うん、まあほとんど、ヨッちゃんの言う通りなんだけれど
ヤマタノオロチの伝説は古事記、日本書紀では出雲の国でのできごとになっていますが
出雲国風土記に書いてないんだよね
寧が続きを言った
風土記っていうのは、奈良時代に日本全国各地のことを朝廷が記録させた書物ねその中に、各地の地名の起源とか、伝説なんかも含まれていてさでも、ほとんどは散逸しちゃって、今では失われている風土記がほとんどなんだけれど幸いなことに、出雲の国の風土記だけは、ほぼ完全に残っているんだよ
そして、寧ちゃんの言う通り、その中にヤマタノオロチの伝説は書いていないんですわ
書いていないということは
つまり、ヤマタノオロチは出雲の伝説じゃ無いっていう可能性があるんだよ
風土記だって、朝廷の命令で各国の役人が、必死になって編纂しているんだからさ出雲に昔からにあった伝説なら、記録しないはずがないんだよでも、書いていないんだ
スサノオのモデルとなった人物が、出雲の地に居たことは確かですそれは、古くからスサノオを祭っている神社の存在などで、判りますから
スサノオは実在した
スサノオという出雲の王様的な人物に英雄的な業績を与えるために、他の地方に存在したオロチ退治の伝説をスサノオのものとしたのかもしれません
似たような例があるんだよね平将門を倒した俵藤太こと藤原秀郷も大ムカデを退治したことになっているからさっ
藤原秀郷は実在した
大ムカデは多分、実在しない
でも、とりあえず実在したモデルのいるスサノオが、アマテラスやツクヨミの伝説世界に組み込まれたってことでいいのかな
高天原のことまでは伝説の世界で
スサノオが出雲に来たところが現実をモデルにしたストーリー
いや多分、天岩戸の周りの話もモデルになった出来事があるんじゃないかって思うよ
こう考えてみたら、どうかな出雲の地に勢力を持っているスサノオのモデルになった王様が居たその王様が隣の国へ交渉に来る隣の国は、当然、スサノオが戦争で自分たちの国を乗っ取りに来たんじゃないかって心配になる
だから、スサノオはそんなことはありませんよ自分は友好関係を築くために来たんですって言って神様の前で誓約するその時に、隣の国の王族のお姫様か、神様に仕える巫女さんとセックスしたのかもしれない婚姻関係を結ぶとか子供も生まれたんじゃないかな
それがスサノオとアマテラスにより、ウケイでの神産み
でも、結局スサノオ、あるいはスサノオの連れてきた軍勢は行儀が悪くて、隣の国の中で迷惑なことをいっぱいしたんで叩き出された
それがスサノオの高天原追放
伝説として語られる中でさ、事件の時系列とか前後関係が滅茶苦茶になったりするのは、よくあることだからさとにかく、元々のアマテラス神話とスサノオ神話が、複雑に入り組んで今の形になっているんだと思うよ
じゃあ天岩戸の話は
うーん多分、アマテラスにも、何かしらのモデルが居るんだと思うよ天岩戸の伝説に登場するアマテラスはスサノオ伝説の中の登場人物だから
ああスサノオのストーリーに出て来る人物に、アマテラスの名が付けられているんだ
だから、天岩戸に隠れたっていうのはこの時、アマテラスのモデルになった人物が隠れたっていうことなのかもしれないよあるいは、年老いた巫女が死んで、新しい巫女と交代したことを、表しているストーリーなのかもしれないし
単純にたまたま日蝕が起きただけかもしれないですわ
でも、そういう、何でもかんでも面白そうなものを取り込んでしまうのが、伝説というものなのネ
神話学なんかの本も、きっちり読み込んでいるんだイーディ
本当は、メッチャクチャ頭の良い子だからなこいつ
それならツクヨミには、スサノオやアマテラスの様なモデルが、いないノネ実在した人物によるエピソードが無いからツクヨミの物語も無いノネそういうことだ思うネ
そうか、何かしら人間的なエピソードがあれば
それは誰か実在した人のやったことが神の名で伝えられているということなんだ
ツクヨミには、ほとんどエピソードが無い
つまりモデルがいない
イザナギが、黄泉の国のケガレを祓う禊ぎをして左眼を洗ったら、太陽神であるアマテラスが生まれ右眼を洗ったら、月の神であるツクヨミが生まれるうん、詩的で綺麗なイメージだよね神様の両眼が天空の太陽と月になるんだからさっ
なるほどイメージだけの存在だ
その後に、鼻を洗ったらスサノオが産まれたとかどう考えても、後付けだし、イメージ的に変だよね太陽と月の下に乱暴者のオッサンが産まれているんだからさ
寧の言うとおり神話は、継げ足されているのだろう
で脱線しまくったけれど、本題に戻るよ
寧は月子を見る
鷹倉神社は、とっても歴史の古い由緒ある神社だって聞いたけれどさ
月子は、ジッと下を向いている
あなたたちの名前が、月に夜見っていうことはやっぱり、お祀りしている神様は、ツクヨミ神なわけ
月子が、スッと顔を上げる
つまり、古事記、日本書紀成立以前の物凄ーく、古い神社なんだ
月子の返答にニコッと微笑む、寧
そうか、やっぱりねそういうことらしいよ、ヨッちゃん
あたしは、よーく判ったからじゃあ、またただの撮影係に戻りまーす
そう言ってカメラを取る
や、ヤッちゃん何が判ったの
教えなーいミィちゃんたちと相談してあたしは、もう黙りまーす
まんまとお祖父様に騙されましたわ
わたくしはこんなことだろうと思っていましたわお祖父様が、饒舌でいらっしゃる時は、何か企んでいる時ですもの
瑠璃子は、ククっと笑う
ごめん、オレ全然、よく判っていないから
もう、降参するしかない
どうして、オレの女たちは、みんなオレよりも頭が良いんだ
その前に月子様、一つ、教えて下さい
亡くなられたお母様のお名前を、お教えいただけますか
月子たちの母親鷹倉神社の巫女
葉月ですわ
ハヅキ
ツキ
ルナも月
今鷹倉神社にいらっしゃるのは、ご親戚の方でしたよね
鷹倉神社は、ヤクザグループに乗っ取られた後鷹倉家の分家の人間が、新しい神主として送り込まれていると聞いた
そのご家族の中に名前にヨミの付く方はいらっしゃいますか
はい叔母の名が清美です
キヨミ
ヨミ
夜見子
その叔母様は月子様たちのお母様のご姉妹ではありませんか
はい母の妹ですが
みすずは、ニンマリと微笑む
ありがとうございますこれで全て、繋がりました
あたし、ずっと不思議だったんです月子様たちのお母様は、3人もの娘を残されたのに以前の巫女は、どうだったんだろうって