だって、わたくしはお父様とお母様の娘なんですもの
ポロッと涙を零しながら夜見子が言う
わたくしだけがお父様の
ルナも仲裁の結果として生まれた子なんだ
つまりルナの父親も、ヤクザの親分か
わたくしが鷹倉神社の巫女にならなかったらお父様が可哀想ですわだから月子とルナも、そうなるべきだって言ってくれましたわ
次から次へと大きな瞳から、水晶の様な涙が零れる
だからわたくしは
ああ、夜見子もまた張り詰めていたんだな
14歳の子が、突然両親を殺されたんだ無理も無い
でもダメだよ今のままでは夜見子さん
マナが、夜見子に告げる
夜見子さんは、巫女になるとか以前に1人の女の子に戻らなくちゃ大声で泣いていいんだよ叫んでいいんだよ喚いていいんだよ暴れていいんだよ怖いんでしょ辛いんでしょ悲しいんでしょ夜見子さんの心の中の感情を、全部吐き出さなきゃダメだよ
マナを見上げる夜見子
あたしもそうだったからあたしも運命を憎んでいたもん何で、あたしがこんな思いをするんだとかみんな、あたしの気持ちを判ってくれないとかずっと、思ってた顔だけは、平気なフリしてお兄ちゃんや他の人たちに、愛想を振りまいているフリをして心の中では、何もかも呪ってたみんな、みんな許せなかった
それはマナが、オレにレイプされて、ロスト・ヴァージンし
市川老人への人質として、オレたちに監禁されていた時のことか
オレたちの仲間になったフリをして心の中では、いつでも逃げだそうとしていた
だから、オレは何度も何度も、マナをレイプし続けて
でも、そんなんじゃダメなんだよ心を閉じて、自分だけで煮えたぎった思いを抱きかかえているだけだもん何の解決にもならないんだよどんなに怖くても理不尽な現実が納得できなくても、外に眼を向けて立ち上がらないとさ
あたしは自分が無力の何の力も無い、ただの14歳の女の子なんだってことを思い知ったよそれまでの、あたしは良い暮らしをしていて、自分が誰かに守られているのが当たり前だって、思っていただから誰も、あたしを守ってくれなくなったことが、許せなかった酷い目に合わされることが
マナも、ポロポロと涙を流す
でも、ちゃんと現実と向き合って考えてみたらあたしが守られてきたのは、たまたまで親がお金や社会的な地位があったからっていうだけであたし自身の力じゃなかったってことが、判ったんだだからあたしを守ってくれていた親たちの力が消え失せたら誰もあたしを守ってくれなくなるのは、当たり前なんだよあたしは何でもない裸の女の子なんだから
マナが、泣きながらオレにしがみついてくる
なのにあたしには、何も無いのにお兄ちゃんは、あたしを助けようとしてくれた身体を張って馬鹿なあたしは、最初、それが凄いことだって、気付いていなかったみんながあたしに酷い中でお兄ちゃんが、あたしに優しくするのは当然だって、思い込んでただって、あたしは被害者で、お兄ちゃんは加害者でお兄ちゃんは、一生、あたしに償うべきなんだって、思ってたから
バカだよねミナホお姉ちゃんたちは、命懸けの殺し合いをやっていたのにあたしは、自分は関係無いんだから特別ルールが使われるべきなんだって思ってたんだから
ミナホ姉さんは白坂創介に、妹さんと自分のお腹の中の子を殺されていた
メグの本当のお母さんである恵子さんや、他にも多くの娼婦たちも死んでいる
家族や親しい人たちを殺されたのだ白坂創介の親族は、ことごとく抹殺するというのが、ミナホ姉さんの復讐計画だった
その中でも白坂雪乃の強制妊娠と、白坂舞夏の殺害は規定事項だった
ホントにバカだ首筋にナイフを突き付けられている状態なのに自分が、まだ自分の人生を自由に選択できる立場だと思っていたんだから
人間は自分が自分の人生を選択していく、ゲーム・プレイヤーだと思っている
でも、多くの場合自分の人生なんて、自由に選択なんかできない
大きな波が、暗い影がいつでも、突然、襲いかかって来る
オレたちにできることは、それに立ち向かうことだけだ
人間は、運命をクリエイトできる神でもゲーム・ルールをコントロールできるゲーム・マスターでも無い
お兄ちゃんが助けてくれなかったら、あたしは死んでいたううん、今、ここにあたしが生きているのは、奇跡なんだよあたし殺されているはずの子なんだよ
マナの告白を夜見子は、ジッと聞いている
あたしギリギリで判ったんだあたしは特別じゃないあたしは、どんなことがあろうとも絶対に生きているべき子だなんて、誰も思っていないあたしが死んで困るのは、あたしだけなんだ
市川老人や、マナの母親は最終的にマナを見捨てた
父親の数々の犯罪行為は、家族に対する裏切りでしかないし
マナは命懸けで、自分を愛してくれる家族が1人もいないことを知ってしまった
そんなことは無いぞオレが困る
うんありがとうお兄ちゃん
あたしお兄ちゃんとセックスしている時が、一番幸せなんだだって、あたしはセックスしている時は、心も身体も裸でお兄ちゃんは、そんな裸のあたしを求めてくれて何も無いあたし丸裸のあたしをそのまま愛してくれるから
マナは白坂舞夏の過去を捨てた
吉田マナが引き継いだのは14歳の心と身体だけだ
夜見子さんもさ全部、裸になるべきだよ
マナは静かに言う
巫女になるとか、ならないとかそんなのどうでも良いんだよ
しかし鷹倉神社の巫女の伝統は
夜見子は、苦しそうに言う
本当に続けるのですか夜見子さんが、もし巫女になられたとして夜見子さんのお子さん、お孫さんたちにも、同じ運命を歩ませるのですか
隣の赤いベッドの上から瑠璃子が尋ねる
瑠璃子は裸のルナを抱いていた
そのルナも夜見子を見つめている
それは判りませんわ
夜見子は、呟く
判りませんわわたくしには全然判りませんわ
泣きながら、夜見子は喚いた
そうだ判らなくていい
お前は、お前の人生を選べないんだそのことに絶望しろ
ギョッとなる夜見子
いいか、お前がこれからオレに犯されるのはお前が、それを承諾したからじゃないお前が、オレに身体を許したんじゃないオレが、勝手にお前を犯すんだ
何をおっしゃっているのですか
今のままだとお前は、運命を曲解して、何もかも自分が納得して、受け入れたことだと思い込もうとするだろう
夜見子はずっと、そうだ
今までも何度も、オレとセックスすることを承諾して来た
それは自分が、苛酷な運命を受け入れたことにしたいからだ
誰かに強制されたのでななく自分の意志で、運命を選択したことに