身のエゴなんだお前たちがやりたいのであって世界や、世の中の客たちとは関係無いことなんだ

ああそうなんだな

オレが今、店を開いても道行く人たちにしたら、関心は無いだろう

今の学生食堂でのパン販売は学校という閉鎖された空間の中で、それも生徒が昼食を摂るための6番目の選択肢だからこそ、何とか成立しているんだ

選択肢の数が少ないから

でも、オレと克子姉が本当にパン屋を始めたとしたら

オレたちのパン屋は、お客さんにとっては何万種類もの選択肢の中の一つでしかない

他のパン屋さんだけでなく全ての食べ物屋さんとの競い合い

人が誰から物を売り付ける場合それが値段に見合った価値があるということを、保証するそれは、商売の鉄則だ信頼を失ったら、商売は続けられないだが自分の製品と、同じ様な製品が世に満ち溢れていた場合はどうする他のパン屋のパンでなくお前の作ったパンを、お客に買ってもらうにはどうしたら良い

お前も判ったろちょっと美味いぐらいじゃ、ダメなんだそれぐらいの差では店に客は寄り付かんよ

業者さんのパンよりオレのパンの方が美味いそれは自信がある

でも今のままでは、50円高い

オレのパンではなく、業者さんのパンを選ぶ生徒は多い

味だけでは根本的な解決策にはならない

ごめん、判んない頼む教えてくれよジッちゃん

オレは監視カメラに向かって、頭を下げる

さっき言っただろインチキだよインチキの種を見つけるんだな

インチキの種

お前のパンを買うことに食うことに、他のパン屋のパンとは違う何があるということを付加価値を探せ

付加価値

ブランド物の洋服は高い女性物は得にな物によっては、原価は千円未満の服が、数十万円で売られているだが、誰もそれに文句は言わないそれがブランドという付加価値だ

付加価値とは客を喜ばせるものでなくてはならない喜ぶべきものだからこそ客は、付加価値に高い金を払ってくる幸せにするんだ客をしかも、付加価値を付けたらその分、値は上げろ付加価値は、タダで客に与えてはいけないサービスでないからこそ、付加価値なんだからな

ごめん、よく判らない

原価千円の物がブランドという付加価値が付いて、10万円になるとする差は9万9千円だ様々な経費を引いても、実際は3万円という値段でも充分に元が取れるかもしれないだが、それがそのブランドの持つ付加価値なら絶対に10万円なんだここで値を下げたらブランドの価値その物が失墜する

いや、その例えは判るけれどそれは、洋服のブランドの場合だろオレはパン屋をやるんだし

もし、パン屋のブランド化に成功したしても100円のパンが、1万円で売れるはずがない

当たり前だパン屋として付加価値を付けるアイデアを、私がお前にやると思うかそれでは、私のパン屋になってしまうだろどう、付加価値を付けるかはお前が自分で考えるんだ

ジッちゃんの声は笑っている

ただ忘れるな顧客を幸せな気持ちにする物が付加価値だそれだけは、教えて置いてやるしかも、それは幸せな気持ちにするだけで本質的にはインチキなんだ

繰り返しジッちゃんは、そう言う

新興企業が何かで起業して、創業者が一代で大きくしたような会社だとよくあるんだようちの会社は、お客様の幸せを第一に考えているそればかり言うよ経済雑誌や、テレビのビジネスニュースで取り上げられるようになるとお客様のことを一番に考えて来たからこそ事業が成功したとな

ああいるな、そういう人

それがインチキが成功しただけだと判っているやつは、まだ良いだが、時には自分のインチキに呑み込まれてしまって本当に自分の言葉に酔って、信じ込んでしまう輩もいる